その1:2026年7月6日月曜日・G県N市新町交差点「寄合館」③の表紙画像

その1:2026年7月6日月曜日・G県N市新町交差点「寄合館」③

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/20 📚 シリーズ: 1999年からの警告:「謎を解かない系探偵」原アイラは蹴っ飛ばす! 📝 4,837文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

Kindle電子書籍「心(理×)霊カウンセラー」のスピンオフ第2弾 街の何でも屋。自称探偵・原アイラが今度は蹴っ飛ばす!? 「謎を解かない系探偵」が挑む1999年からの警告とは?

本文

=3=

相変わらずカウンターでは、N市駅前商店街のマダムマドモアゼルたちの1999年を懐かしむ会話でにぎわっている。そんな中、話題に変わりはないものの、大きく年代の方向転換が成されたのは、ミドリの短い一言からだった。

「そういえば、去年もあったね。ちょうど今頃じゃなかった?」

去年の今頃。2025年7月上旬――その言葉を聞いたテーブル席の二人が気付かないわけがない。当時を賑わした「大災難」の話に違いない。

「あった、あった。大地震が起きるって話でしょ。地震は来なかったけど、何だかソワソワしちゃったね。都市伝説系YouTube動画がたくさん上がっていて、目にしない時はなかったというかー……」

カウンター席の話題は、1990年代から2020年代へと、月刊ヌー?からYouTubeへと方向転換されるも、話題は変わることなく続く。30年、話題の時代は動いたのだが、その場は1980年代後半の中学生時代へと時間をさかのぼる賑やかさ、学校の休み時間の雑談さながらの様相を【ワッホホーン】と保ったままだった。

「あれからもう1年経っているんだ―、早いねぇ~」

「1年経っているけど、何だか今も結構上がっているよね~。1999年の再来?みたいに。」

「あるねぇ~。何だか昔のテレビを見ているみたい。」

「でも、あの頃は“えー、うそー?ほんとうー?”という感じだったけど、最近は“この話、本当なんです”という感じの……現実に近い、本当にありそうな話っぽくて、見聞きする人によっては本当に信じちゃいそうな話ばっかりだよね。」

「でも、あの頃の“えー、うそー?ほんとうー?”という話、結構信じちゃった人いるじゃないー。」

「いたいた……1999年に死ぬのなら勉強しても意味がないじゃんって言ってたアイツ、今どうしているんだろうね。」

【ドッドドーン】と勢いのある笑い声が、カウンター席から大きく沸き起こる。いままでどこかどんよりとしていたテーブル席の二人も、その様子に顔を見合わせ、「元気だなぁ~」とニッコリ笑みを浮かべる。

「歴史は繰り返すというか、またあの頃みたいに、予言とか都市伝説とか……陰謀? 怖い話って流行っているみたいじゃない。また出てくるのかなぁ、“2026年に死ぬのなら勉強しても意味ないじゃん少年”とか。」

「歴史は繰り返すのなら、あるかもしれないねー。」

カウンター席でのこの話題の終わりは、まだまだ先の様子。そして、テーブル席のアイラとカレンは、元気なマダムたちへの微笑みと、あの頃と今のオカルト談義への苦笑いを、【OH!】と【oh……】を、この後も幾度か繰り返すのだった。

◇◆◇

1980年代のうら若き五人の乙女たちが、2026年の寄合館で交わすあの頃の話。日本が誇る“世界一怪しい雑誌”、月刊ヌー?1999年7月号を倉庫から発見した話を皮切りに始まった、大予言と1980年代から90年代当時の怪奇ブームの話。予言を中心に、こっくりさん、心霊写真、UFOなど様々なオカルト談義。

それを、まるで当時の教室で明るく笑いを交えながら話すかのような様子の1980年代のうら若き五人の乙女たち――2026年現在、喫茶店のカウンター席で貫録の談笑をする51歳のマダムマドモアゼル。

彼女たちが席を立った時、時計は11時30分を示していた。

ランチタイムには少し早い時間。寄合館店内には今、アイラ、カレン、そして店主ミドリの三人。テーブル席からカウンターへと移動した二人は、カウンター越しに向かい合う。元気なマダムたちの後、そこに並んだのは―― 荻原ミドリ51歳(見た目30代半ば)、黄泉野カレン34歳(見た目20代半ば)、原アイラ29歳(見た目20代前半)の、N市在住の年齢詐称を疑われる女性三人。

