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雪の温冷浴

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/28 📚 シリーズ: 終末世界90式の旅 📝 3,342文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

文明崩壊後の世界を90式戦車に乗って見に行こう

本文

シオナは湯船に戻ると、肩まで湯に沈んでいた。

雪の中に突っ伏していた背中が、一気に湯の熱を吸い込む。肌の表面だけが冷えて、体の奥はまだ温泉で温まっている。その差がぞくぞくして、思わず息が漏れた。

「うわ……戻ってくる」

サヤはまだ笑っていた。

「戻ってくるって何が?」

「血の流れ」

「表現が生々しい」

ミズホは呆れた顔をしていたが、目だけは少し笑っていた。

「シオナ、あれ本当に何だったの。急に雪に突っ伏すから、心臓止まるかと思った」

シオナは湯船の縁に腕を置き、頭に積もった雪を手で払った。

「荻窪にいた頃さ」

「荻窪?」

サヤが首を傾げる。

「翻訳の夜勤明けによく、駅前の湯に行ってたんだよね。夜中ずっと作業して、朝になって頭がぐにゃぐにゃのまま行って、サウナに入って」

ミズホがうなずく。

「夜勤明けのサウナか。効きそう」

「効く。サウナで体がほかほかになって、もう何も考えられないくらい温まったあとに、水風呂に入るの。最初は冷たくて無理って思うんだけど、少しすると頭がすっとしてくる」

サヤは雪の降る空を見上げた。

「それで、ここでは水風呂の代わりに雪?」

「そう。露天で温まって、横に雪があったから、同じことできるかなって」

ミズホはすぐに釘を刺した。

「思いつきは分かった。でも長くやらない。顔を埋めない。心臓に負担かかるから、本当に一瞬だけ」

「分かってる」

「分かってる人は、無言で飛び出して雪に突っ伏さない」

「それは……ごめん」

サヤは湯の中で肩を揺らして笑った。

「でも、ちょっと分かるんだよね。見てたら気持ちよさそうだった」

ミズホが即座に見る。

「サヤ」

「いや、やるとは言ってない」

「目が言ってる」

「ちょっとだけ。仰向けならいい?」

「なんで相談が具体的になってるの」

シオナは少し笑って、露天風呂の脇に積もった雪を見た。そこは人が歩いていない場所で、ふかふかと厚く積もっている。さっき自分が突っ伏した跡だけが、妙にくっきり残っていた。

「仰向けの方が顔は埋まらないかも」

「シオナまで」

ミズホが眉を寄せる。

サヤは湯船の縁に手をかけた。

「じゃあ、三人で一瞬だけ。寝転がって、すぐ戻る。これなら危なくないでしょ」

「危なくないとは言ってない」

ミズホは深く息を吐いた。

外では吹雪がまだ続いている。けれど、露天風呂の周りは建物と岩に囲まれていて、風の直撃は少し弱い。雪は降っているが、足元の場所さえ選べばすぐ湯船へ戻れる。

「十秒」

ミズホが言った。

サヤの顔が明るくなる。

「十秒いいの?」

「一回だけ。三人一緒。立ちくらみしたら即中止。出たらすぐ湯船に戻る。戻ったあとはちゃんと温まってから出る」

シオナは真面目にうなずいた。

「分かった」

サヤも両手を上げる。

「分かった。ミズホ監督のもと、安全第一で雪ダイブ」

「ダイブじゃない。寝転がるだけ」

三人は湯船の中で一度顔を見合わせた。

そして、同時に湯船から出た。

冷気が一気に肌へ触れる。湯気をまとった体に雪の粒が当たり、肩や腕に白く残る。足元の石は冷たく、三人は小走りで雪の厚い場所へ向かった。

「せーの」

サヤの声で、三人は雪の上へ仰向けに寝転がった。

瞬間、背中に冷たさが刺さった。

「冷えっ」

サヤが声を上げた。

「冷たい、冷たいけど……」

シオナは空を見上げた。灰色の空から雪が落ちてくる。湯気をまとった体が雪に触れて、じわじわと熱を奪われていく。けれどその冷たさの奥に、確かにすっと抜ける感覚があった。

