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第28話:庶民派スーパーの攻防と、金銭感覚の致命的格差

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あらすじ

地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第28話:庶民派スーパーの攻防と、金銭感覚の致命的格差

本文

「夕飯の買い出しに、三人で行くなんてね……」

 近所のスーパーマーケット。

 カートを押すケンジさん、その右に私、左にメリザという奇妙なトライアングルで入店した。

「ま、いいわ。私が最高級の食材を選んであげるから、感謝しなさいよ」

 メリザは鼻歌交じりに精肉コーナーへ直行し、迷うことなく一番高いパックを手に取った。

「はい、今日のメインはこれね。霜降り和牛ステーキ用、一枚5,000円。安っ」

 ポンッ、とカゴに入れられそうになったそれを、私とケンジさんの手が同時に止めた。

「「待ったぁぁぁ!!」」

「な、なによ!?」

「バカ言わないでメリザちゃん! 一枚5,000円!? 私たちの三日分の食費よ!」

「そうですよメリザさん! 今日は給料日前なんです。そんな高級品、盆と正月がいっぺんに来ても買いません!」

 私たちは素早く和牛を棚に戻した。

 メリザは信じられないものを見る目で私たちを見た。

「はぁ? たかが5,000円でしょ? アランなら『安いね』って笑ってダース買いしたわよ?」

「それはアランがお金持ち(浪費家)だったからよ! いい? 人間界で暮らすっていうのは、そんな甘いものじゃないの!」

 私はビシッと人差し指を立てた。

 ここだ。ここが私の見せ場だ。

 サキュバスとしての色気では負けるかもしれない。でも、「生活力」なら負けない!

 一人暮らしで培った、もやしと鶏胸肉への感謝の心を見せてやる!

「ケンジさん、こっちです。今日は『豚こま』がグラム98円の特売日なんです」

「おぉっ、さすがリリさん! よく知ってるね!」

「ふふん、チラシアプリは毎朝チェックしてますから。それに、野菜はこっちの見切り品コーナーを先に……あ、ありました! まだ綺麗なキャベツが半額!」

 私は手際よく、安くて質の良い食材を選んでいく。

「え、すご……」

 ケンジさんが感心したように呟いた。

「リリさんって、本当にしっかりしてるんだね。一人暮らしでお金の大切さをちゃんと分かってるというか……すごく家庭的だ」

「えへへ、そうですか? 生きるために必死だっただけですよぉ(照)」

 褒められた。

 「エロい」と言われるより百倍嬉しい、「家庭的」という称号!

「意味分かんない……」

 置いてけぼりのメリザが、つまらなそうに果物コーナーで高級メロンを突っついている。

「ねえ、メロン食べたい。これ買ってよ」

「ダメです。デザートなら、あっちで3連プリン(98円)を買いましょう」

「お兄さーん、ワイン飲みたぁい。フルボトルのやつ」

「ダメです。リリさんが麦茶を沸かしてくれてますから」

 メリザの「おねだり攻撃」は、ことごとく撃墜された。

 彼女のやり方は、「金のある男に媚びて買ってもらう」という寄生型スタイル。

 しかし、ケンジさんが求めているのは「共に生活を営むパートナー」なのだ。

「これなら、お腹いっぱい食べても一人300円で収まりますね」

「すごいよリリさん! 魔法使いみたいだ!」

「ふふ、今夜は私が腕を振るいますね。節約・カサ増しハンバーグです!」

「楽しみだなぁ。……リリさんと結婚したら、毎日楽しそうだ」

 ケンジさんがポロリと言った。

「け、けけけ、結婚!?」

「あ、いや! ごめん、つい想像しちゃって!」

 顔を見合わせて赤くなる二人。

 レジに並ぶ私たちの姿は、どう見ても「幸せな新婚夫婦」そのものだった。

 一方、カートの後ろをついて歩くメリザは、完全に空気に……いや、邪魔な小石になっていた。

(……なによ、これ)

 メリザは唇を噛んだ。

 高いものをねだれば喜ばれると思っていた。男の甲斐性を試すのがイイ女だと思っていた。

 でも、この男(ケンジ)と、この女(リリ)の間には、入り込む隙間がない。

 「金銭感覚」という、地味だけど超重要な価値観が、ガッチリと噛み合ってしまっているのだ。

「……つまんないの。貧乏くさいわね」

 メリザは毒づいたが、その声には以前のような覇気はなかった。

 彼女は初めて、「自分の武器が通用しない世界」があることを思い知らされていた。

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りくりな

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