第40話 囚われのセラ! 決死の救出アタック!
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あらすじ
内閣魔導院・魔法生活安全局、対魔法市民支援課の生真面目公務員と皮肉屋悪魔 - 第40話 囚われのセラ! 決死の救出アタック!
本文
ナナside
グラディエルが倒れてから、思い詰めている。
ずっと情報をまとめ、地図を睨み、潜入経路を考え続けている。
「ご主人様、少し休んだ方が……」
「休んでいる暇はありません」
澪の声は静かだったが、その奥には激しい感情が渦巻いていた。
「セラちゃんに危害を加えたということは……これは上層部の命令ではなく、現場の暴走です」
「だろうな」
「もしそうならセラちゃんが危険です。すぐに助けなければなりません」
「どうするつもりだ?」
「考えられる事は考えました。今夜、潜入します」
澪が立ち上がった。その瞳には疲労の色も濃いが……強い決意も宿っている。
◇◇◇◇◇
深夜。
※アタシたちは中央研究所の外壁に張り付いていた。
(※なんと今回も澪は黒い帽子に黒いスカーフという出で立ちだ。
本当に潜入に有用だと思ってたんだな)
グラディエルは重傷だが、何とか動ける状態まで回復していた。
憎らしいが流石は上級天使だ。
「スルナちゃん、警備の配置は分かりますか?」
「三体のゴーレムが巡回中、だと思います。でも……それだと警備が薄すぎると思います」
「油断してるのか、それとも……」
「迷っている暇はありません。ナナちゃん、お願いします」
「分かった」
アタシが結界解除の魔法を唱え、グラディエルが静かに鍵穴を破壊。
セラが捕らわれている施設に潜入を果たした。
◇◇◇◇◇
廊下は薄暗く、不気味な静寂に包まれていた。
アタシが先頭を歩き、その後を澪とスルナがその後を追う。
グラディエルは後方で警戒。
「この先……です」
グラディエルが指差した方向へ進むと、巨大な扉があった。
厳重に封印されているが、それもアタシが解除する。
扉が開いた瞬間――
澪の息を呑む声が聞こえた。
この部屋には巨大な培養カプセルが無数に並んでいる。
その中には悪魔たちが閉じ込められていた。
インプ、サキュバス、中級悪魔……様々な種族の悪魔が、苦痛に顔を歪めて呻いている。
「これは……」
澪が呆然と立ち尽くす。
さらに奥には、翼をもがれた天使がいた。
魔力を吸い尽くされ、もはや動くこともできない。
「ひどい……」
スルナが涙を浮かべる。
そして、壁際には透明な結晶に変質しつつある精霊たちがいた。悲鳴すら上げられず、ただ苦痛に耐えている。
「許せない……!」
澪が拳を握りしめた。
「澪」
「……分かっています。まずはセラちゃんを助けないと」
アタシたちはその部屋を抜け、さらに奥へと進んだ。
そして大部屋に入った瞬間。
「セラちゃん……!」
澪が叫んだ。
部屋の中央に、巨大な装置があった。ヒヒイロカネ注入装置とでも言うのだろうか。
その中心にセラが拘束されていた。
※手足を鎖で縛られ寸分も動く余地が無い。
顔色も青白く、意識がない。
(※あれじゃ拘束というより八つ裂き刑だ。手足に切れ込みを入れたらそのまま千切れそうだ)
……ここに来るまで施設の人間と出くわさなかったのは不自然だが、今はそれを考えている時間と無いな。
「セラちゃん! セラちゃん!」
澪がセラに駆け寄り声を掛けるが、セラは何の反応も返さない。
グラディエルが手足の鎖を断ち切るが、それでも無反応。
「ご主人様、セラさんの体が……!」
スルナが震える声で言った。
セラの体が徐々に結晶化し始めていた。ヒヒイロカネ化の過程だ。
「そんな、止めなきゃ……! セラちゃん……起きてください……!」
澪がセラの肩に触れて揺らす。
ゆらゆらと髪がそよぐばかりだ。
「スルナちゃんの時みたいに魔力を送り込めば……」
「意識が無ければ魔力は受け取れん。
スルナはサキュバスだから無意識に魔力を受け取れたが、セラはそうじゃない」
「うぅ、どうすれば……!」
澪が絶望的なセラの服を握りしめる。
……正直言えば方法はある。一つだけ。
だが、それを澪は良しとするだろうか。
「……ナナちゃん、何か方法があるんですよね?」
※澪が縋るような目でアタシを見つめる。
(※本当にコイツは……こんなに悪魔の心情を読み取れる人間なんて他に居ないぞ)
「【隷属魔法】だ。相手の意識の有無に関わらず、強制的に操ることができる。
それなら、セラを操って魔力を受け取らせることができる。ヒヒイロカネ化を止められる」
「でも、それは……っ」
澪が言葉を失う。
隷属魔法。それは禁術だ。相手の自由意志を自在に操り完全に支配する。
澪はその恐ろしさと悍しさを良く知っている。
何せ数ヶ月前はその【隷属魔法】に囚われた市民達を救う為にセラと共に戦ったんだからな。
そして、今はセラを救う為に奴隷にしようとしている。
「他に方法はない」
「でも、セラちゃんを奴隷にするなんて……っ」
「やらなきゃ、セラは死ぬぞ」
「……やり方は知ってるん、ですよね?」
「ああ」
アタシは知っている。
昔、アタシも隷属魔法をかけられたことがある。
記憶が蘇る。
自分の体が自分のものでなくなる感覚。
意識はあるのに、体が勝手に動く。
抵抗することすらできない。
あぁ、トラウマだ。
だが、そんな事は澪もセラも知ってる。
だからこそ悩んでるんだろうが。
「解除、出来るんですよね?」
「【隷属魔法】を掛けられた奴等が、政府が手配した祓い師によって解除されてたのは知ってるだろ?」
「……はい」
澪がジッとセラの寝顔を見つめる。その瞳に有るのは決意と悲しみ。
澪が深呼吸して……セラの手を握った。
「セラちゃん、ごめんなさい……この罪と償いは必ず背負います」
澪は祈る様に握ったセラの手に額を当てる。
「やります。教えてください、ナナちゃん」
「わかった」
アタシは隷属魔法の手順を伝える。
自分の過去を思い出しながら。
それが澪を苦しめる事になると理解していながら。
……ここで我が身可愛さで日和るような奴じゃない事は、アタシが良く知ってるから。
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