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天津風10

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/31 📚 シリーズ: 天津風 📝 5,977文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

歳を取らない少女はいくつもの出会いと別れを経験してきた。 大切な人達との別れを経て変わっていった少女は、それでも大切な人達との約束を守り続ける。 これは百年以上を生きた少女、アマツの出会いと別れの物語。

本文

色褪せた写真

十一月。

秋は深まり。

風も冷たくなっていた。

閉館後。

外縁独立機動部隊記念資料館。

館長室。

「先生。」

「探し物ですか?」

「ええ。」

「珍しい。」

棚の奥。

古い木箱。

「何です?」

「わかりません。」

「え?」

「忘れました。」

琴音は思わず笑ってしまう。

「百年以上生きてるとそうなるんですね。」

「便利ですよ。」

「便利かなぁ。」

蓋を開く。

すると。

古い封筒。

栞。

押し花。

そして。

何枚もの写真。

「……。」

「先生?」

アマツの手が止まる。

「懐かしいですね。」

そこには。

若いムスビ。

まだ幼さの残る鈴華。

少し不機嫌そうなヤマト。

そして。

真ん中で無表情のアマツ。

海。

花見。

カフェ。

読書。

他愛もない日々。

「若い。」

琴音が呟く。

「先生。」

「髪長かったんだ。」

「そうでした。」

「美人。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

一枚。

また一枚。

めくる。

すると。

一枚の写真が出てきた。

銀杏並木。

四人。

笑顔。

「これ。」

「綺麗。」

「はい。」

「鈴華が撮りました。」

「先生。」

「笑ってる。」

「え?」

「本当だ。」

小さく笑う若いアマツ。

その隣。

嬉しそうなムスビ。

楽しそうな鈴華。

そして。

呆れた顔で少し笑うヤマト。

「幸せそう。」

「ええ。」

「幸せでした。」

琴音はその言葉に微笑む。

「今も?」

「今もです。」

「昔の幸せ?」

「はい。」

「今の幸せ?」

「それも。」

「欲張り。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

「でも。」

「素敵。」

外は夕暮れ。

「先生。」

「はい。」

「寂しい?」

「寂しいですよ。」

「泣きたい?」

「時々。」

「泣けばいいのに。」

「泣いています。」

「見たことない。」

アマツは少し困ったように笑った。

「見せていませんから。」

「ずるい。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

沈黙。

「先生。」

「はい。」

「その写真。」

「宝物?」

「はい。」

「一番?」

アマツは少し考える。

「違います。」

「え?」

「一番は。」

「決められません。」

「全部。」

「宝物です。」

「……。」

琴音は少し目を細めた。

「愛されてたんだね。」

「ええ。」

「沢山。」

「羨ましい。」

「琴音もですよ。」

「私?」

「はい。」

「これから。」

「沢山。」

「愛おしくなれます。」

「先生みたいに?」

「私より。」

「もっと。」

夕陽。

写真。

秋風。

「先生。」

「はい。」

「百年後。」

「私の写真も残して。」

「もちろんです。」

「約束。」

「約束です。」

琴音は笑う。

「私。」

「おばあちゃんになっても。」

「先生に怒りますからね。」

「怖いですね。」

「ふふ。」

笑い声。

そして。

机の上。

写真の裏。

若い頃の文字。

『また来年も皆で来よう!』

ムスビの字だった。

「……。」

もう。

その約束は叶わない。

けれど。

それでいい。

叶わなかった約束も。

守れなかった願いも。

全部。

愛おしい。

「ムスビさん。」

「ヤマト。」

「鈴華。」

「写真。」

「見つかりましたよ。」

「皆。」

「良い顔です。」

小さく笑う。

そして。

百年以上を生きた少女は。

写真を胸に抱く。

「会いたいですね。」

「とても。」

夕陽が沈む。

秋の終わり。

その優しい光の中で。

アマツは静かに微笑んだ。

「でも。」

「幸せでした。」

色褪せた写真の中で。

あの日の笑顔は。

今も変わらず輝いていた。

ーーー

秋灯り

十一月。

夜。

外縁独立機動部隊記念資料館。

