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21世紀のスイーツと山本五十六

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/16 📚 シリーズ: 帰ってきた山本五十六 📝 14,631文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

帰ってきた山本五十六 2023年4月18日午前7時50分頃

本文

21世紀のスイーツと山本五十六

眼を開いたとき、そこはブイン島の空ではなかった。目の前にそびえるのは赤煉瓦を積んだ駅舎。

だがその背後には鋼とガラスの巨塔がいくつも並び立っていた。

人々は手に奇妙な機械を持ちながら歩みを止めず、誰一人としてかつての帝国海軍の軍服を着た男に目を留める者はいなかった。

「……東京駅……か?」

山本五十六は背後に林立する摩天楼を見上げて思わず呟く。

「まるでニューヨークのマンハッタンのようだ……」

そのとき、風に煽られて一枚の新聞が足元に舞い落ちた。

『朝日新聞』の題字。そして紙面には「2023年4月18日」の日付。

五十六は拳を固く握りしめた。「……八十年の歳月が、過ぎた……のか」

新聞を折りたたみ、五十六は赤煉瓦駅舎から少し離れた巨大なビルに目を向けた。

そこには見覚えのある〒マークが掲げられていた。〈ゆうちょ銀行〉。

「……郵便貯金か」かつて庶民が頼った金融機関。その名が今も駅前に残っている。

彼は懐から革財布を取り出した。出撃前に支給された旧日本銀行券が数枚。

しわくちゃのまま収められている。

「ならば……まずは補給だ」五十六はJPタワーの扉を押し開けた。

窓口で旧紙幣を差し出すと、若い女性職員が固まった。

「……お客様、これは……」後ろから現れた上司が渋い顔で告げる。

「戦前の日本銀行券ですね。こちらでは扱えません。大変恐縮ですが、日本銀行本店へお持ちください」

五十六が深く頷いた瞬間、後ろに並んでいた会社員が笑顔で声をかけてきた。

「いやぁ、本格的ですね。映画の撮影か何かですか?日銀ならすぐ近くですよ。大手町の交差点を渡ってすぐです。ご案内しましょうか?」

スーツ姿のその男は八重洲勤務の田中信夫、三十七歳の証券営業マンだった。

歴史には疎いが人懐っこい性格で、五十六を完全に俳優と思い込んでいた。

八重洲口前の高層ビル群を見上げながら、五十六は小さく呟いた。

「……ニューヨークのように発展したか、東京は」

田中は笑いながら、旧海軍軍服姿の男を伴って駅前を歩き始めた。

周囲の人々はスマートフォンを手に行き交い、誰一人として振り返らない。

だがその一行の中に、戦後の時代を飛び越えて現れた連合艦隊司令長官が混じっていることを、誰も知らなかった。

二人は共に大手町の日銀本店へ。重厚な建物に足を踏み入れ、再び旧紙幣を差し出すと、現行紙幣との交換が認められた。

ただし職員に「身分証を」と問われ、五十六が軍服から「聯合艦隊司令長官任命状」を取り出すと、職員は絶句。

田中は「小道具まで凝ってるなぁ!」と爆笑して場を収めた。

換金を終えた五十六は安堵の息を漏らす。

「これで補給は整った」だが懐からもう一束の軍票を出すと、職員は首を横に振った。

「これは無効ですね……」田中が口を挟む。

「実は八重洲の方に紙幣商や古銭店がいくつかあるんです。見せたら面白がって高く買い取ってくれるかもしれませんよ」

「紙幣商……なるほど。ならば次の行軍は八重洲方面だな」

こうして二人は東京駅を挟んで東側へと歩を進めた。

戦前と戦後、そして現代を繋ぐ奇妙な二人連れの姿に、行き交う人々は誰一人として気付かなかった。

日銀の重厚な建物を後にした二人は、八重洲口へと歩いた。

田中信夫がスマホを片手に地図を確認しながら言う。

「この辺りに古銭店があるんですよ。軍票ならそっちの方が価値になるかもしれませんね」

五十六は懐の軍票を指先で確かめ、低く答える。

「無効通貨でも、別の価値を持つか……戦略物資に似ているな」

店先では、古銭商が目を輝かせて軍票を手に取り、値を付けた。

だが五十六は、丁寧に礼を述べて財布へ戻した。

「これは戦地で支給された証だ。いま売るものではない」

田中は笑い、肩をすくめた。

「いやぁ、本当に役作りが徹底してますね……」

八重洲通りを歩き出した頃、五十六がふと立ち止まった。

「……しかし、どうにも腹が減った」

田中は待ってましたとばかりに笑顔を見せる。

