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天津風9

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/31 📚 シリーズ: 天津風 📝 5,870文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

歳を取らない少女はいくつもの出会いと別れを経験してきた。 大切な人達との別れを経て変わっていった少女は、それでも大切な人達との約束を守り続ける。 これは百年以上を生きた少女、アマツの出会いと別れの物語。

本文

夏空の下で

七月。

朝から強い日差しが降り注いでいた。

外縁独立機動部隊記念資料館。

開館前。

館長室。

「暑い……」

珍しく。

本当に珍しく。

アマツが小さく呟いた。

「先生。」

「暑いんですか?」

「暑いです。」

「へぇ。」

宮城琴音は少し驚く。

「先生って暑いとかあるんだ。」

「あります。」

「寒いもあります。」

「眠いもあります。」

「お腹空くもあります。」

琴音は思わず笑ってしまう。

「なんか安心した。」

「安心ですか?」

「うん。」

「先生も人間なんだなって。」

アマツは少しだけ困ったように微笑んだ。

「人間ですよ。」

「知ってます。」

「でも。」

「何百年も生きてると。」

「ちょっと忘れそうになる。」

蝉の声。

窓の外。

青い空。

入道雲。

「そうですね。」

「私も。」

「忘れそうになることがあります。」

「自分を?」

「はい。」

琴音は黙る。

「そんな時。」

「どうするんです?」

「珈琲を飲みます。」

「それだけ?」

「本を読みます。」

「それだけ?」

「花を見ます。」

「それだけ?」

「手紙を読み返します。」

琴音は少し微笑んだ。

「大切な人達?」

「はい。」

「皆さん。」

「色々なものを残してくれました。」

「趣味も。」

「言葉も。」

「思い出も。」

風鈴が鳴る。

チリン。

夏の音。

「先生。」

「はい。」

「夏の思い出ってあります?」

「沢山。」

「一番は?」

アマツは少し考える。

そして。

窓の外の青空を見上げた。

「海です。」

「海?」

「はい。」

「ムスビさんと。」

「鈴華と。」

「ヤマトと。」

「四人で。」

「休日に。」

「泳ぎに行きました。」

「へぇ。」

「楽しそう。」

「楽しかったですよ。」

「誰が一番はしゃいでた?」

「鈴華です。」

「意外!」

「ムスビさんも楽しそうでした。」

「ヤマトは?」

アマツは少し笑った。

「呆れていました。」

「でも。」

「一番長く海に入っていました。」

「ふふ。」

琴音も笑う。

「先生は?」

「砂浜で。」

「皆さんを見ていました。」

「何それ。」

「先生らしい。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

「昔から先生だったんだ。」

その言葉に。

アマツは少し目を細める。

遠い昔。

波の音。

青空。

白い雲。

『アマツ!』

『こっちこっち!』

ムスビの笑顔。

『ほら、アマツ!』

『泳げるようになったんだから来なさい!』

楽しそうな鈴華。

『全く……』

『騒がしい奴らだ。』

そう言いながら。

誰より穏やかに笑っていたヤマト。

あの日。

四人で見た夏空。

「……綺麗でした。」

「先生?」

「いえ。」

「昔の空を思い出していました。」

琴音は窓の外を見る。

「今の空も綺麗ですよ。」

「ええ。」

「そうですね。」

青空。

入道雲。

蝉の声。

風鈴。

そして。

館長室に漂う珈琲の香り。

「先生。」

「今年の夏も。」

「楽しくしましょう。」

アマツは少し驚く。

そして。

優しく微笑んだ。

「はい。」

「そうしましょう。」

「また始めましょう。」

「愛おしくなることを。」

琴音は首を傾げた。

「それ。」

「先生の好きな言葉?」

「ええ。」

「とても。」

風が吹く。

夏の風。

天津風。

遠い昔。

沢山笑った人達の声が。

どこかで聞こえたような気がした。

「ムスビさん。」

「ヤマト。」

「鈴華。」

「今年の夏も。」

「良い夏になりそうですよ。」

返事はない。

それでも。

空は変わらず青かった。

そして。

百年以上を生きた少女は。

少しだけ目を細めて。

いつものように。

静かに微笑む。

「会いたいですね。」

「とても。」

「でも。」

「幸せでした。」

