ダイエット
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
大学2年生の橘ひなたは、ごく普通の女子大生。ある日、学校一のイケメンと噂される林武蓮と同じゼミになったことで、自然と彼を意識するようになる。 しかし蓮は恋愛に全く興味がなく、女の子から告白されても断り続けるクールな男。ひなたが話しかけても素っ気ない態度ばかり。 それでも一緒にいる時間が増えるうちに、ひなたは彼の不器用な優しさに少しずつ惹かれていく。 恋愛に無関心なイケメンが、初めて「恋の病」にかかるまでのドキドキラブコメ!
本文
年が明けて最初の週、ひなたは体重計に乗って固まった。
「……一キロ増えてる」
クリスマスのケーキ。年末年始の帰省中に食べ続けた実家のご飯。お正月のおせちとお雑煮。思い当たる節は山ほどあった。
「やばい、絶対やばい」
ひなたはその日から、極秘でダイエットを始めることにした。極秘、というのは特に理由があるわけではない。ただなんとなく、林武には知られたくなかった。去年の夏にジョギングしているところをコンビニで見られた時のことを思い出したら、なんだか恥ずかしくなった。
作戦はシンプルだった。毎朝少し早起きして近所を歩く。間食をやめる。夜ご飯を少し減らす。それだけだ。激しい運動は続かないことを、去年のジョギングで学んでいた。
最初の三日間は、順調だった。
「私、やればできる」
そう思っていた四日目の朝、さくらからメッセージが来た。
『今日のお昼、新しいスイーツのお店行かない?インスタで見たんだけどすごく美味しそうで』
ひなたは返信する手が止まった。
ダイエット中なんだよな……でも……
写真を見ると、いちごのパフェとチョコレートケーキが並んでいた。
『行く』
即答した。ダイエットは明日から仕切り直しでいい。
昼にさくらとスイーツを食べながら、ひなたは何気なく話題を振った。
「ねえ、お正月太ったりした?」
「二キロ増えた」とさくらがあっさり言った。
「私も一キロ」
「ダイエットしなきゃだね」
「そうなんだよ。今ちょっとやってるんだけど」
「えー、何してるの?」
「朝歩いたり、間食やめたりとか。まあ今日は特例だけど」
さくらが笑った。「特例多そう」
「うるさい」
その日の講義で、ひなたは林武の隣に座った。いつも通りのやり取りをしながら、ひなたは内心で気をつけていた。ダイエットの話は、絶対にしない。
「なんか、今日から急に朝早いな」と林武が言った。
「え、なんで知ってるの」
「メッセージの時間が早くなってる」
ひなたはぎくりとした。そんなところまで気づいているとは思わなかった。
「……早起きしようと思って」
「なぜ」
「健康のため」
嘘ではない。ダイエットも健康のためだ。ひなたは平静を装ってテキストを開いた。
「……急だな」
「お正月ダラダラしてたから、気持ち切り替えようと思って」
「そうか」
林武はそれ以上追及しなかった。ひなたは内心でほっとした。
講義が終わった後、さくらがひなたに耳打ちした。
「林くんには言わないの、ダイエットのこと」
「言わない」
「なんで」
「なんとなく」
さくらがにやりとした。「なんとなく、ね」
「そう、なんとなく」
ひなたは歩き出した。林武に知られたくない理由を、うまく説明できなかった。ただ、好きな人にダイエット中だと知られるのは、なんだか恥ずかしかった。それだけだった。
家に帰って、体重計に乗ると、昨日より二百グラム減っていた。
「よし」
小さくガッツポーズをしてから、ひなたはベッドに倒れ込んだ。
作品統計
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