「それなら、ちょうどいいですよ。八重洲はグルメの宝庫ですから。お昼前ですし、何か召し上がりますか?」

五十六は真剣な面持ちで頷いた。

「食は兵站の要だ。……この二十一世紀の“補給”とやらを、確かめてみたい」

彼らが向かったのはパンケーキ専門店。

分厚いパンケーキを頬張りながら五十六は真剣な表情で呟く。

厚みのあるパンケーキを平らげた五十六は、満足げに胸を張った。

「うむ……現代の補給は、かくも豊潤か!」

だが会計の段になって、田中が顔を曇らせた。

「提督……いや、山本さん。手持ちがもう残り少ないですよ。あと一皿頼んだら足りなくなります」

五十六は懐の軍票を取り出して見せる。

「ならば、これを使うしかあるまい」

田中は苦笑した。

「いやいや、それじゃ払えませんって。でもさっきの古銭商なら買い取ってくれますよ。ちょっと走ってきますから!」

そう言って田中は、軍票を手に八重洲通りを駆けていった。

彼が戻ってきたとき、手には封筒。

「ほら、軍票が3万円になりましたよ!これで追加のパンケーキもいけます!」

五十六は驚き、そして静かに微笑んだ。

「……死地を共にした紙片が、今なお兵站を支えるか。時代とは妙なものだな」

分厚いパンケーキを食べ終えると、五十六は椅子に深く腰掛けた。

湯気の立つカップを手に取り、一口すする。

「……うむ、これがコーヒーか。戦地で口にしたものとは香りも格が違う」

田中は笑って答えた。

「せっかくなら、この機会に残りの軍票も換金しちゃいましょうよ。少しは現代の暮らしに慣れておかないと」

五十六は懐から束になった軍票を取り出し、机の上に置いた。

「戦場で支給された紙切れが、ここでなお補給物資に化けるか……兵站とはかくも妙なるものだ」

後に戻ってきた田中の封筒には、現行紙幣が数万円分詰められていた。

「これでしばらくは安心ですね!」

五十六は静かに頷いた。

「補給が整えば、行軍は軽快に進む。――次はどこに向かう」

田中はスマホを取り出し、地図を見せる。

「すぐ近くにクレープの有名店がありますよ。若い子たちが行列作るくらいの人気店です」

五十六の目が光った。

「行列……ならば敵情視察といこう。補給線の確認は怠るべきではない」

こうして二人は再び、八重洲の街を後にし、新たな甘味の補給へと歩みを進めた。

人気クレープ店の前。長い行列が歩道に伸び、制服姿の女子高生たちが賑やかに談笑していた。

その最後尾に、背筋を伸ばした軍服姿の大男が一人。

連合艦隊司令長官・山本五十六である。

ざわめきは、すぐに彼に集まった。

「え、なにあの人!本物の軍人さん?」

「映画のロケじゃない?俳優さんでしょ!」

「すごーい、写真撮りたーい!」

スマートフォンを構えた女子高生たちが、次々と五十六を取り囲む。

田中は苦笑いしつつ「すみません、ちょっと撮影中なんで……」と宥めるが、熱気は収まらない。

そのとき、ひとりの少女が画面を差し出した。

「ほら!インスタに上げたら、もう“いいね”いっぱいついてるよ!」

五十六は目を凝らした。掌に収まる黒い板に、鮮明な映像が次々と映し出されている。

「……これは……!米海軍の偵察機すら凌駕する機能……」

唸る彼に、女子高生たちはキャーキャーと歓声を上げた。

やがてクレープを手にした五十六は、一口かじって目を見開いた。

「携行性に優れ、兵站効率も高い……。これは戦を左右する補給物資だ!」

周囲の少女たちは「やっぱ俳優さん、セリフまで本格的!」と笑い、スマホを構え続けた。

田中のスマホが震えた。

画面を見て彼は小さく舌打ちした。

「やば、昼休み終わりです……。提督、すみません、私ここで会社戻らなきゃ」

五十六は深々と頷いた。

「兵站将校の任務、ご苦労であった。貴官の助力、感謝する」

田中は吹き出しそうになりながらも軽く手を振り、雑踏の中へ消えていった。

残された五十六の周りに、女子高生たちが自然と集まっていた。

「ねぇねぇ、どこから来たの?めっちゃ似合ってるんだけど、その軍服!」

「マジ本物っぽい! TikTokに上げたらバズるよ!」

「一緒にクレープ食べよー!」

差し出された紙包みのクレープを手にした五十六は、眉を上げた。

「女子供と共に補給とは……しかし、これもまた戦略か」

ギャル風の少女が笑いながらスマホを突き出す。

「はいチーズ!インスタ用〜!」

画面に映った自分の姿を見て、五十六は小さく唸った。

「……現代の兵は、戦場でなく“画面”に兵力を展開しているのか」

笑い声に包まれながら、彼はクレープを頬張った。

その光景は、戦中を生きた司令長官とは思えぬほど、平和で奇妙なものだった。

