第16話「初めての敗北」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
あらすじ 中学二年生・神崎恭也は、いつかカプセルウォーズを遊ぶことを夢見ていた。 しかし、一回一万円もするロボットガチャなど、学生の小遣いでは到底回せない。 ある日、商店街の片隅で「ハズレ品・在庫処分」と書かれた100円のクジガチャを見つける。 暇つぶしのつもりで回したそのカプセルには、本来なら一万円でしか手に入らない超高級ロボット―― 《クイーン》 が入っていた。 しかもクイーンは、普通のプレイヤーが知らない謎の機能を秘めた特別な機体だった。 偶然から始まった出会いは、やがて恭也をカプセルウォーズ界の頂点を巡る戦いへと導いていく。
本文
放課後。
恭也とクイーンは、いつものカプセルウォーズセンターを訪れていた。
「今日はポイントを貯めるぞ!」
『はい、マスター。』
『目標へ向けて、一歩ずつ参りましょう。』
受付で公式戦にエントリーする。
現在の成績は三連勝。
まだビギナーランクだが、少しずつ順位も上がり始めていた。
「次の相手はこちらです。」
モニターに表示された対戦相手を見て、周囲が少しざわつく。
「えっ、あの人?」
「ビギナー卒業目前じゃないか。」
「あと一勝でランクアップする人だ。」
恭也は思わず息をのむ。
「そんな人と当たるの?」
『公式戦では、このような組み合わせもあるようですね。』
対戦台へ向かうと、相手の青年が軽く頭を下げた。
「よろしく。」
「ランクアップ戦だけど、手は抜かないよ。」
「はい!」
恭也も礼を返す。
「よろしくお願いします!」
START!!
相手の機体は──ビショップ。
銀と青を基調とした機体には、今まで見たこともない装備が取り付けられていた。
右手には細身の長剣。
左腕には大型シールド。
さらに肩部と腕部、脚部には複数の装甲。
恭也は思わず呟く。
「装備が全然違う……。」
『ですが、臆する必要はありません。』
クイーンは静かに剣を構えた。
試合開始。
クイーンが先に距離を詰める。
しかし──
カン!
「えっ!?」
一太刀目が、ほとんど力を使わず受け流された。
相手は無駄な動きを一切しない。
最小限の動きで攻撃をさばいていく。
『……巧みです。』
クイーンもすぐに理解した。
盾で押し込み、体勢を崩そうとする。
だが。
ガッ。
逆に盾を利用され、クイーンの重心がわずかに崩れる。
「しまっ!」
その隙を見逃さない。
ビショップの剣が一直線に伸びる。
ガキン!
クイーンは辛うじて防ぐ。
しかし、その一撃だけで腕が大きく弾かれた。
「重い!」
恭也の額に汗が浮かぶ。
『剣の性能も上です。』
『そして……操縦技術も。』
それでもクイーンは諦めない。
盾で防ぎながら反撃の機会を探す。
脚甲のおかげで踏ん張りは利いていた。
だが相手は、その踏ん張りさえ計算しているかのようだった。
「そこだ。」
ビショップが半歩踏み込む。
フェイント。
クイーンが反応した瞬間。
本命の一撃が逆方向から飛んできた。
ガキィン!!
ガードソードが宙を舞う。
「武器を弾かれた!」
『まだです!』
クイーンは盾だけで応戦する。
しかし装備差は残酷だった。
大型シールドで押し込まれ、
最後には剣先が胸部コアへ突きつけられる。
『……チェックメイト。』
電子音が響く。
WINNER 対戦相手
フィールドが静かに消えていった。
「負けた……。」
恭也は画面を見つめたまま立ち尽くす。
初めて味わう敗北だった。
相手は対戦台を降りると、穏やかに笑った。
「いい戦いだったよ。」
「クイーンの動きはすごく丁寧だった。」
「でも、経験と装備は一朝一夕では埋まらない。」
恭也は悔しそうに唇を噛む。
「はい……。」
「ありがとうございました。」
青年は頷き、そのまま受付へ向かった。
まもなく場内アナウンスが流れる。
「おめでとうございます! ビギナーランクからノービスランクへ昇格です!」
周囲から拍手が起こる。
恭也も静かに拍手を送った。
「……ランクアップ、おめでとうございます。」
クイーンが隣で優しく言う。
『マスター。』
「ごめん、負けちゃったな。」
『いいえ。』
クイーンはゆっくり首を横に振る。
『今日の敗北は、私たちに足りないものを教えてくれました。』
『経験。』
『装備。』
『そして、それらを積み重ねる時間です。』
恭也は大きく息を吸った。
そして、笑顔を取り戻す。
「そうだよな。」
「勝ちっぱなしじゃ成長できない。」
「今日負けた分、もっと強くなろう。」
クイーンも穏やかに微笑んだ。
『はい、マスター。』
『次にあの方と戦う時は、胸を張って挑めるよう努力いたしましょう。』
初めての敗北は悔しかった。
だがそれは、二人がさらに高みへ進むための大切な一歩でもあった。