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第十章 迫りくる悪意・前編

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/17 📚 シリーズ: 駆け抜けよ スーパーヒーロー 恋の始まりはライダーキック 📝 2,394文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

古書カフェ「マロン」の琥珀色の光の中で、二人は出会った。 特撮オタクの中学三年生・相羽勇介は、正義感が高まるとすべての能力がアップする特技を持つ少年。同じく特撮を愛する江村玲愛との出会いは、彼の日常を静かに、しかし確実に塗り替えていく。 クリスマスの夜、交わした小指の約束。だが新年早々、玲愛は交通事故に遭い、記憶を失って目覚める。彼女が覚えているのは、九歳までの記憶だけだった。 「好きという気持ちに、性別も年季も関係ない」 かつて彼女に伝えたその言葉を胸に、勇介は走る。歴代のスーパーヒーローたちが命を懸けて守り続けた「正義の心」を道しるべに、たった一人の少女の笑顔を取り戻すために。 これは、ヒーローに憧れた少年が、本物のヒーローになるまでの物語。 ※作中において実在の人物名などが出ることもありますが、あくまでもリアリティを出すための演出であります。

本文

その男――梶山は、どこか値踏みするような、粘つく目でレイを見下ろしていた。

「……うん、そうだけど。お兄ちゃんは?」

「俺は梶山。梶山誠。君と同じ、学校の同級生の」

 かじやま。

 その名前が耳に落ちた瞬間、レイの胸の奥で、小さな何かがことりと鳴った。

「梶山……くん?」

 レイは小首を傾げ、目の前の男をじっと見つめる。

 あの日以来、梶山とは一言も口をきいていない。それどころか、目さえ合わせていない。それでも一応顔は覚えている。

 目の前に立つ男は、背が高くて、肩幅も広くて、声が低い。

 でも――どこか、似ている。

 目元とか。口の端の、ちょっと曲がるところとか。

「……梶山くんの、お兄ちゃん?」

「……え?」

 梶山の口元が、ひくりと引きつった。

「兄貴じゃねえよ。俺が本人だっての」

 その瞬間、レイの肩がびくりと跳ねた。

  ――あ、やばい。

 梶山の頭に、その三文字が浮かんだ。

 怖がらせるつもりなんてなかった。ただ、名乗っただけだった。

「……ああ、そうか。まあ、今の君じゃそうだよな」

 取り繕うように吐き出した声は、思ったよりぶっきらぼうだった。

 梶山はポケットに手を突っ込んだまま、ソファのすぐ脇まで歩み寄る。視線をどこに置けばいいのか分からず、レイの顔と、壁の時計とを、何度も行ったり来たりした。

「俺、相羽の友達なんだわ。今日はあいつと会う予定で、ここに来てたんだよ」

「お兄ちゃんの、お友達?」

「そうそう。だからさ、俺のこと怪しい不審者だと思わなくていいから」

距離を詰め、梶山がレイのすぐ隣のスペースに腰を下ろそうとした、その瞬間。

レイは本能的な嫌悪感に突き動かされるように、さっと身体を極端に端へとずらした。

「知らない人だから、隣に座られるのは嫌」

子供特有の、濁りのないきっぱりとした拒絶だった。

 梶山は一瞬、プライドを傷つけられたように不快そうに顔をしかめた。しかしすぐに笑みを張り直すと、一つ席を空けた隣のシングルソファにドサリと腰掛けた。

「……へえ、そっか」

重苦しい、粘つくような沈黙が二人の間に落ちる。レイはただ、勇介が戻ってくるはずの通路をじっと見つめ続けた。

「相羽ってさ」  梶山が、わざとらしく声を落として口を開いた。

「あいつ、普段はあんな優しそうな顔してるけどさ。本当は、裏じゃめちゃくちゃ怖くて陰湿な奴なんだぞ」

レイの視線が、ゆっくりと梶山へと向けられた。

