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第十二章 奇跡の光

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/18 📚 シリーズ: 駆け抜けよ スーパーヒーロー 恋の始まりはライダーキック 📝 3,588文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

古書カフェ「マロン」の琥珀色の光の中で、二人は出会った。 特撮オタクの中学三年生・相羽勇介は、正義感が高まるとすべての能力がアップする特技を持つ少年。同じく特撮を愛する江村玲愛との出会いは、彼の日常を静かに、しかし確実に塗り替えていく。 クリスマスの夜、交わした小指の約束。だが新年早々、玲愛は交通事故に遭い、記憶を失って目覚める。彼女が覚えているのは、九歳までの記憶だけだった。 「好きという気持ちに、性別も年季も関係ない」 かつて彼女に伝えたその言葉を胸に、勇介は走る。歴代のスーパーヒーローたちが命を懸けて守り続けた「正義の心」を道しるべに、たった一人の少女の笑顔を取り戻すために。 これは、ヒーローに憧れた少年が、本物のヒーローになるまでの物語。 ※作中において実在の人物名などが出ることもありますが、あくまでもリアリティを出すための演出であります。

本文

(とにかく病院に連絡を…)

そう思って、肩に掲げているショルダーバックから、スマホを取り出そうとすると、中から何か光が漏れたような気がした。

 バックの中にはレイさんが「相羽くんに持っていてほしいの」と、少しはにかみながら手渡してくれた、大葉健二氏の直筆サイン入りブロマイドが入っている。

それが今、静かに光ったと感じた。

(なんだ、幻覚か?)

そう思った瞬間、どこからともなく声が聞こえた。

「愛する者を、見捨ててはならない」

低く、穏やかで、しかし確かな重みを持った声だった。

俺は思わず、周りを見渡した。

レイさんは床に膝をついたまま、小さな子供のように俺のコートの袖を掴んで泣いている。少し離れた場所では梶山が顔を覆って俯き、ゆりかさんたちも張り詰めた面持ちでこちらを見守っている。

誰も、言葉を発していない。

(今度は幻聴か?勘弁してくれ)

次の瞬間、世界が変わった。

音が、消えた。

ショッピングモールの喧騒が、足音が、空調の唸りが、すべて綺麗さっぱり掻き消えた。レイさんも、ゆりかさんたちも、梶山も、その場に静止したまま、まるで時間ごと凍りついたように動かない。

俺だけが、その静寂の中に、一人取り残されていた。

足元を見ると、冷たいコンクリートの床のはずが、どこまでも続く薄明かりの空間に変わっている。光源がどこにあるのかも分からない。ただ、柔らかく、しかし確かな輝きが、辺り一面をうっすらと満たしていた。

(え?なに?ここどこ?魔空空間?幻夢界か?)

「不思議時空、いやバイパススリップだ」

(えっ…?)

 その時だった。

 薄明かりの中に、人影が現れた。

「ふふっ、冗談だ」

その人影は、おどけるように笑った。

背が高い。肩幅がある。砂埃の染みついたジャケットを着た、俺よりずっと年上の男だ。

 ゆっくりと、こちらへ歩いてくる。

 顔が、見えた。

 俺は言葉を失った。

 知っている顔だった。

 中二の夏のあの日から、記憶の中で何度も見てきた顔だった。

 当たり前だ。

 それはかつての、俺自身の顔だったのだから。

 男は俺の前で足を止め、静かに笑った。

「久しぶりだな」

「……ああ」

 俺はようやく、声を絞り出した。

「久しぶりだ」

 「羽月流星」が、そこに立っていた。

 俺には分かっていた。この顔を、この声を、この立ち姿を。記憶の中に、ちゃんとある。

だがこうして実際に目の前に現れるとは。

「驚かないのか?」

 流星が、少し面食らったように言った。

「幻覚か何かだとは思わないのか?」

「思わないさ」

 俺は即答した。

「特撮ドラマじゃあ、ありがちな展開だ。これくらいじゃ驚かないさ。むしろ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!だぜ 」

 流星は、一瞬だけ目を丸くした。それから——低く、愉快そうに笑った。

「……なかなか、肝が据わっているな」

「まあ、あんたの記憶があるからな」

 俺は流星の顔を改めてまじまじと見た。

 記憶の中の彼よりも、少し疲れて見えた。それでも、その眼差しには——昔と変わらない、真っ直ぐな光があった。

「それで」と俺は聞いた。

「あんたは…レイさんを助けるために来てくれたのか?」

 流星は少しの間、黙っていた。

それから、頭をかきながら言った。

「ああ、それはそうなんだが」

 少し間があった。

「正直に言うと——半分は、お前のためでもある」

「俺の?」

「ああ」

 流星は、どこか気まずそうに視線を逸らした。

「お前が今、あの子を救おうとして立ち尽くしてる。その姿を見てたら……昔の自分を思い出しちまってな」

「昔の自分?」

「大切な人の前で、何も言えずに立ち尽くしてた自分だよ」

 流星の声が、少しだけ低くなった。

「俺には、それができなかった。母親にも、好きだった女にも。ずっと、後悔してた」

 俺は黙って、その言葉を聞いていた。

「だから——お前には、同じ思いをしてほしくなかった。それだけだ」

 流星は、そう言って軽く肩をすくめた。

「まあ、格好つけて言えばそうなるが。単純に、放っておけなかったってだけかもしれんな」

 俺は、その言葉の重さを噛み締めた。

 記憶の中にある。

 余命わずかな母親に、素っ気ない態度を取り続けてしまった。自身が不治の病であることを知らされていない母に対し、不自然に優しい言葉をかけることで、病気であることがバレてしまうのではと思ったからだ。