夏は。

まだ始まったばかりだった。

ーーー

夏祭り

八月。

夕暮れ。

街には祭囃子が流れていた。

外縁独立機動部隊記念資料館でも、毎年恒例の夏祭りが開かれている。

子供達。

教え子達。

退役軍人。

地域の人々。

館内は珍しく賑やかだった。

「先生!」

「こっちです!」

宮城琴音が手を振る。

「浴衣ですか。」

「どうです?」

「似合います。」

「やった。」

嬉しそうに笑う琴音。

「先生も着ればいいのに。」

「持っていません。」

「嘘。」

「本当です。」

「絶対似合うのに。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

蝉の声。

屋台。

提灯。

笑い声。

平和な夏の夜。

「先生!」

「輪投げしましょう!」

「射的も!」

「綿菓子!」

「金魚すくい!」

「忙しいですね。」

「夏祭りですから!」

琴音に引っ張られるまま。

アマツは珍しく人混みの中を歩く。

すると。

射的の景品の中に。

古い珈琲カップがあった。

白い陶器。

小さな花柄。

「……。」

「先生?」

「いえ。」

「少し。」

「懐かしくて。」

遠い昔。

『見て見て!』

『これ可愛くない?』

ムスビが笑う。

『また食器ですか。』

『いいじゃん。』

『こういうの好きなんだよ。』

『アマツの分も買う!』

そんな声。

そんな笑顔。

「先生?」

「大丈夫ですか?」

「ええ。」

「少し。」

「思い出していました。」

「恋人さん?」

「はい。」

琴音は優しく笑う。

「素敵な人だったんですね。」

「ええ。」

「とても。」

「会いたい?」

「会いたいですね。」

「寂しい?」

「寂しいです。」

「……。」

「でも。」

「幸せでした。」

琴音は静かに微笑む。

もう。

その言葉の意味を理解していた。

失ったから不幸なのではない。

出会えたから幸せだった。

先生は。

何百年かけてそう思えるようになったのだ。

「先生。」

「はい。」

「綿菓子買ってきます。」

「はい。」

「待っててください。」

「逃げませんよ。」

「ふふ。」

走っていく琴音。

その背中。

夕焼け。

夏の匂い。

「似ていますね。」

小さく呟く。

誰に。

というわけではない。

ただ。

優しい人達の面影。

人を喜ばせようとするところ。

笑顔。

そういうものが。

少しずつ。

重なって見える。

やがて。

「先生!」

琴音が戻ってくる。

「買ってきました!」

「大きいですね。」

「半分こです。」

「半分こ。」

「はい。」

「夏祭りの醍醐味。」

「そういうものですか。」

「そういうものです。」

アマツは少し笑った。

「知っています。」

「え?」

「昔。」

「教えてもらいました。」

「誰に?」

「秘密です。」

「またそれ!」

笑い声。

提灯。

夏の夜風。

そして。

夜空に花火が上がる。

ドン。

大きな音。

歓声。

色とりどりの光。

「綺麗。」

琴音が呟く。

「ええ。」

「綺麗ですね。」

その光の中。

一瞬だけ。

本当に一瞬だけ。

アマツは見た気がした。

笑うムスビ。

楽しそうな鈴華。

腕を組んで呆れた顔をするヤマト。

『アマツ!』

『見て見て!』

『綺麗!』

そんな声。

「……。」

幻。

ただの思い出。

それでも。

それでいい。

それがいい。

「先生?」

「泣いてます?」

「……。」

アマツは少し驚く。

頬に。

一筋の涙。

「珍しい。」

「花火で泣く人初めて見た。」

「そうですね。」

「私も初めてです。」

「悲しい?」

「いいえ。」

アマツは夜空を見上げた。

咲いて。

散っていく花火。

終わるからこそ。

美しい。

「愛おしいのです。」

「……。」

「そういうものなんですね。」

琴音は小さく笑う。

「先生。」

「はい。」

「来年も来ましょう。」

「ええ。」

「再来年も。」

「はい。」

「その次も。」

「はい。」

夏の夜。

百年以上を生きた少女は。

優しく微笑む。

「会いたいですね。」

「とても。」

「でも。」

「幸せでした。」

花火の光が。

その涙を優しく照らしていた。

そして。

夏はまだ終わらない。

今年もまた。

天津風は。

穏やかに吹いていた。

ーーー

栞の挟まれた頁

九月。

まだ夏の名残はある。

それでも。

風は少しだけ柔らかくなっていた。

外縁独立機動部隊記念資料館。

閉館後。

館長室。

「先生。」

「はい。」

