第2章 遠いはずの話
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
突如発表された「首都機能の出雲移転」。 日本中が混乱する中、それは遠いニュースのはずだった——地方の小さな町に暮らす遥にとっては。 しかし、カフェで働く日常の中に、少しずつ“変化”が入り込む。 移転関係者が現れ、人が動き出し、町の空気が変わっていく。 「選べる」という言葉に揺さぶられながらも、遥はまだ決断できずにいた。 やがて、周囲の人々が次々と出雲へ向かい、ついには店の店主・真琴までもが何も告げず去る。 残された遥は、初めて自分の意思で「行く」ことを選ぶ。 出雲で待っていたのは、“何もない場所”と、過酷な現実。 未完成の国家プロジェクトの最前線で、遥は肉体を削りながら現場に立つことになる。 そこで出会ったのは、過去の災害によってすべてを失い、「形に残すこと」に執着する現場責任者・真白。 彼女の背中に導かれるように、遥は“作る側”へと変わっていく。 しかしある日、現場事故が発生。 真白は他人を救い、その代わりに命を落とす。 悲劇の直後、それでも現場は止まらない。 「止めればすべてが止まる」という現実の中で、遥は問いを突きつけられる——逃げるのか、続けるのか。 そして遥は、再び立ち上がる。 真白の意志を引き継ぎ、自らが現場を回す側へと変わっていく。 一方その頃、東京でも静かに人材流出が進み、国家の重心そのものが移り始めていた。 これは、国家の転換点の物語であると同時に、 「選ばなかった人生」から「自分で選ぶ人生」へと踏み出す、一人の人間の物語である。
本文
※本作はAI生成を含みます。
翌日も、町は変わらなかった。
奥羽市。同じ朝。同じ通り。同じ静けさ。昨日のニュースが、嘘だったかのように。
カフェ《灯》。扉を開ける。——チリン
「おはようございます」「おはよう」それだけ。日常は、何も変わらない。
テレビをつける。同じ話題。ただ、少しトーンが変わっている。「政府は本日、具体的な移転工程の検討に入りました」
〝決定〟から、〝実行〟へ。一歩進んでいる。
「本気なんですね」遥が眉をひそめる。昨日より、現実味がある。
真琴は軽く頷く。「みたいだね」それ以上は言わない。準備を続ける。コーヒー豆。カップ。動きは変わらない。空気は、少し違った。
昼前。客が来る。常連。いつもの席。
「見たか、昨日の」開口一番。やはり、その話になる。
「見ましたよ」遥が答える。男は座りながら、ため息をつく。「どうなるんだろうな」
答えのない問い。「遠い話ですよね」遥は正直に言う。ここから出雲は遠い。心理的にも。
男は少しだけ笑う。「そう思ってると、来るんだよな」
「来る?」遥は引っかかる。
「変化ってやつはな。気づいたら、もう変わってる。そういうもんだ」
コーヒーが出される。湯気が立つ。男は一口飲む。遥は何も言えない。分かるような、分からないような。
午後。客はまばら。静かな時間。遥はスマートフォンを見る。ニュース記事が増えている。「移転に伴う雇用創出」「企業の動向」「地方への影響」——どれも、現実的な話になっている。
コメント欄には賛成、反対、不安、期待。すべてが混ざる。遥はスクロールを止める。見ていても、答えは出ない。
ふと顔を上げる。店内。変わらない。真琴がいる。コーヒーの匂い。静かな音。ここは、動いていない——そう思う。思いながら、少し違う気もした。
「ねえ」真琴が言う。「もし、だよ。行けるとしたら、行く?」
突然の質問に遥は少し驚く。昨日と似ている。でも少し違う。〝現実〟として聞かれている。
「いや……」言葉が止まる。本気で考えたことがない。「分かんないです」正直に言う。
真琴はそれを聞いて頷く。「だよね。でも、分からないって、いい状態だと思う」
「なんでですか」
「まだ選べるってことだから」
また同じ言葉——選ぶ。遥はその言葉を繰り返す。今まで、あまり意識したことがない。ここにいるのも、仕事も、なんとなく続いている。それが普通だった。今は違う。見えないところで、少しだけ揺れている。
夕方。日が落ちる。店を閉める準備。外に出る。空を見る。
変わらない景色。それでも、少しだけ違って見える。
遠いはずの話が、少しだけ近づいた。まだ触れられない距離だ。近づいている、それだけは分かる。
遥はゆっくりと息を吐く。「……来るのかな」誰にともなく言う。答えはない。その問い自体が、もう変化だった。