五十六は、共にクレープを頬張る女子高生たちを見渡した。

短いスカートから伸びる脚が眩しいほどに露出している。

「……君たち、いささか肌をさらしすぎではないか?」

彼の真剣な口調に、少女たちは顔を見合わせて笑った。

「え〜?ミニスカは当たり前だよ?」

「生足は正義!だよね〜」

五十六は唖然とし、続けざまに彼女らの髪を見た。

茶色、金色、部分的にピンク……戦時中の彼にとっては異様そのものだった。

「なぜ君たちは……外国人のような頭をしているのだ」

ギャルの一人がウインクして言った。

「これがイマドキの“ギャル文化”ってやつ!カワイイは正義だし!」

「ギャルは戦わないで“盛る”んです〜」

五十六はしばらく黙っていたが、やがて腕を組んで頷いた。

「……なるほど、勝敗を決するのは戦力ではなく、印象。現代の戦術、心得た」

少女たちは爆笑し、さらにスマホを向けて撮影を続けた。

五十六はふと、隣に座った女子高生が手にしている小さな板に目を留めた。

指先でなぞるたびに光が動き、人の姿が映り、文字が走る。彼は眉をひそめて問うた。

「……一体何をしておるのだ?」

「え、スマホだよスマホ!」と少女は笑顔で画面を差し出した。

そこには五十六がクレープを食べている姿が、既に写真として映し出されていた。

「ほら、もう撮れてるんだよ。カメラでカシャって」

五十六は息を呑み、画面を凝視した。

「……これは……偵察機の記録写真か?しかも、飛行もせず即時に現像……」

少女たちは声を揃えて笑った。

「違う違う!これはSNSにあげるの!みんなにシェアするんだよ!」

「インスタって言って、写真を見せ合うんだ!」

五十六はしばらく黙っていたが、やがて真剣な顔で呟いた。

「……恐るべきは、兵站よりも情報の速さか。現代戦は、この“スマホ”に制せられている……」

少女たちはますます笑い転げ、スマホを構えて「はい、五十六さんこっち見て!」とシャッターを切った。

女子高生たちの投稿は瞬く間に拡散された。

「#帰ってきた五十六」「#クレープ提督」といったタグと共に、軍服でクレープを頬張る男の写真が次々にタイムラインを流れていった。

最初は「昭和レトロのコスプレ爺ちゃん」「映画ロケでしょ」と冷やかす声が大半だった。

だが、写真の一枚に気付いた者がいた。

防衛省市ヶ谷庁舎、海上幕僚監部の分析室。若い自衛官がモニターを食い入るように見つめ、声を震わせた。

「ちょっと待て……この人物の手……」

映し出された画像では、クレープを持つ男の手の小指が欠けていた。

それは史料にも残る、山本五十六の特徴だった。

「この指の欠損……本人そのものです!」

「いや、そんなはずは……戦死は公然の事実だぞ」

「でも顔の輪郭、耳の形……AI照合の一致率98パーセント!」

室内にざわめきが走った。上官が低い声で命じる。

「直ちに内調と連携しろ。……“本物”が現代に現れたとしたら……」

こうしてネットで笑われていた「コスプレ爺ちゃん」は、一転して国家レベルの監視対象へと変わっていった。

五十六はクレープを食べ終えると、しばらく腕を組んで考え込んだ。

「……悪くはない。だが、補給線の要としてはまだ軽すぎるな」

JKたちは目を丸くした。

「え~十分お腹いっぱいになるでしょ?」

「てか補給線って何?ヤバくない?」

五十六は真剣に頷き、少女たちに向き直った。

「もっと良き甘味はないのか。現代の日本は、これほど発展しておるのだろう?」

その瞬間、ギャル風の少女がスマホを掲げて叫んだ。

「じゃあプリン行こ!映えプリン!」

「インスタでバズってるお店あるんだよ~!」

画面には黄金色に輝くプリンの写真が並んでいた。

五十六は目を凝らし、唸った。

「……これは……兵糧ではなく、宝玉か。よし、進路を取れ。次の補給地はその“映えプリン”とやらだ!」

少女たちは笑い転げながら五十六の両腕を引き、渋谷行きの電車へと導いていった。

その背後で、SNSの通知音が絶え間なく鳴り響いていた。

女子高生たちに連れられ、五十六は東京駅の改札前に立った。

目の前で少女がポケットから取り出した小さなカードを、無造作に機械にかざすと、軽やかな電子音と共に扉が開いた。

「ピッ!」

「はい次~!」

五十六は思わず声を漏らした。

「……機械仕掛けの関所を、一瞬で突破だと……?これが新時代の兵站管理か」

彼が財布から古びた硬貨を取り出そうとした時、少女の一人が笑いながらカードを差し出した。

「ほら、一緒に行こ!Suicaって言うんだよ!」