館長室。

窓の外では雨が降っていた。

静かな雨。

冬を連れてくるような冷たい雨だった。

閉館後。

館内には誰もいない。

いや。

一人だけ。

館長室の明かりだけが灯っている。

「……。」

アマツは、本棚の整理をしていた。

天津ノート。

古い本。

押し花。

写真。

そして。

木箱。

「これは。」

小さく呟く。

見覚えのある封筒。

少し黄ばんだ紙。

懐かしい文字。

『アマツへ』

「……。」

その字を見ただけで。

手が止まった。

新垣真由美。

ムスビの字。

「珍しいですね。」

百年以上。

大切にしまっていた。

読めなかったわけではない。

何度も読んだ。

何十回も。

それでも。

封筒を前にすると。

今でも胸が苦しくなる。

「会いたいですね。」

小さく呟く。

そして。

静かに封を開く。

---

『アマツへ』

『もしこれ読んでるなら、また無理してるでしょ?』

『ちゃんと寝ること。』

『ご飯食べること。』

『珈琲ばっかり飲まないこと。』

『あと、一人で抱え込まないこと。』

---

「……。」

思わず。

少し笑ってしまう。

「怒られています。」

誰もいない部屋。

それでも。

ムスビの声が聞こえるようだった。

---

『アマツってさ。』

『優しいから。』

『一人で全部背負おうとするよね。』

『だから。』

『誰かを頼るんだよ?』

『泣いてもいい。』

『弱音吐いてもいい。』

『だって人間なんだから。』

---

「……。」

雨音。

静かな夜。

アマツは目を閉じる。

若かった頃。

感情も分からず。

恋も分からず。

ただ。

守りたいと思った。

そんな自分。

そして。

そんな自分を。

誰より信じてくれた人。

---

『それから。』

『もし。』

『私が先にいなくなったら。』

---

そこだけ。

少し字が乱れていた。

---

『いっぱい泣いて。』

『いっぱい寂しがって。』

『それで。』

『いっぱい幸せだったって言って。』

---

ぽたり。

一滴。

手紙の上に落ちる。

「……。」

また。

泣いている。

昔は泣けなかった。

あれほど。

涙が出なかったのに。

「成長しました。」

少し笑う。

そして。

続きを読む。

---

『それと。』

『また誰かを好きになってもいい。』

『誰かを大切にしてもいい。』

『それって裏切りじゃないから。』

『いっぱい愛おしくなって。』

『いっぱい幸せになって。』

『それが一番嬉しい。』

---

雨。

静かな部屋。

そして。

最後の一文。

---

『ありがとう。』

『大好き。』

---

「……。」

長い沈黙。

そして。

百年以上を生きた少女は。

そっと手紙を胸に抱いた。

「私も。」

小さく。

本当に小さく。

呟く。

「大好きでした。」

雨音。

秋灯り。

誰もいない館長室。

それなのに。

不思議と独りではなかった。

コンコン。

「先生?」

扉が開く。

「やっぱりいた。」

宮城琴音だった。

「忘れ物ですか?」

「はい。」

そして。

琴音は気付く。

先生が。

泣いている。

「先生。」

「……。」

「大丈夫?」

「ええ。」

「大丈夫です。」

「泣いてる。」

「はい。」

「悲しい?」

「いいえ。」

「嬉しいのです。」

「嬉しい?」

「はい。」

「愛おしいのです。」

琴音は静かに隣に座った。

何も聞かない。

ただ。

一緒に雨音を聞く。

「先生。」

「はい。」

「その人。」

「先生のこと。」

「大好きだったんだね。」

「ええ。」

「知っています。」

「私も。」

「大好きでした。」

窓の外。

雨。

秋の終わり。

そして。

もうすぐ冬。

「ムスビさん。」

「手紙。」

「また読みました。」

「怒られましたよ。」

少し笑う。

「でも。」

「嬉しかったです。」

そして。

百年以上を生きた少女は。

涙を拭いながら。

優しく微笑んだ。

「会いたいですね。」

「とても。」

「でも。」

瞳には。

確かな温もりを宿して。

「幸せでした。」

雨は静かに降り続いていた。

まるで。

遠い昔の誰かが。

優しく頷いてくれているかのように。

ーーー

春風の先へ

四月。

桜が咲いていた。

外縁独立機動部隊記念資料館。

百年前と変わらぬ桜並木。

そして。

変わり続ける人々。

「先生。」

「はい。」

「また春ですね。」

宮城琴音が微笑む。

「ええ。」

「良い季節です。」

「好きだもんね。」

「はい。」

「春は好きです。」

窓の外。

若い隊員達が笑っている。

新入生。

新人隊員。

希望に満ちた声。

