第12話 「悔しいって気持ち」

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/11 📚 シリーズ: 『Shine Stars』 📝 2,285文字 ✅ 全年齢

あらすじ

初ライブから三日後。星ノ宮学園・軽音部。――静かだった。

本文

初ライブから三日後。

星ノ宮学園・軽音部。

――静かだった。

「……」

「…………」

「………………」

夏川ソラが耐えきれず叫ぶ。

「重ぉぉぉぉい!! 空気重いですぅぅぅ!!」

音楽室に声が反響する。

朝比奈ミオが机に突っ伏したまま呻いた。

「だってぇ……」

「ライブ終わっちゃったし……」

白雪カノンも小さく頷く。

「文化祭が終わった後みたいです……」

黒崎レイが呆れた顔でベースを磨いている。

「一回ライブしただけで燃え尽きるな」

「でもレイ先輩!!」

ソラが勢いよく立ち上がる。

「ライブ終わった次の日って“伝説の余韻”みたいなのあるじゃないですか!!」

「知らん」 「えぇ!?」

ユウは窓際でギターを触っていた。

キィン……

高い音が静かに響く。

でも。

少しだけ分かってしまう。

ライブが終わってから。

胸の奥が妙に静かだった。

それなのに。

何かが足りない感じもする。

(……変な感じだ)

そのとき。

ガラッ。

音楽室の扉が開いた。

「あ、いたいた」

全員が振り向く。

そこにいたのは――

先日のライブ会場で会った、あの女子生徒だった。

ショートカット。 鋭い目。 どこか近寄りがたい雰囲気。

ソラが即座に小声で騒ぐ。

「き、来ました!! “嫌いじゃなかった先輩”!!」 「その呼び方やめろ」 レイが即ツッコミ。

女子生徒はため息をつく。

「……騒がしいバンド」

ミオが慌てて立ち上がる。

「えっと!! この前はありがとうございました!!」 「別に褒めに来たわけじゃない」

空気が少し止まる。

女子生徒は軽くスマホを掲げた。

「これ」

画面には、先日のライブ映像。

Shine Starsの演奏だった。

「えぇ!? 撮ってたんですか!?」 ソラが飛び上がる。

「記録用」

女子生徒は淡々としている。

「生徒会でライブ管理してるから」

レイが小さく眉を動かした。

(生徒会……)

「で」

女子生徒は再生ボタンを押す。

体育館に響く、自分たちの演奏。

最初は少し誇らしかった。

でも――

数秒後。

ミオの顔が固まる。

「……あれ」

ソラも青ざめる。

「ドラム走ってるぅぅぅ!!」 「ギターも少し前のめり」 レイが即座に分析する。

カノンが頭を抱える。

「コードミスしてます……!」

演奏してる時は気づかなかった。

でも録音で聞くと、ズレも粗さも全部見える。

そして何より。

「……歌、弱い」

女子生徒が言った。

ミオの肩がピクッと震える。

静寂。

女子生徒は続ける。

「気持ちは分かる」

「でも、届いてない場所も多い」

その言葉は鋭かった。

でも。

悪意じゃない。

本当に感じたことを、そのまま言っている。

ミオは黙って映像を見ていた。

自分の声。 自分の歌。

ライブ中は夢中だった。

楽しかった。

でも今聞くと。

(……届いてない)

自分でも分かってしまう。

ソラが小さく呟く。

「なんか……悔しいです」

カノンも俯く。

「はい……」

ユウは黙っていた。

胸の奥が少し痛い。

でも。

嫌じゃない。

むしろ。

(これか)

ライブ後に残るもの。

“悔しさ”。

女子生徒はスマホを閉じる。

「でも」

全員が顔を上げる。

「初ライブで、あそこまで崩れなかったのは普通にすごい」

ソラの目が少し輝く。

「ほ、褒められてます!?」 「半分だけ」

女子生徒は真顔。

ミオが苦笑する。

「厳しいなぁ……」

「音楽だから」

その返答は、妙にレイっぽかった。

レイも少しだけ目を細める。

女子生徒は壁にもたれた。

「Starlight Festival、本気で出るなら」

「今のままじゃ落ちる」

空気が変わる。

誰も喋らない。

「予選動画審査、かなりレベル高いから」

ユウが小さく聞く。

「……知ってるのか」

女子生徒は頷く。

「去年、審査補助やってた」

その瞬間。

レイの表情がわずかに変わった。

女子生徒はそれを見て、小さく言う。

「……久しぶり」

音楽室が静まり返る。

ソラが小声で混乱する。

「え、知り合い!?」 「マジですか!?」 「うるさい」

レイが低く返す。

女子生徒は少しだけ目を逸らした。

「元・Festival出場者同士」

ミオが息を呑む。

(やっぱり)

レイの過去。

Festival。

全部繋がっていた。

女子生徒は静かに言った。

「……黒崎レイ」

「またバンドやるんだ」

その声は少しだけ柔らかかった。

レイは数秒黙る。

そして。

「成り行きだ」

「嘘」

即答だった。

レイが顔をしかめる。

ソラが「うわぁ……」と空気を読む。

カノンが緊張で固まっている。

ミオだけが、そのやり取りを見ていた。

(この人)

レイのこと、ちゃんと知ってる。

女子生徒はShine Starsを見る。

「あなたたち、まだ下手」

グサッ。

ソラがダメージを受ける。

「でも」

その続きがあった。

「音が消えてない」

ユウの指が止まる。

女子生徒は続ける。

「普通、初心者バンドって演奏に必死で、“自分の音”消えるから」

「でも、あなたたちは残ってる」

ミオが小さく息を呑む。

「だから」

「悔しいって思えるなら、まだ伸びる」

静かな声。

でも、その言葉は重かった。

長い沈黙。

そのあと。

ミオが笑った。

少しだけ悔しそうに。

でも、前を向いた笑顔で。

「……うん」

「もっと上手くなる」

ソラも拳を握る。

「私、次は走りません!!」 「多分走る」 レイ即答。

「なんでですかぁ!?」

カノンもノートを抱きしめる。

「もっと、皆さんの音を支えられるようになります……!」

ユウは窓の外を見る。

夕焼けが滲んでいた。

胸の奥が熱い。

ライブは終わった。

でも。

まだ全然、終われない。

女子生徒は扉へ向かう。

出る直前。

少しだけ振り返った。

「……あ、名前言ってなかった」

静かな声。

「三条シオン」

「Starlight Festival、去年準優勝バンドのギター」

音楽室が凍りつく。

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」

ソラの絶叫が、校舎中に響いた。

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