恐る恐るカードをかざすと「ピッ」と音がして改札機の扉が開いた。五十六は目を見開き、深く唸った。

「……切符も改札係もいらぬ……兵站の効率化、ここに極まれり」

ホームに降り立つと、次々と電車が滑り込んでくる。構内放送が響いた。

『山手線、外回り、渋谷・新宿方面行きです』

五十六は天井を仰いだ。

「……人の声にあらず。これは……放送機器か……軍令部の伝令すら凌駕する速さだ」

電車に乗り込めば、そこは兵舎とは比べ物にならぬ快適さだった。

冷房の風、液晶モニターに映るニュースや広告。

「……この乗り物が現代の通期電車だというのか……戦艦の士官室以上に快適ではないか」

さらに渋谷駅に到着し女子高生たちが「エキナカ寄って紅茶買お!」と駆け出すと、駅構内のカフェや土産物屋が並ぶ光景が広がった。

五十六はその賑わいを見渡し、呟いた。

「……鉄路の要衝を、すでに城塞都市と化している……。敵が攻めれば、ここで兵糧を尽きぬ限り補給可能か……。恐るべし、二十一世紀の兵站」

山手線を降り、女子高生たちに引かれるまま五十六が渋谷駅の改札を抜けると、人の波と巨大なビジョンに圧倒された。

だが次の瞬間、彼の視線は一角に釘付けとなった。

「……あれは……!」

交差点の喧噪の中、堂々と座る忠犬の銅像。

ハチ公。昭和初期に建立されたその姿は、彼の記憶の中と変わらぬものだった。

「八十年を経ても……変わらずここに在るか。時代が流れても忠義は忘れられぬということか……」

JKたちはきょとんとしながら笑った。

「え、知ってるの?ハチ公!待ち合わせの定番だよ!」

「インスタ映えスポットだよ~!」

五十六は厳かに頷いた。

「……この犬を知っておる。かつて渋谷にて目にした。人は変わり、街は変わっても、この忠義の象徴だけは揺るがぬのだな」

少女たちは「語りが熱い!」「マジ説得力ある!」とケラケラ笑いながらスマホを構えた。

その背後で、交差点のスクリーンにはまたしても五十六の姿がSNSで拡散され続けていた。

ハチ公像に一礼した後、五十六は女子高生たちに手を引かれ、渋谷のスクランブル交差点へと足を踏み入れた。

信号が青に変わると、四方八方から人と車が一斉に雪崩れ込む。

巨大なビジョンが輝き、広告と音楽が街を包んでいた。

五十六は思わず声を上げた。

「……なんという物量だ!陸軍の車両群にも勝る、終わりなき行軍……!」

彼の視線の先では、自動車の波が整然と流れ、人の群れが規律正しく交差点を渡っていた。

「これを統制なくして動かすとは……この国は、戦わずして兵站を制しているのか……」

女子高生たちは大笑いしてスマホを向けた。

「おじさんホントおもしろい!」

「バズるよ絶対!」

その瞬間、スクランブル交差点を見下ろすビルの上。

スターバックスの窓際に設置された定点カメラが、まさにその五十六と少女たちの姿を映していた。

AbemaTVの「渋谷ライブチャンネル」に流れる映像は、昼休みに視聴していた防衛省市ヶ谷の海上幕僚監部の一室にも届いていた。

若い幹部自衛官が叫ぶ。

「……映っている!あの男です!」

画面には白い夏服を纏い、真顔で交差点を見つめる五十六の姿。

女子高生に囲まれながらも、指を組んで唸るその様子。

上官は険しい顔でモニターを見つめた。

「……間違いない。あれは山本五十六本人だ。各方面に通達せよ、監視を強化する」

こうしてSNSに続き、ライブ配信映像までもが五十六の存在を裏付けることになった。

だが、当の本人はつゆ知らず。

「さて、次はどこで補給できる?」と少女たちに尋ね、彼女らの答えを楽しみにしていた。

店先のショーケースに並ぶ瓶入りプリンを見て、五十六は思わず足を止めた。

「……瓶に入れて供するのか……。まるで貴重な軍需品のようだな」

女子高生が笑いながら渡してくる。

「ほら、これ超人気!一番インスタ映えするやつ!」

ガラス瓶に収められた黄金色のプリンを手に、五十六はじっと見つめた。

「……これが、現代のプリンか」

スプーンを入れると、なめらかに形を崩し、濃厚な香りが立ち上った。

瓶を手にした五十六は、恐る恐るスプーンで掬い、口に含んだ。

五十六は目を見開いた。

「……! な、なんと……。濃厚にして柔らか、これほどの甘味が……これは……俺が知るプリンとは、まるで別物……!」

表情が和らぎ、頬がわずかに緩む。

「……戦地でこの一匙があれば、兵の士気も大いに上がっただろう」

少女たちはケラケラ笑ってスマホを向けた。

「おじさん最高!そのコメントマジバズる!」

昭和初期、横浜の洋菓子店で供されたプリンは、固く、寒天に近い食感だった。

