第21話 熱意と敵意の表紙画像

第21話 熱意と敵意

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/21 📚 シリーズ: 王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 📝 2,159文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 - 第21話 熱意と敵意

本文

シーズンは終盤に入っていた。

順位表の上と下が完全に分かれている。

もう計算する必要もない。

残り試合数と勝率が、現実を突き付けていた。

⸻

スファード・レゾナンスのベンチは静かだった。

優勝は、無い。

その事実を誰も口にしないだけ。

魔族も、ハーフも、他の種族も。

視線は目の前の試合に向いている。

勝っても、順位は変わらない。

負けても、もう失う物は少ない。

それでも。

一打席、一球に、力が入る。

「次、行けるぞ」

誰かが言う。

「分かってる」

短い返事。

それで十分だった。

観客席はまばらだ。

けれど、拍手は消えない。

彼らを見続けてきた人達が、残っている。

⸻

コーンウォリス・ハーベスターズの空気は、もう少し重かった。

食料も、土地も、支援もある。

だからこそ、期待が大きかった。

「この成績じゃ……」

そんな声が、抑えきれない。

選手は必死だ。

ここで結果を出さなければ次は無い。

選手は静かに準備をする。

来季へ繋げるために。

勝利は喜ばれる。

敗戦はため息を生む。

それでも、手は抜かない。

⸻

一方で。

優勝争いの空気は、明確だった。

ヴァルドハイム・レガリア。

王都のチームは背負う物が多い。

勝てば称賛。

負ければ非難。

それでも、今は結果が全て。

選手が活躍すれば応援には一層熱がこもる。

「今のは、文句なしだ」

そう言う言葉が、増えた。

⸻

そして。

ルメルーナ・ブリッジズ。

バルト選手がマウンドに立つ。

その瞬間、スタジアムが静まる。

敵地でも、それは同じだった。

投げる。

抑える。

数字が全てを語る。

魔族だという事実は消えない。

でも。

勝ち続ける投手を、無視する事も出来ない。

「今日も、か」

そんな呟きが、観客席に広がる。

⸻

特別席で私は両方を見てきた。

エステル様は膝の上で手を握り、真剣な顔をしている。

「……重いのう」

「はい。優勝争いですから」

「勝てば、全てが許される。負ければ、全部が責められる……」

少し考えてから、言う。

「厳しい場所じゃ」

「でも、必要な場所です」

そう答えると、エステル様は小さく頷いた。

シーズンは、終わる。

けれど。

ここで積み上がった感情は終わらない。

優勝を争う二つのチームと、それを見送るチーム達。

それぞれの立場で同じ白球を見つめていた。

⸻

シーズン終盤。

ここまでくると順位表はほぼ固まっていた。

その事実が、静かに人の心を削っていく。

⸻

最初は小さな違和感だった。

遠征から戻った馬車の車体に引っかき傷が増えている。

スタジアムの門に汚れた紙が貼られている。

「出て行け」

「勝たせるな」

誰に向けた物か、分かりやすい。

⸻

狙われたのはやはり魔族やハーフ。

ルメルーナ・ブリッジズ。

特に、バルト選手。

リーグNo. 1のエースピッチャー。

宿舎の周囲を夜にうろつく影。

通路に放置された、割れた瓶。

誰も直接は触れない。

でも、意図は明確だった。

「見られているぞ」

と。

⸻

それでもバルト選手は投げ続けた。

試合前のブルペン。

淡々と、いつも通り。

「……問題ありません」

そう言う声は、低く、揺れない。

監督は何も言わなかった。

止める理由が、数字の上では無いからだ。

⸻

別の場所では、もっと露骨だった。

スファード・レゾナンスの若手選手が帰り道で囲まれた。

「お前が打たないからだ」

「目立つな」

手は出なかった。

でも、肩を突かれ、帽子を落とされる。

軽傷。

未遂。

翌日の練習で、その選手の動きは硬かった。

⸻

報告は全て私の所に集まる。

「危険度は?」

「今のところ、直接的な怪我はありません」

「……分かりました。警備を増やしてください」

声は平静を保つ。

でも、胸の奥が冷える。

これは暴動ではない。

騒ぎでもない。

だからこそ、難しい。

⸻

エステル様は珍しく黙っていた。

資料を読み、眉を寄せる。

「……勝つと、嫌われるのじゃな。その矛先が魔族やハーフに向かっておるのか」

「はい。負けてたらそのチームのファンに嫌われますけど」

「ふむ……どうすれば良いのじゃ?」

「時間が必要です」

簡単な解決方法なんて無い。

そう言うと、エステル様は少し考え込んだ後に頷いた。

⸻

王都でも同じ兆しがあった。

レガリアの魔族選手の自宅に脅迫状。

夜中の足音。

でも。

チームメイトは、変わらなかった。

「気にするな」

「一緒に帰るぞ」

そう言って、誰かが隣に立つ。

首脳陣も明確だった。

「うちの選手だ。守る」

サラリーキャップへの不満は、ある。

でも、人を切り捨てる理由にはならない。

そこは一貫していた。

⸻

ファンの反応も割れていた。

罵声。

沈黙。

そして、擁護。

「やり過ぎだろ」

「良い選手なのに」

声は、まだ小さい。

でも、確実に存在している。

⸻

私は現場に出た。

試合後の通路。

宿舎の前。

練習場。

とにかく見回る。

「アタシが出たらすぐ終わるんだけどね」

「虐殺事件を起こす気はない」

「はいはい」

ナオは軽い調子。

でも、視線は鋭い。

⸻

ある夜。

私は、直接魔族とハーフの志願者達と話した。

「辞めたい人は、止めません」

そう前置きした上で、続ける。

「でも、残る人は……全力で守ります」

静かな空気。

誰かが、言った。

「……信じて、良いんですか」

「はい」

即答。

その言葉が、どれだけ重いかは……分かっている。

⸻

騒ぎは収まっていない。

でも。

誰も、退かなかった。

終盤の空気は張り詰めている。

勝敗だけじゃない。

意地と、恐怖と、期待。

全部が、同じ場所に集まりつつあった。

次は、優勝争いの中心。

魔族のエースが、その全てを背負う事になる。

ジャンル・タグ

, , , , ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 4 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

👥 フォロワー: 8人

作者ページを見る