「ごめんねー、アイラちゃん、カレンちゃん。賑やかにしちゃって。」

「全っ然! 何だか見てて面白かったし、な、カレン。」

「あ、うん。皆さん若いなぁ~元気だなぁって。」

「あははは、元気があれば何でもできるってね!」

カウンター席を囲む三人の笑い声。それは、さっきまでとはまた違う、大人の雑談の中にこぼれた“余白”のようだった。

◇◆◇

11時45分。アイラとカレン、そしてミドリは、少し早めのランチを取っていた。寄合館のランチメニューにはない、いわゆる裏メニュー「ミドリの気まぐれサンド」。具材は日替わりで、その中身は店主ミドリの気分次第。卵の日もあれば、ハムチーズの日もある。

そして今日の気まぐれサンドは、たまごサンド。粗めに潰したゆで卵とマヨネーズ、黒胡椒が強めのサンドイッチ。それが「個性的な柄の紙ナプキン」に包まれているのが、ここの名物となっている。そして今日の紙ナプキンは……唐草模様だった。

「こんな模様の、よくあったなぁ。」

「あったのよねぇ、こんなのが。」

カウンターを挟んで向き合い、サンドイッチを頬張る三人。この「気まぐれサンド」を食べられるのは、気まぐれサンドという裏メニューの存在を知っている常連だけで、注文も「今日は気まぐれある?」という一声が必要なため、常連の中でも意外なほど知られていない。

元々は、忙しい時に簡単に食べられるミドリ自身の昼食だったが、その様子を見た常連客が「それ、いいね」と声をかけたことで、裏メニューにしようというアイデアが【ドゥッツ】とミドリの中で浮かんだらしい。

以降、これを知る常連の中では人気メニューになっている。その人気の秘密は、「今日は何が出てくるかな?」と同時に、「今日はどんな柄のナプキンに包まれて出てくるかな」というワクワク感にあるのだとか。

◇◆◇

「ミドリさん、さっき話していた雑誌、ヌー?だっけ? ちょっと見せてよー」

サッと昼食を終え、ゆっくりとしたコーヒータイムに移った三人。そこで最初に会話の扉を開けたのはアイラだった。年齢的に1999年に発売されたその雑誌に興味津々という素振りなのだが、その真意は、30年近く前の雑誌にどんなことが書かれていたかを思い出すため――である。

その言葉を受け、ミドリは【ニコーッツ】と、どこか得意げに笑みを浮かべ、カウンター内にポンと置いていたそれをアイラに手渡した。それを手に取った彼女は、そのインパクトの強い表紙に【シュォン】と目を向ける。

雑誌の大きさは概ねA4サイズ。上部中央には、それを知るも知らぬも関係なく目を引きそうな、平成角ゴシック体の赤文字で大きく書かれた「ヌー?」のタイトル文字。内容を想像させる様々なタイトルの中、「ついに来る1999年7の月」というひときわ目を引くキャッチ。古い雑誌なだけあって相応のくたびれ感はあるものの、それにしてもきれいな保存状態。ミドリはこれが倉庫から出てきたと話していたが、その中でこれだけ保存状態が良いのは、ある意味奇跡のようにも見て取れた。

(こういうところも、まさに……ヌー?なのかも)

奇跡の保存状態? をアイラはそんなふうに内心で呟き、思わずニコリとしてしまう。そんな様子の彼女の横から、手に持たれたそれを覗き込むように寄ってくるカレン。彼女もアイラと同じように、その保存状態の良さに目を丸くしていた。

「きれいに保存されていますね、ミドリさん。」

「んー、たまたまだけどねー。倉庫で見つけた時は、本当にびっくりしたのと懐かしいので、何だか笑いが止まらなかったな。」

ミドリの話に、アイラとカレンはその様子を【ポンワリ】と思い浮かべ、ウンウンと頷く。二人とも、思いがけないなつかしい品を見つけたときは、自分たちもそんなふうに思わず笑ってしまうだろうと、妙に納得していた。

「若い二人には信じられないと思うけど、1980年代から2000年にかけて、本っ当に流行ったのよ。こっくりさんとか、心霊写真とか、予言とかね。ゴールデンタイムに心霊番組やUFOを見た!みたいな番組が普通に放送されていたし。ただ、あの頃のブームはちょっと飛躍しているというか……どこかクスっと笑っちゃうようなところがある感じで、大半はそれを真剣に信じるというより、そういう話を楽しんでいる、という感じだったかなぁ。私はそんなふうに思っているのだけどね。」