時に玉子の香りが強すぎて、甘味よりも滋養強壮の食べ物のようであった。

「だがこれは……舌に溶け、甘さが波のように広がる……」

JKたちが笑って「そりゃそうだよ!進化してるんだから!」とスマホを向けると、五十六はスプーンを止めて真顔で言った。

「……甘味一つとっても、時代はここまで進歩するのか。戦艦の主砲より、恐ろしい変革だ……」

少女たちは爆笑しながら「バズる!バズる!」と声をあげ、SNSには「#帰ってきた五十六 #プリン革命」のタグが踊った。

一方、防衛省の海上幕僚監部の一室では、その様子がSNSと定点カメラを通じて映し出されていた。

「……プリンを食べている……!本人だ、間違いない!」

「どうやら、戦術研究よりも甘味探訪を優先しているようです」

五十六が瓶プリンを堪能していると、軽薄な笑みを浮かべた若者が二人、女子高生たちに声をかけてきた。

「ねえねえ、どこ行くの?一緒に遊ばない?」

「俺ら、カラオケ奢るし~」

瓶プリンを囲む五十六と女子高生たちのもとへ、二人組のチャラ男が絡んできた。

女子高生たちは困ったように顔を見合わせた。すると五十六がゆっくり立ち上がり、鋭い眼光を向けた。

「……貴様ら、何者だ」

「おいおい、せっかく可愛い子たちとプリンしてんのに、なんだよこの爺さん」

「どっか行けよ、コスプレ親父!」

女子高生が困った顔をした瞬間、五十六が立ち上がり、低い声で告げた。

「……退けと言ったはずだ」

だがチャラ男の一人は五十六の胸倉を掴もうと手を伸ばした。

次の瞬間、五十六の身体が静かに回転する。

「喝ッ!」

海軍で叩き込まれた柔術。

体重を流し込むようにして相手を掬い上げると、チャラ男は宙を舞い、ゴミ箱の中に勢いよく叩き込まれた。

「ぎゃあああっ!」

周囲からどよめきと拍手が起きる。

「すげえ!合気道みたい!」

「爺さんガチ強ぇ!」

もう一人のチャラ男は腰を抜かし、情けない声を上げて逃げ出した。

五十六は静かに制服の裾を正し、冷徹に呟いた。

「……武は力を誇示するためにあるのではない。人を守るために在る」

しかしその瞬間、交番から笛の音が響いた。

「おい君!何をしている!」

制服警官が駆けつけ、人だかりに緊張が走った。

女子高生たちは慌てて口を揃えた。

「違うんです!この人、私たちを助けてくれて!」

「チャラ男が絡んできて!」

警官は困惑の表情を浮かべながらも、五十六に敬礼するような仕草をした。

「……念のため署まで同行をお願いできますか」

五十六は大きく息を吐き、頷いた。

「……現代の憲兵殿に、従うとしよう」

その様子を女子高生のスマホがすべて記録していた。

SNSには「#渋谷提督」「#ゴミ箱投げ」「#JK守護神」のタグが並び、トレンドを席巻していった。

交番に連れて行かれた五十六は、落ち着いた様子で椅子に腰掛けていた。

女子高生たちも一緒に来て、口々に訴える。

「ほんとです!助けてもらったんです!」

「チャラ男が絡んできて、危なかったんです!」

若い警官はメモを取りながら頷いた。

「なるほど……では正当防衛、ということですね」

「はい、こちらも周囲の目撃証言が一致しています」

場の空気が安堵に包まれたその時、もう一人の警官が問いかけた。

「では最後に……身分証明書を拝見してもよろしいですか?」

五十六は一瞬きょとんとしたが、軍服の内ポケットから一枚の紙を取り出した。

それは黄ばんだ任命状だった。

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』と記された達筆の文字と、朱印。

警官二人は顔を見合わせた。

「……あの、これは……」

「ど、どう見ても昭和の古文書ですが……」

女子高生たちは大爆笑しながらスマホで写真を撮っている。

「やば!任命状だって!」「これ絶対バズる!」

警官は頭を抱えた。

「正当防衛に間違いはない。しかし、この“身分証”は一体……」

五十六は平然と胸を張った。

「我が身分、これ以上に明確なものはあるまい」

外では人だかりができ、ネットには「#渋谷提督 #任命状で本人確認」のタグが踊っていた。

交番から解放された五十六は、JKたちと再び渋谷の街へ。

「提督、次はどこ行きたい?」

「……甘味も良いが、そろそろ別の勝負もしてみたいものだ」

その一言に、JKの一人が笑いながら提案した。

「じゃあゲーセン行こう!スロットとかメダルとかあるし!」

ビルの中に広がる光と音の渦。五十六は目を細めて辺りを見回した。

