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第22話 首位争い

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/22 📚 シリーズ: 王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 📝 1,908文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 - 第22話 首位争い

本文

終盤。

数字の上では、まだ二つの名前が残っていた。

ヴァルドハイム・レガリア。

ルメルーナ・ブリッジズ。

他の球団はもう自分達の位置を理解している。

勝敗よりも、来季。

怪我をさせない事。

若手を試す事。

でも、この二つだけは違った。

⸻

王都は静かだった。

静か過ぎて不気味なほど。

酒場では声が落ちる。

新聞は言葉を選ぶ。

「次で、大きく変わる」

「きっと勝つさ」

誰も大声で言わない。

期待が怖さに変わっている。

⸻

ルメルーナは張り詰めていた。

バルト選手の登板間隔は詰められていない。

でも、誰もが彼を見る。

ブルペンで投げる肩。

マウンドに立つ背中。

「無理はさせない」

監督は何度も言う。

でも、マウンドに立つ本人がきっと一番分かっている。

ここを落とせば終わる、と

⸻

レガリアも同じだった。

王都の重圧。

最初に荒れた、あの一戦の記憶。

でも、今は違う。

勝っている。

それが空気を変えていた。

自分達の選手に向けられる視線も明らかに違う。

「今日は、頼むぞ」

⸻

私は特別席から見ている。

エステル様は膝の上で手を組み、珍しく静かだ。

「……胃が、きゅっとするのじゃ」

「それは、緊張ですね」

「妾は見る側なのにのう」

ナオが後ろで笑う。

「勝負所ってやつだね。好きだよ、そーゆーの」

「珍しく同意」

その言葉が嬉しかったのか、エステル様に抱き付いてきたので引き剥がした。

⸻

下位の球団は空気が違う。

スファード・レゾナンス。

コーンウォリス・ハーベスターズ。

もう、優勝は無い。

でも。

彼らは手を抜かない。

「負けっぱなしにはさせない」

その気配だけは、はっきりしている。

⸻

観客席も変わった。

ヤジは減った。

その代わり応援が増えた。

一球一球に息を飲む。

魔族が投げれば、どよめき。

ハーフが打てば、驚き。

否定と肯定が同じ拍手に混じる。

⸻

私は思う。

ここまで来た。

完全な理解なんてまだ先だ。

でも、同じ勝敗を背負って、同じ一瞬に息を止めている。

今は、それだけで十分だ。

⸻

そして、日程表の赤丸。

直接対決が残っている。

ヴァルドハイム・レガリア。

ルメルーナ・ブリッジズ。

勝った方が王座に手を掛ける。

負けた方は、2番目になる。

エステル様が小さく言った。

「……妾は、どちらが勝っても泣くかもしれぬ」

私は、少し笑った。

「それなら、良いリーグだったという事です」

この戦いは、もうただの野球じゃない。

それを誰もが分かっている。

試合当日。

王都とルメルーナを繋ぐ機関車はいつもより静かだった。

車内にあるのは興奮よりも緊張。

応援団は居る。

旗もある。

でも、声が出ない。

誰もが分かっている。

この一戦は、ただの勝ち敗けではない事を。

⸻

スタジアムの周囲は人で埋まっていた。

異種族が混ざっている。

意図的に距離を取っている者も居る。

それでも、同じ方向を向いている。

球場が完成した頃には想像出来なかった光景だ。

⸻

特別席。

私はいつもの位置に座る。

エステル様は落ち着きが無い。

「い、いよいよじゃな……心臓がばくばくするのじゃ」

「深呼吸してください」

「……ふう」

ナオが腕を組む。

「ここまで来たら、もう成るように成るでしょ」

その言葉は軽い。

でも、視線はフィールドから離れない。

⸻

両チームが整列する。

レガリア。

ブリッジズ。

拍手は均等だった。

どちらかだけが大きい、という事は無い。

それが、今の空気だ。

⸻

先発投手が発表される。

ルメルーナ。

バルト選手。

どよめきが走る。

驚きじゃない。

覚悟の音だ。

王都側の先発も、エース。

人間の投手、ローガン選手。

自慢の速球でここまで引っ張ってきた。

「正面衝突、ですね」

「そうじゃな……正々堂々、というやつじゃ」

⸻

バルト選手は淡々と投げる。

肩の動きに異常は見られない。

でも、気付く。

ほんの僅か。

呼吸が、深い。

無理はしていない。

でも、全てを出すつもりだ。

⸻

観客席の一角で小さな揉め事が起きる。

けれど、すぐに警備と周囲のファンが止めた。

「今日は、やめとけ」

「野球を見に来たんだろ」

そんな声が、普通に飛ぶ。

完全じゃない。

でも、前とは違う。

⸻

私はバットを握る手を思い出す。

守る為に振ってきた。

殴らない為に跳ね返してきた。

このリーグも、同じだ。

押し返す。

叩き潰さない。

⸻

国歌の代わりにリーグ賛歌が流れる。

異種族の子供達が並んで歌う。

少し音程はずれ。

でも、皆笑顔だ。

⸻

エステル様が呟いた。

「……妾は願うのじゃ」

「何をですか?」

「どちらが勝っても、今日ここに来た者達が……帰る時に、少しだけ誇らしくなっておる事を」

私は頷いた。

その為に頑張ってきたんだから。

⸻

選手達が守備位置に散る。

バルト選手がマウンドに立つ。

捕手が構える。

静寂。

そして。

第一球が、投げ込まれる。

この瞬間。

この一球。

それが、リーグの一年を。

そして、この国の空気を決めようとしていた。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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