41話:決闘③ 決着
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p><span style="color: rgb(31, 31, 31); background-color: rgba(0, 0, 0, 0);">「100発撃ち込めと言ったな……だったら望み通りにしてやる!!」</span></p><p><span style="color: rgb(31, 31, 31); background-color: rgba(0, 0, 0, 0);">怒り狂ったサイファーの咆哮とともに、演習場の空気が爆ぜた。</span></p><p><span style="color: rgb(31, 31, 31); background-color: rgba(
本文
「100発撃ち込めと言ったな……だったら望み通りにしてやる!!」
怒り狂ったサイファーの咆哮とともに、演習場の空気が爆ぜた。
一回生の基礎魔法とは比較にならない密度の術式が、豪雨のようにシュドーを襲う。
「っ!」
シュドーは地を這うような低姿勢で床を蹴り、反射的に最小限の『盾(シールド)』を展開するが、防ぎきれない衝撃がその身体を打ち据える。
回避の隙間を縫って放たれた風の刃がシュドーの肩を深く裂き、鮮血が火花のように舞った。
「がっ……!!」
「シュドー!!」
たまらずメルティが駆け寄ろうとした瞬間、裂帛の気合が場を制した。
「来るんじゃねぇ!!!!」
演習場の壁に反響せんばかりの大声。
メルティはその迫力に、雷に打たれたように足を止めた。
「はぁ……はぁ……ふん! 意地を張らずに、素直にその羊に助けでも求めたらどうだ、小判鮫! 無様な姿を晒しやがって、もうお前の相手は飽きたんだよ!!」
サイファーが肩で息をしながら、苛立ちを隠さずに声を荒らげる。
すでに数十発の属性魔法を乱射し、彼自身の魔力消費も無視できない域に達していた。
「はん……その小判鮫を、いつまでも仕留めきれねえテメーが悪いんだろうが!!
雑魚一人倒せねえ奴が三級魔導士とか、資格の名が泣くぜ! それとも何か?
単にお前が二回生の中で一番の『出がらし』なんじゃねーのかよ!」
「貴様ぁぁぁ!!!」
サイファーが逆上し、更なる追撃を放つ。
重力魔法を伴った土弾がシュドーの脇腹を抉り、吐血とともに鮮血が石畳を赤黒く染めていく。ズタボロになり、立っているのが不思議なほどの惨状。
それでもシュドーは膝を折らず、折れそうな腕で杖を握り締め、その双眸だけは一度としてサイファーから逸らされることはなかった。
「ちょ、ちょっと……やり過ぎじゃないの?」
「い、いや、あの平民もそろそろ降参するだろ。
これ以上は洒落にならないぞ……」
娯楽感覚で見物していた学生たちの間にも、引き攣ったような動揺が広がり始める。
「やべぇぞシュドーの奴! もう勝ち目がどうこうとか言ってる場合じゃねえ!」
ジョシュアが顔を青くして杖を抜こうとするのを、アルが強引に腕を掴んで制した。
「待て。……あいつ多分、何か狙ってやがる。アイツの目…
登校初日、コリンたちがアイツを囲んで返り討ちにされた時と同じだ……!」
その視線の先で、サイファーは激しく肩を上下させ、額には滝のような脂汗が浮いていた。
「こっの……クソ雑魚がぁ!! しつこいんだよ!! いい加減にくたばりやがれ!!」
いつまでも、何度打ち据えても立ち上がってくるシュドーに、サイファーの心には「焦燥」という名の毒が回り始めていた。最初にあったはずの貴族としての余裕は、跡形もなく消え失せている。
「くっ……くっくっ……」
血の混じった笑みを浮かべるシュドー。
その人外染みた不気味さに、後ろに控えていたコリンは本能的な恐怖を感じ、思わず一歩後退りした。
「倒れたくても倒れられねぇんだよ……。
てめぇの魔法が、あまりにも『しょっぱ過ぎる』からな。
少しは上級生らしい、とっておきの一撃でも使ってみせろよ。
あぁ、それとも……やっぱり無理か?
お前……資格持ちの貴族様なのに平民の『雑魚』一人殺せないレベルだもんなぁ」
シュドーの言葉に、サイファーの理性が最後の一線を超えて弾け飛んだ。
「こっ、の……肥溜め塗れの腐れカスがぁぁ!!
だったら望み通りに殺してやる!!!」
彼は杖を天高く掲げ、全身の魔力を一点に絞り出す。
杖の先に、シュドーの全身を焼き尽くさんばかりの、巨大で禍々しい炎の塊が凝縮されていく。演習場全体が熱気に包まれた。
「お、おい! あれは演習以外での使用が禁じられている広域破壊魔法だぞ!?」
「ちょっと! 死んじゃうわよあの平民!!」
観客席がパニックに近い騒音に包まれる。
「シュドー!!」
メルティの絶叫が木霊する。
しかし、シュドーの口角は、その死の光を前にして吊り上がった。
(……それを待ってたんだよ!!)
これこそが、圧倒的な格上を仕留めるためにシュドーが仕掛けた唯一の罠。
「疾走(アクセル)!!」
シュドーは残り少ない魔力を全神経に注ぎ込み、爆発的な加速でサイファーの間近へと肉薄した。
加速の瞬間、視界が引き伸ばされるように歪んだ。肺が焼けるような息苦しさの中、シュドーはサイファーの驚愕に見開かれた瞳だけを見つめていた。
巨大な魔法を構築中、魔導士は無防備になる。
「なっ……!?」
サイファーは予想外の急接近に絶句した。
慌てて構築中の炎を霧散させ、防護の盾(シールド)を作り出そうとするサイファー。
しかし、作られた盾は形が歪で、薄っぺらい物だった。
「デボラ先生から習わなかったのかよ?
『自分の魔力量はキッチリ把握しとけ』ってな。
後先考えずにバカスカ撃ちまくったから、魔力ももう空っぽなんだろ!!」
シュドーは自分の中に残った最後の一滴までを絞り出し、杖の先に凝縮した。
杖を握る手に、痺れるような反動が走った。
だが、シュドーはそれすら構わず、最後まで狙いを外さなかった。
「魔弾(バレット)!!」
至近距離から放たれた青白い光の弾丸は、サイファーが焦って作った歪で薄い盾を紙細工のように突き破った。
そして、その衝撃は真っ直ぐにサイファーの杖を持つ右手を捉える。
「ぎゃあああああ!!?」
鈍い音とともに指の骨が砕ける衝撃が走り、サイファーは悲鳴とともに反射的に手を離した。
――カンッ、カランッ。
先ほどまでの怒号と魔力の奔流が嘘のように消え、サイファーの豪奢な杖が床を転がる乾いた音だけが演習場に響き渡った。
杖の破壊、あるいは杖の手放し。
それは魔導士の決闘における、「決着」の合図であった。
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