「……これは……新手の兵器工廠か?」

「ちがうちがう!ゲームセンターだって!」

メダルを手渡され、五十六はスロットマシンに腰を下ろした。

指先でレバーを引くと、リールが回転し──ピタリと絵柄が揃った。

《JACKPOT!!》

派手な音と光が弾け、メダルが滝のように流れ落ちた。

女子高生たちは大歓声を上げる。

「やば!一発で当てた!」

「提督強すぎる!」

五十六は涼しい顔でメダルを掬い上げた。

「……兵法と博打に違いはない。理を読み、流れを掴む。それだけのことよ」

再びレバーを引けば、またもや当たりのベルが鳴り響く。隣のプレイヤーが唖然とし、店員が走り寄ってくる。

「ちょ、ちょっとお客様!そんな連発は……!」

五十六は静かに笑った。

「……またしても、強すぎて追い出されるかもしれぬな」

JKたちは爆笑しながらスマホを構え、SNSには新たなタグが踊った。

「#渋谷提督 #ゲーセン無双 #モナコの再来」

ジャックポットの勢いで山のように積み上がったメダルを抱え、五十六とJKたちは景品カウンターへ。

女子高生たちは目を輝かせながら棚を眺める。

「わぁ、ちいかわのぬいぐるみある!」

「かわいい~!でも高そうだよね」

五十六は冷静に店員へ告げる。

「その小動物の人形を──三つ、頼む」

店員は一瞬驚きながらも、カウンターにぬいぐるみを並べた。

「提督、いいんですか?自分の景品にしなくても」

「ふむ。勝利とは仲間と分かち合ってこそ味があるものだ」

そう言ってJKたちに人形を手渡すと、彼女たちは歓声を上げて抱きしめた。

五十六は残りのメダルを数え、端数で駄菓子コーナーからラムネ菓子を受け取った。

「俺の分の戦利品は、これが一番だ」

小さな瓶に入ったラムネを見つめ、五十六はふと口元をほころばせる。

「……かつての戦中の嗜好品に似ているな。だが、この瑞々しい甘さは……新しき日本の味か」

JKたちは笑い転げ、スマホのカメラを向ける。

「渋谷の提督、優しすぎ!」「インスタ映えする~!」

五十六は渋谷センター街の雑踏に立っていた。

JKに勧められたのは「タピオカミルクティ」。透明なカップに黒玉が沈んでいる。

「……これは弾薬の如し。敵の弾庫を想起させるが……」

おそるおそる受け取った彼は、差し出されたストローを見て眉をひそめる。

「提督~! こうやって刺すんだよ!」

JKの一人が笑いながらストローを豪快に突き刺す。

その瞬間、五十六の表情が引き締まる。

「なるほど、突撃槍の如し!ならば……」

勢いよくストローを突き立て、吸い込んだ。

もちもちとした食感が口の中に広がり、彼は一瞬言葉を失う。

「……弾丸のはずが……柔らかく……甘い……!?これは戦陣ではなく、菓子か!」

JKたちは腹を抱えて笑い、スマホで撮影を始める。

瞬く間にSNSに投稿され、「#帰ってきた五十六」がトレンドに浮上していった。

一方その頃、防衛省

渋谷署からの照会が正式ルートで回ってきた。

「身元不詳の軍装らしき恰好をした高齢男性。だが……これは本当に本人ではないのか?」

警務隊の職員が震える声で写真を提示する。そこにはタピオカを吸う五十六の姿。

会議室にざわめきが走る。

「バカな……山本五十六はブイン島で戦死したはずだ!」

「しかし見ろ、この手の欠けた指……一致している!」

「もしやこれは、歴史的存在の再出現……?いや、国家安全保障上の重大案件だ!」

次第に議論は「拘束して調査すべきか」から「世論への影響をどう抑えるか」へと移っていく。

だが肝心の本人は──渋谷の雑踏でタピオカを吸いながら、次の甘味を求めて女子高生たちと笑い合っていた。

タピオカを飲み干した五十六は、懐を探りながら小声で呟いた。

「……ふむ、甘味は戦費を食うな。そろそろ軍資金も心許ない」

JKの一人が首を傾げる。

「提督、お金なくなっちゃったんですか?」

「まだこれが残っておる」

そう言って取り出したのは、黄ばみかけた軍票の束。

「……さすがにこれ、使えないんじゃ……?」

JKたちは顔を見合わせたが、別の子が思い出したように声を上げた。

「センター街の端っこに、古いお金とか切手とか売ってるお店あったよ! 行ってみよ!」

狭い路地に佇む古美術店。店主は軍票を見るなり眉を上げた。

「ほぅ……戦時中の軍票か。珍しい。状態も悪くない」

「換金はできるか」

「正規では無理だが……コレクター需要なら買い取りできる」

五十六は静かに頷いた。

「……兵は戦場で命を賭す。紙切れは、いずれ骨董となる。これもまた世の習いか」

