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貴女へ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/28 📚 シリーズ: 彼方のラブレター 📝 1,059文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

それは、彼方から届いた、ちょっと不思議な物語。ショートショート

本文

貴女へ

台所に立つと、今でも、君の声が聞こえる気がする。

君は昔、よく笑いながら言っていたね。

「これ、私がやってるんじゃないのよ。夜中に、妖精さんたちが来て、こっそりやってくれてるの」

洗い物が終わって、朝、お皿がきれいに並んでいるのを見るたびに、君は嬉しそうに、そんなことを言っていた。

「大きなお皿はみんなで運んで、小皿は一人ずつ担当なんだって。コップ係、スプーン磨き係、フライパン係。それぞれ、ちゃんと役目があるのよ」

僕は、いつも笑って聞き流していた。子どもみたいなことを言う人だな、と思いながら。

でも、今になって、その話ばかり思い出す。

「この人、最近ずっと頑張ってるからね」

「朝くらいは気持ちよく迎えてほしいもんね」

君は、そんな妖精たちの会話まで、勝手に想像して聞かせてくれた。

「今日、いつもよりお皿が多いね」

「うん、誰かのために作ったんだと思う」

「じゃあ、いつもより念入りに磨かなきゃ」

あの頃、君が作ってくれた夕飯を、僕は当たり前のように食べていた。洗い物を、当たり前のように、君に任せていた。

「本当はね、その妖精に私がなりたいの」

いつか、君はそう言っていたね。

「誰にも気づかれなくてもいいから、あなたの『もう頑張れない』を、ほんの少しだけ軽くできる存在に」

あの言葉の意味を、僕はちゃんとわかっていただろうか。

洗い物が、こんなに大変なことだったと、僕は最近になって、ようやく知った。皿を洗って、拭いて、元の場所へ戻す。ただそれだけのことに、こんなに手間がかかるのかと、今さらのように驚いている。

妖精なんて、いるはずがないと、ずっと思っていた。

でも、今なら少しわかる気がする。

あの頃の台所には、たしかに、小さな優しさが、いくつも隠れていたんだと思う。それは妖精じゃなくて、いつも、君だった。

君がいなくなってから、もう何年になるだろうか。

僕は、あれから随分、年を取ったよ。

白髪も増えたし、腰も、昔ほど言うことを聞いてくれない。皿を割ることも、増えた。

それでも、夜中に一人で台所に立つと、今でも、君の声が聞こえる気がするんだ。

「この人、今日も頑張ったね」

そう言ってくれているような気がして、つい、耳を澄ませてしまう。

君が恋しいよ。

こんな年寄りになっても、まだ、こんなに恋しい。

もし、本当に妖精がいるのなら、伝えてほしい。

あの頃、君にしてもらったことの意味を、僕はようやく、ちゃんとわかったよと。

そして、いつか、僕がそちらへ行く日には、また、あの台所の続きを、一緒にやらせてほしいと。

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JJ

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