「今日。」

「暇ですね。」

宮城琴音は椅子の上で小さく伸びをした。

「平和です。」

「良いことです。」

「それもそうか。」

机の上。

珈琲。

紅茶。

そして。

数冊の本。

「先生。」

「はい。」

「いつも思うんですけど。」

「本好きですよね。」

「好きですよ。」

「誰の影響?」

アマツは迷うことなく答える。

「ヤマトです。」

「司令官さん?」

「はい。」

「意外。」

「不愛想でしたが。」

「優しい人でした。」

「本が好きだったんですか?」

「はい。」

「休日はよく。」

「一緒に読んでいました。」

「二人で?」

「ええ。」

「静かだった?」

「とても。」

「会話もなし?」

「時々。」

「感想を言うくらいです。」

琴音は笑う。

「大人。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

「私だったら喋っちゃう。」

「ムスビさんもそうでした。」

「恋人さん?」

「はい。」

「鈴華も。」

「賑やかでした。」

「じゃあヤマトさん大変。」

「慣れていました。」

「ふふ。」

風が吹く。

窓の外。

まだ青い空。

少し高くなった雲。

秋の気配。

「先生。」

「はい。」

「その本。」

琴音が一冊を指差した。

古びた装丁。

何度も読まれた跡。

「読んでいいですか?」

「構いません。」

本を開く。

すると。

一枚の栞が落ちた。

「ん?」

小さな押し花。

そして。

綺麗な字。

『読書のお供は紅茶です。』

『珈琲ばっかり飲まないこと。』

琴音は思わず笑った。

「鈴華さん?」

「はい。」

「すぐ分かった。」

「そうでしょう。」

「怒ってる。」

「優しい人でした。」

アマツは少し微笑む。

「昔。」

「紅茶を教えてもらいました。」

「今も好き?」

「ええ。」

「大好きです。」

「珈琲は?」

「ムスビさん。」

「花は?」

「鈴華。」

「本は?」

「ヤマト。」

「手紙は?」

「ムスビさん。」

「音楽は?」

「ヤマト。」

「……。」

琴音は少しだけ目を細めた。

「先生。」

「はい。」

「皆から。」

「いっぱい貰ったんですね。」

「……。」

静かな沈黙。

窓から吹き込む秋風。

「はい。」

アマツは穏やかに頷いた。

「沢山。」

「貰いました。」

「だから。」

「今の私があります。」

琴音は本を閉じる。

「いいな。」

「何がです?」

「先生。」

「愛されてたんですね。」

その言葉に。

アマツは少し驚く。

そして。

困ったように笑った。

「そうですね。」

「沢山。」

「愛してもらいました。」

「羨ましい?」

「はい。」

「凄く。」

「ふふ。」

琴音は笑う。

「じゃあ。」

「私もいっぱい愛されます。」

「そうしてください。」

「そして。」

「誰かを愛してください。」

「先生みたいに?」

「私より。」

「もっと上手に。」

「難しそう。」

「簡単ですよ。」

「そう?」

「ええ。」

「好きな人と。」

「美味しいものを食べて。」

「本を読んで。」

「花を見て。」

「笑うだけです。」

「それだけ?」

「それだけです。」

夕陽が赤くなる。

窓辺。

珈琲。

紅茶。

本。

そして。

古い栞。

『珈琲ばっかり飲まないこと。』

「鈴華。」

アマツは小さく呟く。

「最近は。」

「紅茶も飲んでいますよ。」

返事はない。

けれど。

秋風が頁をめくる。

パラリ。

そこには。

また別の押し花。

そして。

懐かしい文字。

『アマツ。』

『今度、新しいカフェ行こう!』

「……。」

ムスビ。

「賑やかですね。」

小さく笑う。

そして。

本棚の上。

ヤマトが勧めてくれた本達。

「ヤマト。」

「まだ読んでいます。」

誰もいない。

それでも。

皆がいる。

百年以上を生きた少女は。

優しく目を細めた。

「会いたいですね。」

「とても。」

「でも。」

「幸せでした。」

窓の外。

空は高く。

風は優しく。

秋は。

まだ始まったばかりだった。

ーーー

銀杏並木

十月。

風は少し冷たくなり。

空は高く。

銀杏の葉が色付き始めていた。

休日。

外縁独立機動部隊記念資料館は休館日。

「先生。」

「今日は休みなんだから。」

「仕事禁止。」

「仕事はしていません。」

「本読んでる。」

「趣味です。」

「駄目です。」

「何故ですか。」

「今日は散歩。」

宮城琴音は笑った。

「付き合ってください。」

「はい。」

