【21番外】 夏宵ハネマツリ
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
第9区の夏祭りは、朝から街全体が浮き足立っていた。
普段は整然とした街並みも、この日ばかりは色とりどりの飾りで彩られ、大通りには屋台が並んでいる。光る帯を巻いた浴衣姿の人々が行き交い、子どもの手を引く親もいれば、友人同士で歩く若者もいる。その中には甚平を着たロボットや、祭りのために用意されたらしい法被をまとったアンドロイドの姿もあった。
夕暮れが近づくと、街の上空にホログラムの花火が開き始めた。
大輪の光が夜空いっぱいに広がり、消えたかと思うと、その残光の中を色とりどりの金魚が泳いでいく。
赤、白、金、青。
透き通った身体を光らせながら、何全匹もの金魚がビルとビルの間をゆっくりと泳いでいた。
その向こうで、ひときわ大きな光が弾けた。花火の中から、巨大なクジラが現れる。
建物よりも大きな身体をゆったりと揺らし、尾びれをひと振りしながら、夜空を悠々と泳いでいく。
「クジラ!」
子どもの声が響いた。
クジラはその声が聞こえたかのように、夜空で大きく身を翻す。歓声が上がる。
その周囲を、今度は無数の小さな金魚が泳いでいった。大通りの向こうからは、祭囃子が近づいてくる。人の波が少し割れ、その間から巨大な神輿が姿を現した。
ただし、人が担いでいるわけではない。
何十機もの大型ドローンが上空を編隊飛行し、ワイヤーで神輿を吊り下げている。
提灯を模した発光装置が揺れるたび、神輿の影が道路を流れていく。
「わあ!」
子どもたちが駆け寄った。
神輿の周囲では、法被姿の人々やロボットたちが声を上げている。
空を泳ぐクジラ。その周りを泳ぐ金魚。夜空に咲く花火。
そして、ドローンに吊られて進む神輿。
未来の都市でありながら、そこにはどこか昔ながらの祭りの熱気があった。
屋台にも、この街ならではのものが並んでいる。
透明なケースの中では、りんご飴が淡く光っていた。
「グローアップルキャンディ、いかがですかー!」
子どもが立ち止まり、光るりんご飴を覗き込む。
少し先には、雲のようなキャンディを売る屋台がある。
「エレクトリッククラウドキャンディ!」
ふわふわとしたキャンディの内部を、稲妻のような光が走った。一瞬、青白く明滅する。まるで雷雲そのものだった。
「五十種類の味が、一度に楽しめます!」
「五十種類?」
「はい!」
屋台の店員が胸を張る。
その隣では、焼きそばの屋台から湯気が立っていた。
「飲める焼きそば、どうぞー!」
透明なパックを手にした客が、ストローから焼きそばを飲んでいる。
「……焼きそばを飲んでる」
「焼きそばですよ」
「いや、そうなんだけど……」
そんなやり取りに、近くにいた人たちが笑った。
祭りは、街中を笑い声で満たしていた。
その賑わいの一角に、見慣れた看板が立っている。
時環遊技場。
普段は古いパチンコ台が並ぶ店だが、今日はその一部が外へ出ていた。
店主が祭りの催し物として用意したのは、羽根モノだった。並んでいるのは、初心者でも遊びやすい台ばかり。玉を手に取った子どもが、不思議そうに盤面を覗き込んでいる。
「これ、どうするの?」
「ハンドルをゆっくり回してみてください」
店主が横から教える。
玉が盤面を走り出した。釘の間を抜け、風車を回り、ゆっくりと下へ落ちていく。パカッと羽根が開き、玉が吸い込まれた。
「入った!」
子どもの声に、隣で見ていた家族も身を乗り出した。役モノの中で玉が転がり、思わぬ方向へ弾かれる。
「あっ!」
「おおっ!」
ほんの一個の玉を追いかけるように、みんなの視線が動いた。
その横では、従業員アンドロイドが忙しそうにしている。たこ焼きの屋台だった。
店主は祭りのため、業者に特注のたこ焼き用焼成機を発注していた。機械が動き出すと、小さな丸いものが次々と転がり出てくる。
それは、普通のたこ焼きではなく、一個の大きさはパチンコ玉とまったく同じ。たこやネギ、紅しょうがなどの具材はすべて細かく刻まれ、極小の生地の中に収まっている。
焼き上がったたこ焼きが、コロコロと転がっていく。アンドロイドはそれを手際よく拾い、特注のドル箱型たこ焼き舟へ盛っていった。
舟もまた、普通の大きさではない。手のひらに乗るほどのミニチュアサイズで、パチンコ店のドル箱をそのまま小さくしたような形をしている。
そこへパチンコ玉と同じ大きさのたこ焼きが、次々と詰め込まれていく。
遠目には、小さなドル箱に玉が入っているようにしか見えない。
「たこ焼き、お待たせしました」
アンドロイドが小さなドル箱を差し出した。
「わあ……」
受け取った子どもが、両手で大事そうに持ち上げる。
その横には、店主特製の三種類のソースが並んでいた。
ひとつはドレッシングのような、さっぱりしたソース。ひとつはパンチの効いた醤油ベース。そしてもうひとつは、口当たりのまろやかなソース。
「どれにしますか?」
「……三つ!」
子どもが即答した。
「承知しました」
アンドロイドが三種類のソースを小さなたこ焼きにかけていく。
たこ焼きを買った客には、もう一つ遊びがあった。
店主が用意した、謎の玉ゲームだ。小さな玉を転がし、決められた場所へ入れる。それだけのゲームなのだが、店主はなぜか真剣な顔でその前に立っている。
「ここへ入れば勝ちです」
「勝ったら?」
「たこ焼きを増量します。」
子どもが目を輝かせた。
玉をつまみ、そっと転がす。玉は斜面を下り、釘のような障害物に弾かれた。右へ、左へ、もう一度跳ねる。
「そこ!」
周囲から声が飛ぶ。最後に玉が小さな受け皿へ落ちた。
「やった!」
「おめでとうございます」
アンドロイドがドル箱型の舟を受け取る。そして、小さなたこ焼きを舟の中へさらに追加した。「勝利報酬です」
「もう一回!」
子どもは笑いながら、また玉を手に取った。
その間にも、羽根モノの台にはいつもの常連客達や、新しい客が座っていく。人間の家族、ロボットの家族、アンドロイド、そして子どもたち。「羽根が開いた!」「もう少し右!」「入った!」と歓声が次々に上がる。たこ焼きの屋台からは香ばしい匂いが漂い、小さなドル箱を手に、祭りの人混みへ戻っていく客もいる。
空では、ホログラムの花火がまた大きく開いた。その中を巨大なクジラが泳ぎ、金魚の群れが後を追う。地上ではドローン神輿がゆっくりと進み、屋台の明かりが通りを照らしている。
その片隅で、羽根モノの玉が盤面を走る。たこ焼きが焼ける。そして、小さなドル箱に、また一つたこ焼きが増える。普段は店の中で静かに時を刻んでいる時環遊技場が、この夜だけは祭りの喧騒の中にあった。
店主は次の客へ、手招きをする。
「どうぞ。遊んでいってください!」
夜空で、また花火が咲いた。
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