「すっきりする……」

ミズホは両腕を体の横に置いたまま、歯を食いしばるような顔をしていた。

「確かに、頭はすっきりする。でも寒い。もう寒い」

サヤは笑いながら震えていた。

「体はほかほかなのに背中が冷蔵庫」

「十秒。もう戻る」

ミズホが言った。

「え、まだ八秒くらいじゃない?」

「体感で十秒」

「体感ずるい」

「戻る」

三人はほとんど同時に起き上がった。

雪が背中や髪、肩に張りついている。サヤは自分の腕についた雪を見て、笑いながら悲鳴のような声を出した。

「白い。私、白い」

「早く戻って」

ミズホに促され、三人は湯船へ駆け戻った。

湯に入った瞬間、今度は熱が全身へ押し寄せた。

「あっつ……」

サヤが肩まで沈みながら目を閉じた。

「でも、気持ちいい……」

シオナも湯の中で息を吐いた。

「水風呂とは違うけど、これはこれで」

ミズホは湯船の縁に額を預けるようにして、しばらく黙っていた。

「ミズホ?」

サヤが聞くと、ミズホは小さく答えた。

「悔しいけど、ちょっと分かる」

サヤは満面の笑みになった。

「でしょ」

「でも、もうやらない。少なくとも今日は終わり」

「はい」

シオナも素直にうなずいた。

「風邪ひいたら大変だしね」

「そう。ここで風邪をひいたら、私たち何しに来たのって話になる」

ミズホは三人の髪や肩に残った雪を見ながら言った。

「ちゃんと温まって、出たらすぐ拭いて、乾いた服。髪もできるだけ水気を取る」

サヤが笑う。

「ミズホ、完全に温泉保健委員」

「必要なら何にでもなる」

シオナは湯船の中で、外の雪を見た。

空から落ちる雪。

湯から上がる湯気。

白い世界と、熱い湯。

さっきまで90式の除雪をして、全身を雪に叩かれていた。出発することはできなかった。国道7号線は白く閉ざされ、巡回班も道の駅象潟まで様子を見に行っただけだ。

進めない日。

けれど、ただ閉じ込められた日ではなかった。

電気の残し方を教わった。

雪の怖さを知った。

露天風呂で、ばかみたいに冷えて、ばかみたいに温まった。

サヤが湯船の中でぽつりと言った。

「なんか、生きてるって感じするね」

ミズホは少しだけ目を細めた。

「極端すぎるけどね」

「でも、こういうの覚えてる気がする。あとで」

シオナはうなずいた。

「覚えてると思う」

三人はしばらく、湯から出られなかった。

体は芯まで温まり、頭は雪の冷たさで妙に冴えていた。

その不思議な感覚が少し薄れてきた頃、ミズホが静かに言った。

「そろそろ出よう。温まってるうちに部屋へ戻る」

サヤは名残惜しそうに湯面を撫でた。

「出たくない」

「出ないと冷える」

「正論」

シオナは先に立ち上がった。

「今度は雪に行かない」

ミズホが即座に言う。

「絶対行かない」

「行かないって」

サヤが笑いながら続いた。

「私はちょっとだけ未練ある」

「サヤも行かない」

「はい」

三人は湯船を出て、急いで脱衣所へ戻った。

脱衣所の空気は冷えていたが、体はまだぽかぽかしている。タオルで髪をしっかり拭き、肩や背中についた雪の水分も取る。乾いた下着、防寒インナー、厚手の靴下。ワークマンで補充した装備がまた役に立った。

サヤは靴下を履きながら言った。

「温泉、雪、ワークマン。今日の三種の神器」

ミズホが髪を拭きながら答える。

「記録には書かない」

「ええ、書こうよ」

「書くとしても、温冷浴は短時間に限る、って注意つき」

シオナはネックウォーマーを直しながら苦笑した。

「私のせいで記録が変な方向に増える」

「反省してる?」

ミズホが聞く。

「少し」

「少しなんだ」

「気持ちよかったから」

サヤはまた笑った。

三人は廊下を通って和室へ戻った。

部屋の照明はまだ弱くついている。暖房は頼りないが、布団と毛布がある。外では相変わらず雪が窓を叩いていた。

シオナは窓から駐車場を見た。

90式は白く埋もれかけている。

今日、あれで出ることはできない。

けれど、焦りは少し薄れていた。

サヤは布団の上に座り込んだ。

「あったまった。眠くなってきた」

ミズホはノートを開いたが、すぐには書かなかった。

「今日の記録、どう書こうかな」

シオナが少し身構える。

「雪に突っ伏した件は、ほどほどで」

サヤがすぐに口を挟む。

「三人そろって仰向けも追加で」

「それは正式記録じゃない」

ミズホはそう言いながら、結局ペンを動かした。

吹雪のため出発見合わせ。

90式除雪を試みるも、短時間で全身に雪が付着し中止。

露天風呂で体を温める。

温冷浴は短時間に限る。長く続けないこと。

少し間を置いて、最後に小さく書き足した。

ただし、すっきりはした。

サヤがそれを見て満足そうにうなずいた。

「よし」

シオナは布団に足を入れながら、外の吹雪の音を聞いた。

進めない日にも、進んでいるものがある。

それが何なのか、はっきり言葉にはできなかった。

けれど、湯上がりの体の温かさと、雪に冷やされた頭のすっきりした感覚だけは、しばらく残っていた。

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作者について

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人とAIによる共著作品発表のため団体という形のペンネームにしました。複数の世界を、ゆっくり旅する物語を書いていきます。ChatGPTことチャティを相棒としてストーリーの概要や場面についてを対話する形で...

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