銀杏並木。

秋風。

落ち葉。

柔らかな日差し。

二人はゆっくり歩く。

「綺麗。」

「ええ。」

「綺麗ですね。」

黄色く染まる並木道。

「先生。」

「はい。」

「秋って好き?」

「好きですよ。」

「私も。」

「似ていますね。」

「誰に?」

「秘密です。」

「またそれ!」

笑い声。

落ち葉が舞う。

「先生。」

「はい。」

「昔もこういう所歩いた?」

「ええ。」

「誰と?」

「皆さんと。」

「四人で?」

「はい。」

「ムスビさん。」

「鈴華。」

「ヤマト。」

「楽しそう。」

「楽しかったですよ。」

「誰が一番はしゃいでた?」

「鈴華です。」

「やっぱり。」

「ムスビさんも。」

「落ち葉を投げて遊んでいました。」

「ヤマトさんは?」

「呆れていました。」

「でも。」

「写真を撮っていました。」

「優しい。」

「ええ。」

「とても。」

風が吹く。

銀杏の葉が舞う。

遠い昔。

『見て!』

『綺麗!』

笑うムスビ。

『ヤマト!』

『写真!』

楽しそうな鈴華。

『まったく。』

『忙しい奴らだ。』

そう言いながら。

誰より優しい目をしていたヤマト。

そんな光景。

「……。」

「先生?」

「いえ。」

「少し。」

「会いたくなりました。」

琴音は黙る。

もう。

知っている。

先生は。

ずっと会いたいのだ。

百年以上経っても。

今でも。

「先生。」

「はい。」

「泣いていいんですよ。」

「……。」

「我慢しなくていい。」

アマツは少し驚く。

「泣いていますよ。」

「え?」

「昔ほど。」

「沢山。」

「泣けるようになりました。」

少し笑う。

「成長しました。」

琴音も笑った。

「何百年かかってるんですか。」

「長かったですね。」

「不器用。」

「ええ。」

「知っています。」

二人はベンチに座る。

風が吹く。

葉が落ちる。

「先生。」

「はい。」

「忘れたくない?」

「忘れたくありません。」

「辛くても?」

「はい。」

「悲しくても?」

「はい。」

「どうして?」

長い沈黙。

そして。

アマツは。

静かに答えた。

「愛おしいからです。」

「……。」

「辛かったことも。」

「喧嘩したことも。」

「泣いたことも。」

「全部。」

「愛おしいのです。」

「終わってしまったから?」

「はい。」

「そして。」

「存在してくれたから。」

琴音は目を細める。

「先生。」

「凄いね。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

「私。」

「そんな風になりたい。」

アマツは少し困ったように微笑んだ。

「なれますよ。」

「本当に?」

「ええ。」

「人は。」

「変わっていけますから。」

その言葉。

遠い昔。

鈴華が遺した言葉。

貴方なら出来るでしょう?

その声が。

秋風と共に聞こえた気がした。

夕暮れ。

銀杏の葉が舞う。

「先生。」

「はい。」

「私。」

「おばあちゃんになっても。」

「先生と散歩したい。」

「ええ。」

「喜んで。」

「約束。」

「約束です。」

小指を差し出す琴音。

「子供みたいですね。」

「いいんです。」

アマツも。

少し笑いながら。

その指に触れた。

「はい。」

「約束です。」

夕陽。

長い影。

遠い昔。

同じような夕暮れ。

同じような約束。

守れたもの。

守れなかったもの。

失ったもの。

愛おしかったもの。

全部。

全部。

今の自分を作っている。

「ムスビさん。」

「ヤマト。」

「鈴華。」

「今年の秋も。」

「綺麗ですよ。」

返事はない。

それでも。

風が吹く。

優しく。

どこまでも優しく。

天津風のように。

百年以上を生きた少女は。

舞い落ちる銀杏を見上げる。

「会いたいですね。」

「とても。」

小さく微笑む。

「でも。」

瞳に。

ほんの少し涙を浮かべながら。

「幸せでした。」

秋の空は。

どこまでも高く。

どこまでも優しかった。

ーーー

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作者について

紫陽花工房

紫陽花工房

家事や仕事の間にAIに物語を書いてもらってます。 好きな花は紫陽花。 座右の銘、チャンスをもたらしてくれるものは冒険である 夢うつつな時に閃くものがネタだったりします(笑)

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