第27話:禁断のスパイスと、揺れるサキュバスの本能
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あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第27話:禁断のスパイスと、揺れるサキュバスの本能
本文
翌朝。
キッチンから漂ってくる、甘く、そしてどこか危険な香りで目が覚めた。
「ふふふ……これならイチコロね」
キッチンに立っていたのは、裸エプロン姿のメリザだった。
彼女は鍋をかき混ぜながら、怪しいピンク色の粉末をドバドバと投入している。
「ちょっとメリザちゃん! 何入れてるの!?」
「あら、おはようリリム。朝ごはんのスープよ。隠し味に『魅了の媚薬(ランクA)』を入れてるところ」
媚薬!
しかもランクAって、ドラゴンでも発情する強力なやつじゃない!
「だ、ダメよ! ケンジさんにそんなもの飲ませたら……!」
「飲ませたら、どうなると思う?」
メリザは妖しく微笑み、お玉についたスープをペロリと舐めた。
「理性がぶっ飛んで、目の前の女を襲う野獣になるわ。……つまり、私たちが美味しく『ご飯』にありつけるってことよ」
「っ……!」
私は反論しようとして、言葉に詰まった。
野獣になったケンジさん。
理性という重石が外れ、欲望のままに求めてくるケンジさん。
そこから得られる精気は、間違いなく濃厚で、絶品で……。
(……ゴクリ)
私の喉が鳴った。
昨晩、左右からの胸攻撃で彼は限界寸前まで溜め込んでいたはずだ。
そのタガが外れたら?
それは、サキュバスにとって夢のような「食べ放題」の開催を意味する。
「……でしょ? あんただってお腹空いてるくせに」
「そ、それは……」
「綺麗事なんていいのよ。私たちサキュバスにとって、男は餌。効率よく摂取して何が悪いの? ケンジだって気持ちよくなれるんだから、Win-Winじゃない」
メリザの悪魔の囁き。
悔しいけれど、論理的だ。
ケンジさんが興奮してくれたほうが、私だって都合がいい。
もっと激しく愛されたいし、もっとお腹いっぱいになりたい。
「……少しだけ」
「ん?」
「少しだけなら……体に害はないのよね?」
私は本能に負けた。
媚薬入りのスープ。それを飲むケンジさんを見てみたいという誘惑に勝てなかったのだ。
「もちろんよ。さあ、運ぶわよ!」
メリザが勝利の笑みを浮かべる。
その時、寝癖頭のケンジさんがリビングに入ってきた。
「ふわぁ……おはよう、二人とも。いい匂いだね」
「おはようお兄さん♡ 特製スープ作ったわよぉ。冷めないうちに召し上がれ」
テーブルに置かれる危険なスープ。
ケンジさんは何も知らずに席につき、「いただきまーす」とスプーンを手に取った。
すくわれるピンク色の液体。
それが彼の口元へと運ばれていく。
飲めば、彼は野獣になる。
私を求めてくる。
……でも待って。
(野獣になったら……『誰でもよくなる』んじゃない?)
ハッとした。
今の部屋には、私だけじゃない。
露出狂の裸エプロン女・メリザもいるのだ。
もし媚薬の効果で、ケンジさんがメリザに襲いかかったら?
私の大切なご飯を、この女に横取りされたら!?
「――ダメェェェッ!!」
私は叫び、反射的にテーブルにスライディングした。
「ぶふっ!?」
私の手がケンジさんのスプーンを弾き飛ばす。
スープが宙を舞い、床にバシャリと飛び散った。
「リ、リリさん!?」
「あーっ! 何すんのよこのバカ!」
メリザが金切り声を上げる。
私は荒い息をつきながら、ケンジさんの前に立ちはだかった。
「だ、ダメです! このスープはダメ!」
「えっ、どうして? 美味しそうだったけど……」
「味が! 味付けが濃すぎるんです! ケンジさんの健康に悪いから!」
「えぇ……?」
苦しい言い訳だ。
でも、本音は言えない。
『貴方が野獣になるのは見たいけど、他の女に発情するのは絶対に許せないから止めました』なんて!
「チッ……土壇場で怖気づいたわね、臆病者」
「うるさい! 私の彼は、私が自分の魅力でムラムラさせるの! 薬なんて邪道よ!」
私は小声でメリザに言い返した。
ケンジさんは、飛び散ったスープと、睨み合う二人を見て、困ったように頭をかいた。
「よく分からないけど……リリさんが僕の体を気遣ってくれたってことだよね? ありがとう」
聖人だ。
この人は、スープを叩き落とされても感謝してくる。
「でも、お腹空いたなぁ。……リリさん、何か簡単なものでいいから作ってくれないかな?」
「はい! お任せください!」
私はエプロンを締め直した。
危なかった。食欲に目がくらんで、大事な「独占権」を失うところだった。
やはり、彼の理性は私が正攻法で(地味子として)崩さなくては意味がないのだ。
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