海と空が混ざる場所
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ほのぼのとした、ちょっと幻想的なファンタジー掌編集です
本文
港の外れに、クラゲが上がってくる場所がある。
岩場の先、波が穏やかに淀むあたり。そこだけ水面がいつもゆらゆらしている。荒れることもなく、完全に凪ぐこともない。理由は分からない。ヴェルナの人間は昔からそういうものだと知っている。
そこから空へとのぼるクラゲは、夜明け前が一番、数が多い。
水の中からゆっくり傘が持ち上がってくる。半透明の体が、波を割って、空気に触れる。そのまま上へ。重力を忘れたように、するすると。触手が水滴を引きずりながら、朝の光を受けて虹色に光る。
一匹が上がると、また一匹。ゆっくりと浮かんでいく。
ゼナは収穫前の見回りのついでに、よくここへ来る。果樹園はすぐそこだ。クラゲが枝に引っかかるのは、ここから流れてくるせいだと思っている。
水面から空へ。境目を越える瞬間だけ、クラゲは少し迷うように見える。
ゼナの思い違いかもしれない。
でも毎朝見ていると、海と空の違いに、クラゲも戸惑うのではないかという気がしてくる。
やがて空が白んでくる。クラゲはもうヴェルナの上にいる。今日も街に、クラゲが来た。
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