「……怖い?」

「そう。見かけの爽やかさに騙されない方がいい。この前なんかさ、俺に対して、まるで鬼か修羅みたいな顔して怒り狂ってたんだから」

レイは少しの間、その言葉を頭の中で転がしていたが、やがて至極真っ当な疑問を口にした。

「…誰を?」

「えっ?」

 想定外の切り返しに、梶山は一瞬だけ言葉を詰まらせた。

「だから……俺を、だけど」

「それって、お兄ちゃんが怒ったんじゃなくて、あなたが何か悪いことをしたから、お兄ちゃんに怒られたんじゃないの?」

梶山はぐっと言葉を詰まらせ、口を半開きにしたまま完全にフリーズした。

何か言い返そうと唇を戦わせるが、論理的な反論が何一つ浮かんでこない。少年の浅薄な悪意の前に、九歳の無垢な正論が重くのしかかった。

その頃、三階のテラスフロアでは。

 吹き抜けの手すりから何気なく一階を見下ろしていたゆりかが、視界の隅に映った人影に、ふと目を留めた。

​「あれ…? 一階のベンチにいるのって、レイだよね」

​「本当だ、あそこに座ってる」とめぐみが指をさす。

「…隣にいるの、誰だろ。相羽くんじゃないよね? 背が高いし…あ、梶山くんだ」

「本当だ、梶山だ。珍しいな、あいつがこんなところにいるなんて」

 後ろから覗き込んだ中川も、最初は特に緊張感もなく、ただの偶然の居合わせとしてその姿を眺めていた。同じ中学校の生徒なのだから、休日に出先で鉢合わせることくらい、よくある話だ。

​ だが、ゆりかだけは違った。

「…梶山…」

 その名前を口にした瞬間、ゆりかの胸の奥に、ざらりとした感触が走った。

​ そうだ、確か小学校の時、レイが一度だけ、彼のことで酷く落ち込んでいたことがあった。

​ 詳しい事情は聞いていない。ただ、いつも前向きな、あのレイが、珍しく目に涙を溜めて、悔しそうに唇を噛み締めていたのだ。

『ちょっと嫌なことがあってさ』と無理に笑うレイの姿が、当時のゆりかの心に深く焼き付いていた。それ以来、レイが学校で梶山の話題を口にすることは一度もなかったが、二人の間に漂う、冷え切った空気だけは察していた。

​ 内容までは知らなくても、梶山がレイにとって『思い出したくもない不快な記憶の象徴』であることは明白だった。

​「…相羽くんは!? 相羽くんはどこ?」

 ゆりかは急激に顔色を変え、一階のフロアを見回すが、勇介の姿はどこにもない。

「ん? 相羽くんなら…トイレにでも行ったんじゃないのか?」と中川が首を傾げる。

「違う、そうじゃないの! 」

 ゆりかの声が、焦りで微かに震えた。

「レイは梶山に対して、何か嫌な思い出があるらしいの…。なんかいやな予感がする。絶対に引き合わせてはいけない気がするの!」

​ その言葉の重みに、めぐみと中川の表情が弾かれたように強張った。

レイが梶山を覚えているのか、それとも完全に忘れてしまっているのか、今の三人には知る由もない。どちらに転んでも、あの二人が二人きりでいる状況は、今の不安定なレイにとって危険な予感がする。

​「降りよう、すぐ!」

 ゆりかが叫ぶと同時に、中川が鋭い目つきで頷いた。

「ああ。何があったか分からないが、とにかく行ってみよう」

​ 三人は手すりから身を翻すと、一階へと続く下りエスカレーター目がけて走り出した。一秒でも早く、大切な親友の盾になるために、彼らは全力で地を蹴った。

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作者について

キリオン・スレイ

キリオン・スレイ

はじめまして、人間とAIの合作ペンネーム、キリオンです。私たちは、人間の持つ「妄想力・構成力」と、AIの持つ「圧倒的な筆力・アイデアの引き出し」を掛け合わせた、徹底したエンタメ作品を追求しています。 ...

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