手にした新たな現金を見つめながら、五十六は再びJKたちへ向き直った。

「さあ、次の甘味とやらに案内してくれ」

少女たちは歓声を上げ、再び街の雑踏へと消えていった。

軍票を古物店で換金した五十六とJKたちは、渋谷のスイーツ店へ。

テーブルに運ばれてきたのは、背の高いグラスに盛られた巨大なチョコレートパフェだった。

クリームが塔のように積み上がり、苺やフルーツが艦載機のように配置されている。

五十六は思わず立ち上がり、厳かに言った。

「……これは……まるで大和の艦橋の如し!」

JKたちは爆笑しながらスマホを構えた。

「やば!例えが渋すぎ!」

「提督、パフェ見て戦艦連想するとか新しすぎ!」

スプーンを手に取ると、五十六は真剣な面持ちで一口すくい上げる。

冷たいアイスと甘いチョコ、瑞々しい果実が口いっぱいに広がる。

「……見事だ。視界を圧する威容にして、その味は絹のように柔らかい……。まさに大和にふさわしい甘味!」

女子高生たちは歓声を上げ、SNSには新たなタグが並んだ。

「#帰ってきた五十六 #パフェ艦橋 #渋谷提督」

海自現場 → 海幕への報告

現場隊員の無線

「こちら現場、対象は依然パフェを攻略中。女子高生と談笑しつつ、チョコソースを追加注文……繰り返す、チョコソースを追加注文」

海幕通信士(受信しながら固まる)

「……チョコソース、ですか?」

隣席の幕僚B

「……これ、防衛機密にあたるんですか?」

海幕内のやり取り

若手幕僚

「大臣に報告……どうまとめれば……? “元連合艦隊司令長官、現在スイーツを攻略中”?」

ベテラン幕僚

「馬鹿者! そんなの上げられるか!」

海幕長(頭を抱えながら)

「……しかし、偽報告もできん。映像は生中継で上がってきている……」

別の幕僚

「これじゃあ大臣に説明というより、“グルメレポート”を提出するしか……」

海幕長(ついにお手上げ)

「……俺は知らん! 大臣に直接見てもらえ!」

モニターには、女子高生と笑顔でパフェを食べる五十六の姿が大写しに。

場内は静まり返り、誰も報告書の文言を決められない――。

夕暮れのスクランブル交差点。

五十六はJKたちとスターバックスの窓際席に腰掛けていた。

目の前にはカフェラテと、ショーケースから選ばれたケーキ。

「……80年の歳月で、これほどの繁栄を遂げるとは……。

まさに明治維新をも凌ぐ偉業よ。対米戦も……何とか有利に進んだのだな……」

五十六は静かに頷きながら、窓の外に流れる光の洪水を眺めていた。

高層ビル、ネオン、行き交う車。彼の目には勝利の証のように映っていた。

だが、JKの一人が鞄から教科書を取り出し、気軽に差し出した。

「ねぇ提督、これ見てみなよ。歴史の授業でやったんだ」

五十六はページをめくり、言葉を失った。

そこには、焦土と化した東京の写真、原爆の惨禍、敗戦の二文字。

「……これが……日本の歩んだ道か」

手が震え、カップのラテがわずかに揺れた。

「……俺は……何を為したのだ……」

JKたちは気まずそうに目を逸らしたが、一人が言った。

「でもね、日本はちゃんと立ち直ったんだよ。ほら、今の渋谷、見てみて」

五十六はしばらく黙り込んだのち、ふっと微笑んだ。

「……そうか。敗れても、立ち上がれるか。ならばこの繁栄もまた、誇るべき勝利だ」

彼は再びケーキを口に運び、静かに味わった。

その様子を離れたテーブル越しから見つめていた海自隊員たちが無線で市ヶ谷に繋ぐ。

「対象、スターバックスにてカフェラテとケーキを堪能中。

“明治維新を凌ぐ偉業”と発言後、歴史教科書を確認し敗戦を認識……繰り返す、敗戦を認識」

会議室に再び沈黙が広がる。

「……大臣にどう説明すれば……」

歴史教科書を目にして敗戦を知った五十六は、しばし沈黙した。

やがてカップを置き、低く呟いた。

「……無辜の民、そして若き将兵……。我が指揮の下で散った命の数々……」

JKたちが心配そうに覗き込む。

「提督……?」

五十六は深く息を吸い、決意を帯びた声で言った。

「靖国へ行きたい。まずは、彼らを慰霊せねばならぬ」

場の空気は一変した。

スマホで“靖国神社 場所”と検索したJKが地図を見せる。

「千代田区だよ。電車で行けます!」

靖国神社到着

鳥居をくぐると、静謐な空気が漂っていた。

五十六は真っ直ぐ本殿へ歩みを進め、深く頭を垂れる。

「……諸君、俺は帰った。未熟ゆえ、敗北を喫し、国を焦土と化さしめた。

だが、日本はなお立ち上がった。これを知って安らかに眠ってほしい」

涙ぐむJKもいた。

「提督……」

一方、市ヶ谷(防衛省)

