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第16話 勝つは薬

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/16 📚 シリーズ: 王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 📝 1,976文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 - 第16話 勝つは薬

本文

――勝利は言葉を丸くする

勝つチームは空気が柔らかい。

それは、思っていた以上にはっきりしていた。

⸻

王都――ヴァルドハイム・レガリア

王都のスタジアム。

初戦の敗戦で荒れていた観客席は、今は落ち着いている。

理由は単純だった。

勝っている。

連勝。

点が入るたびに、歓声が上がる。

「よし!」

「この調子だ!」

魔族の中継ぎがマウンドに上がった時も、ブーイングは起きなかった。

ざわめきは、ある。

でもそれは警戒に近い。

そして。

三者凡退。

「……悪くねぇな」

誰かが、そう言った。

別の声が続く。

「点差あるしな」

「今は、抑えてくれりゃいい」

評価基準が勝敗に吸い寄せられている。

私は静かに息を吐いた。

(……人は、勝ちに甘い)

それは、悪い事ばかりじゃない。

⸻

コナ――ラピッドファング

獣人の町、コナ。

ここはもっと分かりやすい。

勝っている時は、陽気。

負けている時は、不機嫌。

決定打を打ったのが、誰であろうと。

「うおおお!」

「やったぞ!」

その瞬間だけは、同じだった。

ハーフのマクセルダ選手がタイムリーを放つ。

一瞬の、間。

そして。

「……よし!」

誰かが叫ぶ。

「今のは文句ねぇ!」

獣人の若者が、拳を振り上げる。

「勝ちに来てるんだろ!」

それで、終わりだ。

この町では、勝利が正義だった。

⸻

ルメルーナ・ブリッジズ

ルメルーナは、少し違う。

前線だった街。

魔族への感情が、複雑な場所。

でも。

エース、バルト選手が投げる日は。

空気が、締まる。

「今日は、あいつか」

「……頼むぞ」

好投。

七回無失点。

三振を取るたびに、拍手が増える。

八回。

誰かが言う。

「……魔族だろうが、関係ねぇな」

別の声。

「勝たせてくれるならな」

その言葉は、冷たい。

それでも、否定ではない。

受容の、入口だった。

⸻

負けているチーム

一方。

負けが込んでいるチームでは、空気が荒れる。

エラーが出る。

「何やってんだ!」

それが、魔族やハーフなら。

「だから言ったんだ!」

声が、尖る。

でも。

同じ試合で、決勝打を放てば。

「……今のは、良かった」

不満は消えない。

だけど認める。

それが、現実だった。

⸻

私はいくつものスタジアムを回った。

顔を隠し。

ただ、聞いた。

人は、思想より先に結果を見る。

綺麗事より、勝敗を見る。

でも。

勝てば。

言葉は、丸くなる。

視線は柔らぐ。

「魔族だから」

「ハーフだから」

それは、負けている時ほど、使われる言葉だった。

逆に勝っている時は。

「うちの選手」

その一言で、括られる。

⸻

王都に戻る途中。

子供の声が聞こえた。

「なぁ、あの人さ」

「前、サヨナラ打った人だろ?」

「すげぇよな」

私は足を止める。

それは擁護でも、思想でもない。

ただの、憧れ。

私は、微笑みそうになるのを必死に堪えた。

⸻

勝利は万能じゃない。

差別を消しはしない。

でも。

続ければ、確実に薄めていく。

それを、私は確かに見た。

⸻

シーズンは確実に進んでいた。

表では、勝敗が語られ。

裏では、圧力が消えきらない。

魔族やハーフの選手への嫌がらせは、形を変えて続いている。

直接的な暴力は減ったけど、視線や噂、陰口は残ったままだ。

それでも、試合は続く。

そして。

⸻

オールスター戦の発表

王都から正式な告知が出された。

今季中盤、リーグ初となるオールスター戦を開催する。

概要は、簡潔。

• 各球団からの推薦

• ファン投票

• そして、選手間投票

三つを合わせて、出場選手を決める。

“祝祭”であり、同時に“評価の場”。

誰が、選ばれるのか。

誰が、選ばれないのか。

それだけで、街はざわついた。

⸻

酒場。

男の人が札を前に唸っている。

「……バルトか」

「成績は、文句ねぇ」

「でもなぁ……」

別の街角。

「ラピッドファングの、あのハーフ」

「マクセルダだっけか? あいつ、飛ばすよな」

「うちのチームだったらなぁ……」

票を入れる手が、止まる。

勝っている事実と、拭えない感情。

多くのファンは結局。

自分のチームの選手に票を入れた。

⸻

結果は、はっきりしていた。

バルト選手への票は、ほとんどがルメルーナ。

マクセルダ選手への票は、ほとんどがラピッドファング。

他球団ファンからの票は、ごくわずか。

否定ではない。

だが、越境もしない。

そんな、数字だった。

⸻

そして、選手間投票

空気が変わったのは、ここから。

選手達はグラウンドで全てを見ている。

球の重さ。

制球。

打球音。

言葉ではなく、プレーで判断する。

結果。

魔族の投手、バルト。

そしてハーフの強打者、マクセルダ。

二人は、選手間投票で選出された。

⸻

「……まぁ、成績だけ見りゃ、な」

そう言う者。

「選手が選ぶなら文句は言えねぇ」

と、渋々認める者。

そして。

「それでも、祭りだろ?」

と、不満を隠さない者。

否定も、賞賛も、まだ混ざっている。

だけど。

“選ばれた”という事実だけは、

誰にも否定出来なかった。

⸻

圧力は、残っている。

受容は、未完成だ。

それでも。

オールスター戦という舞台に、魔族とハーフの名が並んだ。

それは。

このリーグが、次の段階に進んだ証だった。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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