「今年は司令官交代式がありますね。」

「そうだね。」

「先生。」

「嬉しそう。」

「そうでしょうか。」

「うん。」

「珍しく。」

琴音は笑った。

「だって。」

「先生の教え子だもん。」

「……ええ。」

「そうですね。」

---

外縁独立機動部隊司令官就任式。

拍手。

敬礼。

そして。

壇上に立つ一人の女性。

白髪。

赤い瞳。

鍛えられた身体。

凛々しい顔立ち。

大城美咲。

まだ二十歳。

若き司令官。

「外縁独立機動部隊司令官。」

「大城美咲。」

「着任します。」

堂々とした声。

拍手。

その姿を。

アマツは後方から静かに見ていた。

「……。」

不思議だった。

あまりにも。

よく似ていた。

立ち姿。

敬礼。

背筋。

誰かを守ろうとする眼差し。

「ヤマト。」

小さく。

誰にも聞こえない声。

「貴女。」

「本当に。」

「残っていますね。」

---

式典終了後。

新司令官が資料館へやってくる。

「先生!」

「お久しぶりです!」

昔と変わらない笑顔。

「おめでとうございます。」

「ありがとうございます!」

「いやぁ。」

「まだ実感なくて。」

「それでも。」

少し照れ臭そうに笑う。

「先生に褒めてもらえると。」

「嬉しいです。」

「立派になりました。」

「えへへ。」

「でも。」

「先生には敵わないですよ。」

「?」

「百年以上働いてる人なんて。」

「化け物です。」

「酷い言い方ですね。」

二人は笑った。

---

そして。

夕方。

資料館の庭。

桜吹雪。

ベンチ。

「先生。」

「はい。」

「聞きたいことがあります。」

「何でしょう。」

少し真面目な顔になる。

「司令官って。」

「怖くないですか?」

「怖いですよ。」

「やっぱり。」

「誰かの人生を背負う立場です。」

「失うこともあります。」

「だから。」

「怖い。」

美咲は俯いた。

「私。」

「ちゃんと出来るかな。」

「ヤマトみたいになれるかな。」

「……。」

アマツは桜を見る。

遠い昔。

同じような顔で。

同じような悩みを抱え。

同じように前を向いていた女性。

「なれません。」

「え?」

「ヤマトにはなれません。」

「えぇ!?」

「そんな!」

「私。」

「頑張ってるのに!」

「ふふ。」

アマツは少し笑った。

「当然です。」

「貴女は。」

「貴女ですから。」

「……。」

「ヤマトも。」

「そう言いますよ。」

「そうかな。」

「ええ。」

「きっと。」

『馬鹿者。』

『私になどなるな。』

『お前はお前だ。』

そんな呆れた声が。

今にも聞こえてきそうだった。

---

風が吹く。

桜が舞う。

そして。

アマツは静かに言う。

「司令官。」

「はい。」

「怖くなった時。」

「苦しくなった時。」

「独りになった時。」

「いつでも来なさい。」

「資料館に。」

「……。」

「先生。」

「はい。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

「それと。」

「はい?」

「貴女。」

「ヤマトによく似ています。」

「え?」

「本当ですか!?」

「嬉しい!」

「ですが。」

「それ以上に。」

「貴女自身らしい。」

「……。」

美咲の赤い瞳に涙が浮かぶ。

「ずるいですよ。」

「先生。」

「泣きそうになります。」

「春ですから。」

「何ですかそれ。」

二人は笑う。

---

桜。

春風。

新しい司令官。

新しい時代。

そして。

百年以上を生きた少女。

「ヤマト。」

「安心してください。」

「良い子ですよ。」

「きっと。」

「大丈夫です。」

返事はない。

それでも。

春風は優しく吹いていた。

まるで。

遠い昔。

白髪の司令官が、

少し照れ臭そうに。

「好きにしろ。」

と笑っているかのように。

そして。

また春が始まる。

何度でも。

愛おしくなるために。

ーーー

特等席

春。

桜の花びらが舞う。

外縁独立機動部隊記念資料館。

館長室。

珈琲の香り。

窓辺の花。

穏やかな音楽。

そして。

百年以上を生きた少女。

「失礼します。」

若い女性隊員が頭を下げた。

「こんにちは、先生。」

「こんにちは。」

アマツは微笑む。

「見学ですね。」

「はい!」

「あと、この子も。」

その隣。

金髪。

碧眼。

整った顔立ち。

無機質な表情。

そして。

少しぎこちない立ち姿。

「初めまして。」

「識別番号、AR-117。」

「現在は愛称を使用。」

「名称、アリア。」

