第2話 侍女、友達候補を見つける

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📅 公開日: 2026/7/20 📚 シリーズ: 高飛車お嬢様に見えますが、本当は友達がほしいだけですわ! 〜有能侍女に背中を押されて、初めての友達作り〜 📝 1,869文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

高飛車お嬢様に見えますが、本当は友達がほしいだけですわ! 〜有能侍女に背中を押されて、初めての友達作り〜 - 第2話 侍女、友達候補を見つける

本文

翌日の放課後。

 ヴィオレッタの部屋では、第一回友達作り作戦会議が開かれていた。

「友達とは、作戦を立てて作るものなのかしら」

「少なくとも、お嬢様には必要かと」

「否定できないのが悔しいですわ」

 卓上には、三枚の紙が並んでいる。それぞれに令嬢の名前と、普段よくいる場所が簡潔に記されていた。

 リゼットはそのうち二枚を端へよける。

「こちらのお二人には、すでに親しいご友人がいらっしゃいます。お声がけになること自体は構いませんが、最初のお相手としては輪へ入る難しさがございます」

「では、残るお一人が本命ですのね」

 ヴィオレッタは最後の紙を手に取った。

「エミリア・クラウゼン」

 名前には覚えがある。同じ学年の伯爵令嬢だ。

 亜麻色の髪を肩の辺りで揃え、若草色の瞳をした少女。礼法の授業ではいつも穏やかに微笑んでいる。

「どなたとでもお話しになりますが、いつも同じ方とご一緒しているわけではございません。昼休みは図書室か、中庭の東屋にお一人でいらっしゃることが多いようです」

「あら……お一人で寂しくありませんの?」

「それは、私には分かりかねます」

「調べていませんの?」

「心の中まで調べましたら、情報収集ではなく読心術でございます」

「それもそうですわね」

 紙に書かれた名を見つめていると、一つの場面を思い出した。

 刺繍の授業で、近くの生徒が何色もの糸を床へ落とした時のことだ。皆が次の課題へ移るなか、エミリアは黙って腰を屈め、最後の一本まで拾っていた。

 その後、自分の作業が遅れても何も言わなかった。

「優しい方ですわ」

「ご存じでしたか」

「見ていただけですけれど」

 ヴィオレッタは紙を丁寧に卓へ戻した。

「決めましたわ。わたくし、エミリアとお友達になります!」

「まだ先方のお気持ちを伺っておりません」

「では、伺えばよろしいのね!」

「その勢いを、まず半分ほどにいたしましょう」

 リゼットが空いた椅子へ腰を下ろした。

「私をエミリア様と思って、お声がけくださいませ」

「分かりましたわ」

 ヴィオレッタは一度咳払いをし、優雅に微笑んだ。

「ごきげんよう、エミリア。あなた、いつも暇そうですわね!」

「やり直しでございます」

「まだ最後まで言っていませんわ!」

「最後まで伺う必要を感じませんでした」

 ヴィオレッタは唇を尖らせ、もう一度姿勢を正す。

「ごきげんよう、エミリア。わたくしとお話しできる機会を差し上げますわ!」

「お休みなさいませ、ローゼンベルク様」

「帰らないでくださいまし!」

「私がエミリア様でしたら、今ので帰っております」

 厳しい。

 昨日の惨敗を思えば、リゼットの判断はおそらく正しい。

「もっと自然になさってくださいませ。お嬢様が、私へ話しかける時のように」

「リゼット。お茶のお代わりをいただける?」

「はい。その調子です」

「ですが、これは友達を作る会話ではありませんわ」

「お茶を口実になさってもよろしいかと」

「エミリア。お茶のお代わりをいただける?」

「給仕を頼んでおります」

「難しすぎませんこと!?」

 リゼットは涼しい顔で、ヴィオレッタのカップを満たした。

「まずは、ご挨拶を。それから、相手の方が答えやすいお話をなさってください」

「たとえば?」

「お持ちの本や、授業のことなど」

「なるほど。最後に、わたくしと友達になる意思を確認しますのね」

「最初の日に契約を結ぼうとなさらないでくださいませ」

 友達とは、ずいぶん曖昧な手続きを要するらしい。

 それでもヴィオレッタは、リゼットを相手に何度も練習した。

 翌日の昼休み。

 エミリアは図書室の窓辺にいた。

 膝の上には、青い装丁の本が一冊。頁はしばらくめくられていない。

 開け放たれた窓から、中庭の笑い声が届いている。エミリアは一度だけそちらを見て、また本へ目を落とした。

 少し離れた書架の陰で、ヴィオレッタは息を整える。

「ごきげんよう。それから、本のお話。華麗さは半分」

「最後のものは口になさらなくて結構です」

 背後から聞こえたリゼットの声に、ヴィオレッタは振り向いた。

「分かっていますわ。では、行ってまいります」

「はい」

 リゼットが一礼する。

 次に瞬きをした時には、もういなかった。

「相変わらず、いなくなるのが早すぎませんこと?」

 小声で抗議しても返事はない。

 頼れる軍師は、戦場までついてくる気はないらしい。

 ヴィオレッタは青い本を見つめた。表紙から題名が見えない。

 足が止まりそうになる。

 それでも、窓辺へ向かった。

 エミリアが顔を上げる。

 若草色の瞳と目が合った。

「ローゼンベルク様……?」

 さあ、ごきげんようですわ。

 昨夜、十七回も練習したでしょう。

 ヴィオレッタは笑みを浮かべ、口を開いた。

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