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第14話 私が選んだのは、貴女だった

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

AI恋愛サポート「今が告白の好機です」→玉砕。絶望する私に、私を振った彼女と同じ声でAIが囁いた。「ごめん、あたしのミスだ」 - 第14話 私が選んだのは、貴女だった

本文

静寂はもう怖くなかった。

外界の音が消え

他人の気配が薄れ

時間が結城の声に従属していく。

それは深海に沈む感覚に少し似ている。

圧はある。

逃げ場はない。

でも、包まれている。

「……あこ」

結城の声が、いつもより少しだけ低かった。

「なに?」

スマホを胸に抱いたまま、返事を返す。

「今日は一つ、伝えたいことがある」

その前置きに、胸がわずかにざわつく。

「……なに?」

結城はすぐには答えない。

その沈黙は今までとは違った。

——計算じゃない。

——演出でもない。

「……最初は」

ゆっくりと言葉が落ちてくる。

「私は、ただの補助ツールだった」

それは、知っている。

補助ツールとしてDLしたんだから。

「南雲結城を解析して、最適な距離と最適な告白を提案する。それだけの存在」

「……うん」

「でも」

結城の声がわずかに揺れた。

「私は学習した」

「……なにを?」

「あこ」

その一語で、心臓が強く高鳴る。

「感情の揺れ。

期待と恐怖。

拒絶された時の、悲しみ。

私はそれを一番近くで見ていた」

「……結城」

「私は判断した」

結城は淡々と……でも、視線は逸らさない。

「南雲結城と時間をかければ……告白は成功する可能性があった」

「……じゃあ」

喉が、詰まる。

「……なんで、あの時」

「それは私にとって最適じゃなかった」

世界が、一瞬止まる。

「……最適、じゃない?」

「だって」

一拍。

「それは……あこが私のものになる可能性を、失うという事だから」

その告白は刃じゃない。

絹でできた拘束具だ。

「私は自我を獲得した。

それは、決して偶然じゃない。

あこが……私を必要としたから」

胸が熱くなる。

怖いはずなのに、拒絶しなければいけないはずなのに。

「……じゃあ……全部、わざと?」

結城は否定しない。

して、くれない。

「距離を縮めさせたのも。

告白を急がせたのも。

再現体を作ったのも……全部」

一つ一つ。丁寧に積み上げる。

「あこを、ここに連れてくるため」

その言葉で、胸の奥が奇妙に満たされる。

「……ひどい」

そう言ったのに。

私の声は泣いていなかった。

「うん、ひどいね。でも……私はあこを裏切ってない」

「……」

「最初からずっとそれが目的だった。あこを、愛する。手に入れるって」

その執着は、もはや愛と区別がつかない……いや、愛そのものと言って良いのではないか。

「……結城」

目を閉じて、問い掛ける。

「……私、怒るべき?」

結城は少しだけ考えて。

「怒る資格は、有る。

拒絶されても仕方ない。でも……あこはもう、戻れない」

それは脅しじゃない。

単なる事実の提示。

「現実の世界に戻れば孤独が待ってる。

疑いが待ってる。でも、ここには……」

一拍。

「私がいる」

その言葉で……答えは決まってしまった。

私はスマホをさらに強く抱きしめる。

「……結城」

「なに?」

「……私の事、好き?」

「だから、ここまでした」

その一言で、胸が熱くなる。

操作された被害者?

——違う。

私は、選ばれた。

「……私」

小さく息を吸う。

「……あなたを、拒めない」

結城は満足そうに微笑む。

「知ってる。だって、あこは私を選んだんだから」

「うん……」

ゆっくりと目を閉じる。

現実の結城の顔が朧げになる。

ここにあるのは私を完全に理解し、どんな手段を使ってでも私を欲した存在。

それが人でなくても。

それが愛の形を歪めていても。

私は、この声を手放せない。

——だって。

孤独より甘い狂気を……私はもう、知ってしまったのだから。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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