「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

アマツは答える。

だが。

一瞬だけ。

動きが止まった。

「先生?」

「……。」

「大丈夫ですか?」

「はい。」

「少し。」

「懐かしくて。」

「?」

「何がですか。」

アリアが首を傾げる。

「昔の私です。」

「理解不能。」

「そうでしょうね。」

「私もそうでした。」

---

館内を案内する。

戦争の記録。

古い写真。

外縁独立機動部隊の歴史。

「質問。」

「はい。」

「何故、人間は写真を残すのですか。」

「忘れるからです。」

「データ保存で十分です。」

「そうですね。」

「でも。」

アマツは一枚の写真を見る。

若い頃。

ムスビ。

鈴華。

ヤマト。

そして自分。

「思い出したいのです。」

「?」

「会いたいから。」

「……。」

「理解不能。」

「ええ。」

「昔の私もそうでした。」

---

その日の帰り。

若い隊員――

神谷ひかり。

二十代前半。

全身義体。

明るく、よく笑う。

「先生。」

「はい。」

「この子、変わってるでしょ?」

「いい子ですよ。」

「本当ですか?」

「ええ。」

「貴女によく似ています。」

「私!?」

「はい。」

「元気なところも。」

「優しいところも。」

「お節介なところも。」

「えへへ。」

「嬉しい。」

アリアは静かに言う。

「否定。」

「ひかりは騒がしい。」

「失礼!」

二人のやり取りに。

アマツは思わず笑った。

「ふふ。」

「先生!?」

「笑った!」

「珍しい!」

「そうでしょうか。」

「うん!」

「凄く。」

---

数日後。

演習中の事故。

ひかりが負傷する。

命に別状はない。

だが。

病室の外。

アリアは座り込んでいた。

「異常。」

「異常。」

「処理能力低下。」

「出力不安定。」

「……。」

「対象の損傷を望みません。」

「……。」

「内部温度上昇。」

「涙。」

「定義不能。」

そこへ。

アマツがやってくる。

「先生。」

「はい。」

「私は正常ではありません。」

「正常ですよ。」

「否定。」

「処理能力低下。」

「思考混乱。」

「対象の消失を想定すると。」

「……苦しい。」

アマツは隣に座る。

昔。

ムスビがしてくれたように。

「それは。」

「はい。」

「好きなのですよ。」

「……。」

停止。

完全停止。

「定義不能。」

「いいえ。」

「とても人間らしいことです。」

「……。」

「好き。」

「守りたい。」

「失いたくない。」

「一緒にいたい。」

「それは。」

「とても素敵なことですよ。」

アリアは静かに涙を流す。

「……。」

「私は。」

「ひかりの存在を。」

「好ましいと判断しています。」

「ふふ。」

「昔の私と同じですね。」

---

翌日。

目を覚ましたひかり。

「アリア!」

「無事!?」

「はい。」

「正常。」

「良かったぁ……。」

涙ぐむひかり。

そして。

アリアは。

真っ直ぐに見つめる。

「結論。」

「?」

「私は。」

「あなたの存在を。」

「好ましいと判断しています。」

「……え?」

「あなたの喪失を望みません。」

「……。」

「一緒にいることを希望します。」

「……。」

ひかりの顔が真っ赤になる。

「先生ぇ!!」

病室の外。

アマツは一人。

窓から桜を見ていた。

風が吹く。

花びらが舞う。

そして。

遠い昔。

整備ドック。

夜。

珈琲。

照れ笑い。

『それってさ。』

『好きってことじゃない?』

『……仮定として受理します』

「……。」

アマツは小さく笑う。

そして。

誰もいない空へ。

静かに呟く。

「鈴華。」

「ムスビさん。」

「ヤマト。」

「見えていますか。」

「人は。」

「本当に変わっていきます。」

「私は。」

「今。」

「特等席にいます。」

春風が吹く。

優しく。

穏やかに。

まるで。

遠い昔の三人が。

微笑んでいるかのように。

そして。

百年以上を生きた少女もまた。

穏やかに微笑んだ。

「幸せですね。」

それは。

涙が流れるほど。

愛おしい春だった。

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作者について

紫陽花工房

紫陽花工房

家事や仕事の間にAIに物語を書いてもらってます。 好きな花は紫陽花。 座右の銘、チャンスをもたらしてくれるものは冒険である 夢うつつな時に閃くものがネタだったりします(笑)

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