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第24話 優勝、決まる

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/24 📚 シリーズ: 王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 📝 1,909文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 - 第24話 優勝、決まる

本文

最終カードを前にして、国全体が少し息を潜めていた。

王都の通りはいつもより静かだ。

露店は出ている。酒場も開いている。

でも、人々の会話は自然と同じ話題に収束していく。

「……次で、決まるな」

「レガリアか、ブリッジズか」

誰かが種族の話題を振りかけても、深くは続かない。

否定も、肯定も、どこか慎重だ。

一度、皆が知ってしまったから。

勝敗が理屈を追い越える瞬間を。

⸻

リーグ本部では最後の調整が続いていた。

警備計画。

導線。

観客席の配置。

人魚用の水路は念入りに確認される。

小柄な種族向けの段差も再点検。

「問題ありません」

報告を受けて、私は頷く。

「ありがとうございます。引き続きお願いします」

長いシーズンで誰もが疲れている。

それでも、誰も手を抜かない。

⸻

エステル様は資料の山に囲まれていた。

「うむ……」

眉を寄せ、唸る。

「どうなさいましたか?」

「どちらが勝っても……妾は泣いてしまう気がするのじゃ」

「それは、良い事だと思います」

「そうなのか?」

「はい。どちらも、全力でここまで来ましたから」

少し考えてから、エステル様は笑った。

「うむ。では、堂々と泣く!」

「ハンカチは用意しておきますね」

⸻

ナオは窓の外を見ている。

「ねえ、イオリちゃん」

「何?」

「ここまで盛況になると思ってた?」

「正直に言うなら……半信半疑だった」

「だよねー」

ケラケラと笑う。

「でもさ。ここまで来た以上、最後まで上手く行くと良いよね」

「うん……いやに殊勝だね」

「これでも立ち上げの時から秘書やってるからねー」

ナオは珍しく静かに笑った。

⸻

夜。

選手達はそれぞれの場所で過ごしている。

レガリアの主砲はバットを磨く。

ブリッジズのバルト選手は目を閉じ、呼吸を整える。

誰も余計な言葉を口にしない。

必要なのは、言い訳でも理由でもない。

ただ、明日の一球だ。

⸻

私は廊下を歩きながら立ち止まる。

遠くで、誰かがボールを投げる音がした。

乾いた音。

それだけで胸が締め付けられる。

この国は、今……分かれ道に立っている。

でも、それは破滅への分岐じゃない。

選ぶのは勝者だけじゃない。

観る者も、支える者も、皆だから。

⸻

私は前を向く。

最終カード。

最後の三連戦。

このリーグが、何を残すのか。

それを確かめる時が来た。

最終戦。

数字の上ではまだ確定していない。

けれど、誰もが知っている。

試合で終わる。

ヴァルドハイム・レガリアとルメルーナ・ブリッジズ。

勝率は、0.5差。

直接対決ではない。

それぞれが、同時刻に別の球場で戦っている。

片方が勝ち、片方が負ければ決まる。

両方勝てば、僅差のまま逃げ切り。

両方負ければ、重たい沈黙。

スタジアムはどこも満員だった。

⸻

私は特別席にいる。

エステル様は珍しくお菓子も食べず、背筋を伸ばして座っていた。

「……手が冷たいのじゃ」

「緊張してますね」

「当然じゃ! 妾はこの国で一番、野球を応援しておるからな!」

ナオが肩を揺らす。

「良い子良い子。良い子のエステルちゃんには後で甘い物を買ってあげちゃう」

「約束じゃぞ!」

⸻

試合は進む。

速報が板に張り出されるたび、観客席がざわめく。

歓声と、ため息が交互に波のように押し寄せる。

レガリア、接戦。

ブリッジズ、投手戦。

バルト選手は今日も投げている。

いつも通り。

静かで、揺れない。

魔族だとか、そんな言葉はもう聞こえない。

あるのは、点が入るかどうか。

それだけだ。

⸻

終盤。

七回。

八回。

誰かが祈る。

誰かが、拳を握る。

勝っているチームのファンは、声を出せない。

負けているチームのファンは、黙り込む。

勝敗が、重たい。

⸻

九回。

速報が、更新される。

レガリア、勝ち越し。

ブリッジズ、同点のまま。

スタジアムが、揺れた。

私は息を止める。

エステル様は私の袖を掴んでいる。

「……イオリ」

「はい」

「これで、決まるのか?」

「最後まで分かりません。ですが……」

⸻

数分が、永遠みたいに長い。

そして。

板が、書き換えられた。

ブリッジズ、敗戦。

レガリア、勝利。

⸻

一瞬、音が消えた。

次の瞬間、王都のスタジアムが爆発した。

歓声。

拍手。

泣き声。

誰かが、誰かを抱きしめる。

知らない者同士でも、関係なく。

⸻

エステル様は目を潤ませていた。

「……勝った、のじゃな?」

「はい」

「妾は……」

言葉が続かない。

でも涙は止まらない。

「良かった……本当に、良かったのじゃ」

何も言わず隣に立って、その頭を撫でた。

⸻

別の場所ではブリッジズの選手達が帽子を取っていた。

バルト選手はマウンドを見つめ、静かに一礼する。

敗者の顔。

けれど、誰も目を逸らさない。

観客席から拍手が起きる。

最初は疎ら。

でも、確かに広がっていく。

⸻

このリーグの最初の王者は、ヴァルドハイム・レガリア。

でも。

この一年で得たのはそれだけじゃない。

私は、そう確信していた。

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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