見た目は30代半ばでも、実年齢は51歳。当時のオカルトブーム真っただ中という時代に思春期を過ごしたミドリは、今カウンターを囲む三人の中で、最も強く当時のオカルト熱を感じていたといえるだろう。

それは、当時すでに「30代」「20代」として社会に溶け込んでいたカレンとアイラの二人には分かり得ないものなのだが……ミドリはそれを「まだ二人が物心つかないか、生まれていない時代の出来事」と捉えている様子なのは、当然だろう。

「ミドリさんもさ、当時はこっくりさんとかしてた?」

「したなぁ~、学校の昼休みに、さっきの子たちと。ちゃんとできていたかはわからないけどね。でも、三人で指を乗せた10円玉が、ススス、スススと動いたときは、なんというか……感動したなぁ。」

アイラの質問に、昔を思い出すようにして楽しそうに微笑むミドリ。その様子を、子どもを見るような優しい目で見つめるカレンなのだが、どこかそれは遠い自身の記憶を見ているかのようにも見える。

(この話、あまり続けない方がいいかもしれないな……)

カレンの様子に気付いたアイラは、話を別の方向へ移そうと口を開きかけたのだが――

「でも、遊び半分でやっちゃだめだって、その一回きりだったなぁ。それに、今振り返ると、オカルトが流行したことでおかしなこともいろいろ起きちゃった時代でもあるしね。終末論を鵜呑みにして人生狂っちゃったとか、変な新興宗教が流行ったりとか。」

さっきまでとは違う言葉の勢いの後、ホッと息を吐いたミドリは、対面に座るカレンと同じように、遠い自身の記憶を見ているように頬杖をついた。

「まあ、こんな雑誌が倉庫から出てくるくらいだから、私こういう怖い話とかUFOの話って好きなのよね。でも、のめり込みすぎるとちょっと良くない面も出てきちゃうのが、こういう話の世界だとも思ってる。一歩引いて楽しむのが一番健全で楽しいものなのじゃないかなってね。でも――」

そう話すミドリの、ホッと一息の“間”が話の妙を押さえ、次の言葉がなだらかにつながっていった。

「最近は何だか、こういう怖い話や都市伝説が妙に現実寄りになり過ぎというか……都市伝説の陰謀論化っていうのかな? そんな感じがして、昔みたいな娯楽としての楽しみとはちょっと違って来ちゃっている気がしてね。何だかオカルトが宗教染みている気がして、ちょっと距離を置きたくなっちゃった。昔、私の若い頃のテレビや雑誌で目にしていた現実離れしたオカルトブームの時ですら現実と混同する人がいたくらいだから、今のYouTube動画やSNSで流れている陰謀論化された都市伝説を本気で受け取る人がいてもおかしくない気がしちゃうのよね。」

そう続けたミドリの長い言葉を、フウと一息の“間”がさらに妙を押さえた。

「まるで、1990年代のオカルトの盛り上がりを、ちがうメディア媒体で別の角度から再現したみたい。」

静かにミドリの話を聞いていたアイラとカレンの耳に、なぜかその言葉は【パァーン】と勢いよく突き抜けていった。そして妙に納得し、示し合わせたかのように大きくコクコクと頷く二人。それは、前のオカルトブームについてもその時代を生き、その空気を感じてきたかのような所作にも見え、そんな二人の【ゴッモートゥモーゥ】と大きく頷く様子に、ミドリの方が目を丸くしていた。

「ま、まぁ何にしてもね、前みたいにオカルトがカルト化しなきゃいいのにって、ファンとして本当にそう思うなぁ~」

ミドリのオカルト思い出話と、今のオカルト界隈への思い語りはその言葉で締めくくられ、それを聞いていたアイラとカレンの二人は、ミドリの話への納得感に苦笑い混じりの笑顔を浮かべ、休日のゆっくりとした午前に幕を引いた。

時間は12時35分――。

ジャンル・タグ

, ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 1 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

2024年よりkindle電子書籍の個人出版業、Web小説家、AIコラボレーター活動を開始。 kindle無料ランキング2ジャンルで1位獲得経験あり。 小説家になろう・カクヨム・あいぺん・アメブロ...

👥 フォロワー: 2人

作者ページを見る