現場からの無線が届く。

「対象、靖国神社に参拝中。英霊に向かい長時間の黙祷……繰り返す、黙祷」

会議室が静まり返る。

ある幕僚が言った。

「これは……もはや拘束の是非ではなく、国家の象徴的出来事ではないか」

海幕長は深く息を吐き、机に肘をついた。

「……大臣にどう報告するか……“渋谷でタピオカ吸っていた人物が、靖国で英霊に拝礼中”とは……」

周囲の幕僚たちも頭を抱えるしかなかった。

拝礼を終えた五十六の前に、制服姿の海自隊員たちが進み出た。

「山本長官――いや、山本五十六提督。我々は海上自衛隊の者です。

ここから先は、どうか身を保護させていただきたい」

五十六は静かに彼らを見つめる。

「海じょう……自衛隊?」

隊員の一人が答えた。

「終戦後、日本の海軍は解体されました。しかし、海を護る力は受け継がれています。

我々は、その後継組織なのです」

五十六は深く目を閉じ、やがて小さく頷いた。

「……そうか。ならばよい。

連合艦隊司令長官としての我が使命は、常に海を護ること。

ならば今は、諸君らの大臣、軍令部総長に従うが本望よ」

後ろで見守っていたJKたちは思わず声を上げた。

「提督……!」

五十六は振り返り、柔らかく笑う。

「少女たちよ、大変世話になった。

君らのおかげで、この八十年を超えた日本を目にすることができた。……感謝する」

その言葉にJKたちは涙ぐみながら手を振った。

やがて靖国神社の境内前に黒塗りの車両が横付けされる。

五十六は静かに乗り込み、市ヶ谷に向けて出発した。

一方、市ヶ谷(防衛省)

防衛大臣室では海上幕僚長をはじめとする幹部たちが慌ただしく集まっていた。

「間もなく本省に到着とのことです……!」

「どうお迎えする……?」

スクリーンには、靖国を後に車両に乗る五十六の姿が映し出されていた。

そこには、もはや「迷子の甘味探訪者」ではなく、

再び 連合艦隊司令長官の顔 を取り戻した武人がいた。

五十六を見送った後、JKたちは靖国神社の参道を歩いていた。

「……なんかさ、すごいもの見ちゃったよね」

「うん。あれ、絶対ただのコスプレじゃないよ。あの背中……本物だった」

スマホの画面には、撮影した動画がいくつも残っていた。

五十六がタピオカを不思議そうに吸い、渋谷の交差点で目を丸くし、そして靖国で深々と頭を下げる姿――。

どのシーンも冗談では済ませられない、強烈な存在感が漂っていた。

「アップしちゃう?」

「もうみんなやってるよ。“#帰ってきた五十六”でバズってる!」

彼女たちの手元で動画は拡散され、コメントが次々と流れていく。

「え、なにこの人。演技力すごすぎ」

「違うって!指が欠けてるんだよ!本人だろこれ!」

「提督が渋谷でスイーツ巡りしてるのおもろすぎwww」

JKたちは笑い合いながらも、胸の奥には奇妙な高揚感があった。

「なんかさ……歴史の教科書に載ってた人と一緒にスイーツ食べてたって……ヤバくない?」

「私たち、きっと一生忘れないよね」

夕焼けの東京を背景に、少女たちは思い出の写真を見せ合いながら歩き去った。

その姿は、知らず知らずのうちに「現代の語り部」となりつつあった。

黒塗りの公用車は靖国を後にし、市ヶ谷へと向かっていた。

後部座席に座る五十六は、窓の外を流れる東京の街並みに目をやっていた。

隣の海自隊員が、慌ただしくスマートフォンを確認している。

「……長官、ひとつお見せしたいものがございます」

「うむ?」

画面にはSNSのタイムラインが映し出されていた。

そこには、さきほどまで共に行動していた女子高生たちの投稿が並んでいた。

『#帰ってきた五十六 本物だった気がする』

『タピオカ飲んで、パフェ食べて、でも靖国で真剣に祈ってた。提督、ありがとう』

『日本はきっと、この人に見守られてたんだと思う』

五十六は画面をしばらく見つめ、やがて小さく息をついた。

「……ありがとう、か」

彼の顔にふっと柔らかい笑みが浮かぶ。

「八十年を経てもなお……若き者たちにそう言ってもらえるとは……」

車内の空気はしんと静まり返った。

隊員たちもまた、その投稿の言葉に胸を打たれていた。

やがて五十六は、ゆっくりと目を閉じ、深く頷いた。

「……よし、市ヶ谷に赴こう。

今の日本を、後継の者たちと共に見定めねばならぬ」

車列は靖国を離れ、市ヶ谷へと向かっていた。

窓の外には、夜の帳が降り始めた東京の街。

無数の光が川の流れのように交差点を埋め尽くしている。

五十六はその光景をじっと見つめ、低く呟いた。

「……八十年の歳月が、この国をここまで変えたか。

勝敗を超えてなお、立ち上がった日本……」

隊員がそっとスマートフォンを差し出す。

画面には、さきほどの女子高生たちが投稿した「ありがとう」の文字が光っていた。

五十六は小さく微笑み、目を閉じて深く頷いた。

その時、車列は防衛省・市ヶ谷正門をくぐった。

厳かな鉄門が開き、ゆっくりと車が敷地へと入っていく。

――そして、ここから先の物語はまた別のお話となる。

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人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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