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第9話 真夜中の邂逅 2

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/14 📚 シリーズ: 終焉の探偵 📝 1,955文字 ✅ 全年齢

あらすじ

終焉の探偵 - 第9話 真夜中の邂逅 2

本文

「何故語尾があがるっ!! 意味分かんないっ!」

 私がそう叫んだ、その時――

 眼下の地面が、ぐずりと崩れ、そのぽっかり空いた穴から――

「――っ!?」

 また、黒いものが這い上がってきた。

 さっきより大きい。

 さっきより、形がはっきりしている。

 人の形。

 でも、人じゃない。

 顔のようなものがあって、

 目のようなものがあって、

 口のようなものが、ぐにゃりと開いた。

「ひっ……!」

 声が出ない。

 さっきの安堵が、一瞬で恐怖に変わる。

 そして――気づいた。

 周りにも、影が。

 三体。

 四体。

 地面から、次々と這い上がってくる。

 私たちのいる建物を、取り囲むように。

「っ!?」

 探偵さんの表情が変わった。

 飄々とした笑みが消えて、

 鋭い目つきになる。

「……まずいな」

 探偵さんの声が、初めて焦りを含んだ。

 影がじわじわと壁を這い上がってくる。

 黒い腕が、四方八方から――

「掴まって!」

 えっ!? 探偵さんが、また私を抱き上げた!?

 とっさに腕を探偵さんの首に回す!

「うわわ……!?」

 いきなりのことで、何が起きたのか分からない、が。

 おっと、これはお姫様抱っこ!?

 ――浪漫すぎる!!

 影の腕が、私がいた場所を通過する。

 ギリギリだった。

 探偵さんが、私を抱きかかえたまま跳んだ。

 文字通りに。

「ひゃっ!?」

 看板からホテルの壁を蹴って、隣のビルへ。

 そこからまた次の屋根へ。

「え、え、ええええ!?」

 探偵さんが、屋根から屋根へ跳ぶ。

 私を抱えたまま。

 軽々と。

「な、何これ……!」

 ビルの壁面を走る。

 重力を無視したような動き。

 人間離れ、どころか物理法則も無視したような運動能力。

「ちょっと揺れるけど、我慢して!」

「ちょ、ちょっとじゃないですーーーっ!!」

 でも――

 探偵さんの腕は、確実に私を守ってくれていた。

 絶対に落とさない。

 温かい。

「……ところで君の家ってどこかな?」

 不意に聞かれて、私はわたわたと住所を伝える。

「わかった、あと少しだけ、我慢しててね」

 探偵さんがそう言いながら私の顔を覗き込んだ。

 夜風が彼の黒髪をなぶる。月光に照られたその整った顔に一瞬目を奪われてしまう。

(近い……顔が近い……)

 心臓がドキドキする。

 怖さと恥ずかしさが混ざって、

 何が何だか分からない。

(探偵さんの腕……意外と筋肉質……)

(え、待って、今そんなこと考えてる場合!?)

 ――と。

「痛だだだだっ!」

 探偵さんの胸元に固い何かが入っていて,抱き締められると、それが遠慮なく私の身体にゴリゴリ食い込んでくる。

 ――これは、鎖?

「あ、ごめん。もう少しだから」

 探偵さんの声が、耳元で。

 優しい声。

「は、はい……」

 自分でもビックリするくらい素直な声。

 食い込む鎖が痛いけど、なんだか顔が熱い。

 耳たぶまで熱くなってる。

 うわ、恥ずかしっ!

 さらに高く跳ぶ探偵さん。

 ビルの屋上へ。

 そこから隣のビルへ。

 大跳躍。

「ひゃああああ!!」

 私、探偵さんにしがみつく。

 探偵さんの首に回した手に力がはいる。

 必然的に更に密着することになる訳で――

「大丈夫、落とさないから」

 着地の衝撃。

 でも探偵さんが全部吸収している。

 私は全く揺れない。

(凄い……この人……人間じゃ……ない……ラノベやアニメの主人公みたいだ……)

 激しい跳躍が続く。

 頭がクラクラする。

 恐怖と緊張と、

 探偵さんの腕の温かさと、

 色々が混ざって――

「あ……の……」

 視界がぼやける。

 意識が遠のく。

「お嬢さん?」

「探偵……さん……」

 私、気を失った。

 探偵さんの腕の中で。

◇

 ――気がつくと、私は自室のベッドにいた。

「……ん……」

 窓の外は明るい。

 早朝の光が差し込んでいる。

 夢――を見たのかな?

(ううん、違う……私……どうやって……)

 記憶が蘇る。

 探偵さんに抱きかかえられて、

 屋根から屋根へ、

 そして――

「気絶……した……?」

 顔が真っ赤になる。

「うわああああ恥ずかしい!!」

 後頭部が、ずきずき痛む。

 腕には、かすり傷。

 パジャマの裾が、少し破れてる。

 手に、何か握りしめてる。

 探偵さんのコートの繊維?

 テーブルに、あの名刺。

 新しく書き込みがある。

〈困った時にはお気軽に!〉

 良かった、日本語だ。

 でも、これでさっき見た光景が全部夢だったんじゃないかな、という私の希望は粉砕された。

 そして――

 千晶ちゃんのことを思い出す。

(……千晶ちゃん……)

 胸が、ぎゅっと痛む。

(……学校で……確かめないと……)

 あの人には、何故窓に張り付いてたのかとか何故あそこにいたのか、とか聞きたいことが山ほどある。

 怪しいのは承知で明日公園まで行ってみるべきかも知れない。

 でも今は――

 千晶ちゃんのことが心配で仕方なかった。

 結局それから登校時間まで、私はほとんど眠れなかった。

◇◇◇

これにて、終焉の探偵、Chapter 2終了です。

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作者について

カクナ・ノゾム

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カクナノゾムと申します。 趣味の小説を細々と書いてます。 面白いことは間違いないので是非是非ご一読くださいませ。

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