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第十二話 忠義

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 1,850文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

酒呑童子討伐から数日。

大江山には静けさが戻っていた。

囚われていた娘たちは無事に家族のもとへ帰り、都には鬼退治の報せが広まっていた。

山道を下る頼光一行を、村人たちは何度も頭を下げて見送る。

「ありがとうございました!」

「命の恩人です!」

頼光は穏やかに微笑みながら手を上げた。

「礼ならば、この者たちにも。」

頼光の視線が桃華と金時へ向く。

村人たちも二人へ深く頭を下げた。

桃華は少し照れくさそうに笑う。

「私は皆さんと一緒に戦っただけです。」

「それでも十分じゃ。」

金時が豪快に笑った。

「助かった命に大きいも小さいもない。」

     ◇

村外れ。

頼光たちは旅支度を整えていた。

金時は静かに頼光の前へ進み出る。

「頼光様。」

頼光は何も言わず、その続きを待った。

「お願いがございます。」

「申せ。」

「桃華殿の旅へ、お供させていただきとうございます。」

綱たちは苦笑した。

「やっぱり言い出したな。」

「最初からそんな顔をしておった。」

頼光は静かに笑う。

「理由は。」

金時は迷わず答えた。

「恩を返したいのです。

 一飯の恩。

 命を救われた恩。

 そして。

 この娘は、一人で背負うには重すぎる宿命を背負っております。

 わしも、その荷を少しばかり担ぎたい。」

頼光は静かに頷いた。

「金時。

 お前は誰よりも忠義に厚い男だ。

 だからこそ、お前の忠義は私だけのものではない。

 世を救わんとする者へ尽くすこともまた、忠義である。」

金時は深々と頭を下げた。

「ありがたき幸せ。」

頼光は微笑んだ。

「行け。

 そして存分に暴れてこい。」

「はっ!」

     ◇

翌朝。

桃華は山道を歩いていた。

後ろから聞き慣れた大声が響く。

「桃華殿ー!」

振り返る。

大きな荷物を背負った金時が走ってきた。

「待たせたのう!」

「金時さん。」

「頼光様より正式に許しをいただいた!

 これより先、わしも旅の仲間じゃ!」

桃華は自然と笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。

 こちらこそ、よろしくお願いします。」

二人は並んで歩き始める。

旅は再び動き出した。

     ◇

昼過ぎ。

峠へ差しかかった頃だった。

「ほっほっほ。」

聞き覚えのある笑い声。

桃華が振り返る。

「あなたは……!」

一本の桃の老木の下。

あの老人が腰を下ろしていた。

「桃の娘よ。

 無事、一つ目の試練は乗り越えたようじゃな。」

桃華は深く頭を下げる。

「ありがとうございました。」

「私は何もしておらぬ。」

老人は笑う。

「歩いたのはお前たちじゃ。」

老人は金時へ目を向けた。

「犬を得た。

 忠義とは、主へ尽くすことだけではない。

 己の信じた道を裏切らぬ心。

 それがお前の忠義じゃ。」

金時は頭を掻く。

「難しいことはよう分からん。

 じゃが。

 桃華殿が困っとるなら助ける。

 それだけじゃ。」

老人は満足そうに頷いた。

「それでよい。」

そして、ゆっくり西の空を見上げる。

夕日が山々を赤く染め始めていた。

「次は。」

老人は静かに言う。

「落陽を追うことじゃ。」

「落陽……?」

桃華が聞き返す。

「陽は西へ沈む。

 その先に、新たな出会いが待っておろう。

 それ以上は……。」

老人は微笑んだ。

「旅をする楽しみが無くなる。」

風が吹く。

桃の花びらが舞い上がる。

気付けば老人の姿は消えていた。

そこには一本の桃の老木だけが立っている。

「相変わらず不思議な爺様じゃのう。」

金時が笑った。

「でも。」

桃華は西の空を見つめる。

「行ってみましょう。」

「うむ!」

二人は夕日に向かって歩き出した。

     ◇

――その頃。

とある宿場町。

「スリだ!」

「誰か捕まえてくれ!」

男の叫び声が町中へ響く。

一人の男が人混みをかき分けて逃げていく。

「どけ!どけ!」

その進路に、一人の旅装束の少女が立っていた。

少女は慌てる様子もなく、肩へ担いでいた棍をすっと地面へ差し出す。

「うわっ!」

スリは足を引っ掛け、そのまま勢いよく転んだ。

懐から財布がいくつも飛び出す。

少女はそれを拾い上げ、持ち主へ返した。

「おっさん。

 スリはいけないよ。」

町人たちは一斉にスリを取り押さえた。

「嬢ちゃん、助かった!

 旅人かい?」

少女は棍を肩へ担ぎ直し、にこりと笑う。

「ああ。ちょっと探しものをしててね。」

「探しもの?」

「そう。」

少女は夕日に照らされた西の山を見つめる。

「あんた、この辺で一本角の鬼が人を騙してるって話、聞いたことないかい?」

町人たちは顔を見合わせる。

「……そういや、最近そんな噂を聞いたな。」

少女は満足そうに笑う。

「やっぱり、この辺で間違いなさそうだ。」

棍を肩に担ぎ、ゆっくりと歩き出す旅人。

その小さな背中を、夕日が長く照らしていた。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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