第32話:地獄の実況解説と、真夜中の特別講義
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あらすじ
地味子に擬態して童貞紳士を狙ったら、彼の理性が鉄壁すぎてご飯(精気)が食べられません! ~誘惑したい初心者サキュバス vs 守りたい最強の紳士~ - 第32話:地獄の実況解説と、真夜中の特別講義
本文
合鍵事件の翌日。
メリザは「私がいるからって遠慮しなくていいわよ」と宣言し、本当にリビングに居座り続けた。
夜。ソファーでケンジさんと並んでテレビを見ている時、ふと彼の手が私の手に触れた。
良い雰囲気。
ケンジさんがそっと顔を近づけてくる。
「……リリさん」
「ケンジさん……」
唇が触れ合う直前。
「――カーット!!」
すぐ横(床に寝そべって雑誌を読んでいた)から、野太い声が飛んできた。
「ちょ、ちょっとお兄さん! 今の間の取り方、最悪! そこはもっと焦らしてから行くべきでしょ!?」
「えっ……?」
「それとリリム! あんたも『待ってました』みたいな顔してんじゃないわよ。そこは少し視線を逸らして、恥じらいを演出しなさいよ。素人か!」
メリザが雑誌を丸めてバシバシと床を叩く。
……台無しだ。
「め、メリザさん……見ないでくれませんか?」
「見てないわよ。音と気配で分かるのよ。……ほら、テイク2! もっと感情込めて!」
監督気取りか。
結局、その夜はケンジさんが「緊張して無理だ……」と萎れてしまい、解散(就寝)となった。
***
翌日。ケンジさんが会社へ出勤した後。
部屋には私とメリザの二人だけが残された。
「はぁ……。リリム、ちょっと座りなさい」
メリザが呆れたようにため息をつき、私をソファーに座らせた。
「な、なによ」
「見てられないのよ。あんたたちの、あの不器用で効率の悪いイチャイチャは」
彼女は腕を組み、仁王立ちになった。
「いい? サキュバスたるもの、男を悦ばせてナンボでしょ。あんた、基礎が全くなってないわ」
「うっ……(成績最下位だったし……)」
「悔しかったら見返してみなさいよ。……特別に、この私が『オトナのテクニック』を叩き込んであげるわ」
突然始まった、メリザ先生のサキュバス講座。
彼女はホワイトボードに、キュキュッと文字を書いた。
『講座1:視覚的誘惑』
「まず、あんたは姿勢が悪いのよ。猫背!」
「だ、だって地味子設定だから……」
「設定とかどうでもいいの。男の前で物を拾う時は、こう!」
メリザはわざとペンを落とし、膝を曲げず、腰を高く突き出して拾ってみせた。
強調されるヒップラインと、胸の谷間。
「これが『セクシー拾い』よ。やってみて」
「こ、こう……?」
私が真似をする。
でも、体が硬いせいで「腰を痛めたおばあちゃん」みたいな動きになってしまう。
「違う! もっと腰を反る! ……はぁ、ダメね。次!」
**講座2:接触の魔術』
「あんた、ベタベタくっつきすぎなのよ。男を燃え上がらせるには、『焦らし』が必要なの」
「焦らし?」
「そう。指先で、太ももの内側をツーッとなぞるの。決して掴んではダメ。羽毛で撫でるように……こうよ」
メリザが私の太ももで実演する。
ゾワッとした。確かに、ガシッと掴まれるより数倍くすぐったくて、変な声が出そうになる。
「これができると、男はイチコロよ。……ま、あんたの不器用な指じゃ、ただの『くすぐり攻撃』になりそうだけど」
メリザはニヤリと笑った。
「どう? 少しは勉強になった? 今夜、ケンジが帰ってきたら試してみなさいよ」
「えぇ……無理だよぉ。恥ずかしいもん」
「恥ずかしがってる場合!? あんた、このままだと一生『お子様サキュバス』のままよ!?」
痛いところを突かれた。
確かに、私はケンジさんに「守られる」ばかりで、サキュバスとして彼を満足させられている自信がない。
(……悔しいけど、メリザちゃんの言う通りかも)
私は拳を握りしめた。
「……分かった。やってみる」
「おっ、言うじゃない」
「その『セクシー拾い』と『焦らしタッチ』……今夜、実践してみせるわ!」
メリザは満足そうに頷いた。
「よく言ったわ。失敗したら、明日の朝食はあんたのおごりだからね」
こうして、私はメリザ直伝のテクニックを武器に、今夜のケンジさん攻略戦に挑むことになった。
……このテクニックが、地味子好きのケンジさんにどう作用するか、一抹の不安を抱えながら。
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