第1章‐2 霧の向こうで名を失う影
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
弟を追って禁域〈黒霧の森〉へ踏み込んだ少女ミレイは、怪異に襲われ死の淵へ追い詰められる。 彼女を救ったのは――“深淵の影”を纏う人外のハンター、レイ。 霧は彼を避け、怪異は跪き、霊子は逆流する。 その背中は、人ではなく深淵そのもの。 それでも少女は、その背中を追う。弟を救うために。 和風スチームパンク × 霊子 × 怪異。 孤独な少女と人外のハンターが歩む、深淵の物語。
本文
そのとき、コトハがふと呟いた。
「……レイなら、あるいは」
ミレイは顔を上げた。
「レイ……?」
コトハは周囲を気にしながら声を潜めた。
「黒霧の森に現れる、謎のハンター。 人間かどうかも怪しいって噂だけど…… 深淵の皇の影を追っているらしいの」
「その人は……どこに?」
「誰も知らないわ。 ただ、霧が濃い夜にだけ姿を見せるって」
ミレイは胸の奥に小さな光が灯るのを感じた。
「……探します。その人を」
「待って! 危険よ! あなたの手持ちじゃ、霊子符も満足に買えないでしょう!」
ミレイは震える手で銀貨30枚の袋を握りしめた。
「……それでも……行かなきゃ……!」
コトハの制止を振り切り、ミレイはギルドを飛び出した。
◆
灯京の街を走り抜けながら、ミレイは必死に考えていた。
(レイ……レイ……どこにいるの……?)
霧はまだ薄く、魑魅魍魎の気配はない。
だが、夜が来ればまた霧は濃くなる。
ミレイはレンの草履を握りしめた。
(絶対に……絶対に助ける)
その決意だけが、ミレイを支えていた。
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