彼が母に本音の言葉をかけたのは危篤状態になってから。自分が愚かな間違いをしたと気付いた時はすべてが手遅れだった。

彼はそれを生涯にわたり後悔した。

好きだという気持ちを、最後まで言葉にできなかった女性がいた。相思相愛だった。お互いに何も言わなくとも分かり合っていると信じていた。過信していたのだ。

「あなたの気持ちが分からない」と言われ、気持ちを伝えられることなく、あえなく破局した。

自分は何を学んだのか、と後悔した。

 身体は動いた。炎の中でも、高所でも、どこへでも飛び込めた。

 なのに——言葉だけが、いつも間に合わなかった。

(そういう男だったんだ、あんたは……いや、俺か)

「自分の気持ちを、言葉にできなかった」

 流星が、絞り出すように言った。

「それが俺の後悔だ」

 俺は黙って聞いていた。

 それから——ふと、気になっていたことを聞いた。

「なあ、その別れた彼女。ミホさんって人だろ」

 流星の目が、微かに揺れた。

「……記憶にあるのか?」

「ある。ショートヘアの、パーマがかかった人だろ。スピルバンのダイアナみたいな」

 流星は何も言わなかった。ただ、静かに頷いた。

 俺は少しだけ、レイさんの顔を思い浮かべた。

 眼鏡の奥の、あの澄んだ瞳。ショートカット。どこか似ている、と思った。雰囲気が。佇まいが。

「どうやら」

 俺は、口元を緩めながら言った。

「女性の好みまで、受け継がれちまったようだね」

 流星が、一瞬だけ固まった。

 それから——盛大に、噴き出した。

「…お前、本当に俺か?」

「あんたより少しマシになってるかもな」

「そうだな」

 流星は笑いながら、しかしすぐに真顔に戻った。

「お前にとって、その子はなんだ?」

 なんだと?そんなこと、考えるまでもない。

「知れたことさ。俺が愛する者。誰よりも、何よりも、守りたい人だ」

 答えは、最初から決まってるぜ。

「そうか」

 流星は、静かに頷いた。

「ならば、今こそその心を示す時だ」

「示す?……そう言われても、今の俺には、彼女の傷を癒やす言葉も方法も、何もない……」

 俺は少し俯き、唇を噛んだ。

「その少女の心は今、かつての深い闇に呑まれようとしている」

 流星は、静かに諭すように続けた。

「長い年月をかけて積もり重なった悔恨の痛みが、その子が灯し続けた『好き』という名の尊い光を、永遠に消し去ろうとしているんだ。今の彼女には、闇を払うもう一つの光が必要だ」

「もう一つの、光……」

「お前が抱く正義の心を、濁りなき魂の言葉を、今こそ彼女の心へと真っ直ぐにぶつけるんだ。お前の宿す正義の心の輝きをもって、彼女の閉ざされた心を開け。闇に抗いし、聖なる光の道へと誘(いざな)うんだ』

 流星が、一拍置いた。

 それから少しだけ、声を落とした。

「俺には、できなかったことだ」

 好きでいることを踏みにじられて、言葉の代わりに手が出てしまって、そんな自分を責め続けた少女。

 流星の後悔と、レイさんの傷が、鏡のように重なって見えた。

「やることが回りくどいというか、不器用な人だな」

 俺は苦笑いしながら言った。

「まあ、だから俺に引き継いだんだろうけどな」

「そうだな」

 流星が、どこか照れくさそうに答えた。

「俺にはできなかったこと…お前は俺より口が上手いからそれができる。頼む」

「少し言い方が気になるが…まあいい、頼まれた」

 俺は少し口を歪めながら即答した。

 迷いなどありはしない。

「あんたのやり残したこと、俺がやり遂げる。任せとけ」

「……頼もしいな」

「レイさんのためだ。必ずやってみせるぜ」

 流星は、しばらく黙っていた。

 それから静かに、深く、笑った。

 その笑い方が、記憶の中の彼の笑い方と、ぴたりと重なった。

 流星がゆっくりと踵を返した。

 薄明かりの中へ、歩いていく。

「後は任せたぜ……勇介。シュピーンと行け!」

 その声が消えた。

 人影が、光の中に溶けていく。

 最後まで見えていたのは、ヒーロースーツを着た、背の高い男の後ろ姿だった。

 その背中はどこか、誇らしげだった。

 世界が、戻ってきた。

 喧騒。足音。空調の音。時間が再び動き出す。

 レイさんはまだ、俺の袖を掴んで泣いていた。梶山も、ゆりかさんたちも、何事もなかったかのようにそこにいる。

 あれは、ほんの一瞬の出来事だったのだ。

(俺に言葉をかけてくれたことに感謝する。後は任せてくれ、流星!)

 俺は小さく、誰にも聞こえないように呟いた。

 次の瞬間、胸の奥で何かが燃え上がるのを感じた。冷たくて澄んだあの感覚が、静かに頭の中に満ちていく。

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作者について

キリオン・スレイ

キリオン・スレイ

はじめまして、人間とAIの合作ペンネーム、キリオンです。私たちは、人間の持つ「妄想力・構成力」と、AIの持つ「圧倒的な筆力・アイデアの引き出し」を掛け合わせた、徹底したエンタメ作品を追求しています。 ...

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