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第二十二話 天翔ける宝船

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 1,946文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

鬼無の里の広場に、鳥たちのざわめきが広がった。

「来たぞ!」

誰かの声に、一同が空を見上げる。

雲海を突き破るように、一隻の巨大な帆船が姿を現した。

純白の帆を風に受け、黄金の装飾を纏ったその船は、まるで天そのものを航海しているかのようだった。

船首には、大きく「寶」の文字。

「……あれは。」

桃華は思わず息を呑む。

「宝船……。」

ゆっくりと地上へ降り立つ宝船。

渡り板が下ろされると、一人、また一人と神々が姿を現した。

打ち出の小槌を肩に担ぐ大黒天。

釣竿を携えた恵比寿。

琵琶を抱く弁財天。

長い杖と巻物を携えた福禄寿。

鹿を従えた寿老人。

武具に身を包んだ毘沙門天。

そして、大きな袋を肩に担ぎ、福々しい笑みを浮かべる布袋。

七柱は桃華たちの前まで歩み寄る。

福禄寿が穏やかに一礼した。

「我ら七福神。義により参上した。」

桃華も深く頭を下げる。

「お力添え、ありがとうございます。」

福禄寿は小さく笑った。

「いやいや。 昔から『鬼は外、福は内』と言ってな。 鬼退治と福の神は、昔から縁が深いものよ。」

少し笑みを浮かべる。

「しかし、勘違いしてもらっては困る。 我らは福の神。 この宝船も福を運ぶ船であって、戦艦ではない。」

金時が首を傾げる。

「つまり?」

「鬼退治は期待せんでくれ、ということじゃ。」

福禄寿は苦笑しながら隣を見る。

「うちで戦力になるのは毘沙門天くらいじゃ。」

毘沙門天は腕を組み、鼻を鳴らした。

「……一人で十分だ。」

その言葉に、大黒天が腹を抱えて笑う。

「はっはっはっ!

 また始まったわい!」

恵比寿も肩をすくめた。

「戦となると、この御方はいつもこうです。」

広場が笑いに包まれる。

福禄寿は改めて桃華へ向き直った。

「しかし約束しよう。

 お主らを鬼ヶ島まで、無事に送り届ける。

 それが我らの務めじゃ。」

桃華は力強く頷いた。

「よろしくお願いいたします。」

「まあ、わしらは戦いで手を貸せんが、共に戦いたいと言う者を幾人か連れてきたぞ」

その時だった。

宝船の奥から、八人の戦士が静かに姿を現す。

「我は天部。」

「我は小白龍。」

「夜叉。」

「乾闥婆。」

「阿修羅。」

「迦楼羅。」

「緊那羅。」

「摩睺羅伽。」

八人は揃って一礼した。

「天龍八部衆。闘戦勝仏への義によりて参上した。」

小白龍はゆっくりと蜜秋へ視線を向ける。

目を細め、懐かしそうに微笑んだ。

「久しいな、そ――」

「しーっ!」

蜜秋は慌てて人差し指を口元へ当てる。

そのまま耳元へ近づき、小声で囁いた。

「ごめんね。

 今はいろいろ訳があって、謎の美少女・蜜秋ってことになってるんだ。」

小白龍は一瞬ぽかんとしたあと、小さく笑った。

「……相変わらずだな。

 そ――いや、蜜秋か。」

二人は笑い合う。

小白龍は桃華へ向き直った。

「鬼ヶ島では、我が背に。」

「ありがとうございます。その時は、よろしくお願いいたします。」

その言葉とともに、小白龍の身体が白い光に包まれる。

龍の姿は次第に縮み、

やがて神々しい一頭の白馬へと姿を変えた。

白馬は桃華の前へ歩み寄り、静かに頭を垂れる。

桃華はその首を優しく撫でた。

その様子を、蜜秋はじっと見つめていた。

「ねえ、金時。」

「なんじゃ。」

「ちょっとこっち立って。」

「……は?」

「凰はその隣。」

凰も首を傾げながら並ぶ。

「こうか?」

「うんうん。」

蜜秋は白馬へ向き直る。

「白龍、その手綱ちょっと咥えて。」

白馬は訳も分からぬまま、素直に手綱をくわえた。

蜜秋は数歩後ろへ下がり、腕を組んでその光景を眺める。

しばらく無言。

やがて――

「アハハハハハハ!」

突然、腹を抱えて笑い出した。

金時が眉をひそめる。

「今度はなんじゃ。気味が悪い。」

蜜秋は笑いを堪えながら首を振る。

「ごめん、ごめん。

 なんか……すごく懐かしくて。」

誰にも、その笑みの意味は分からなかった。 ただ蜜秋だけが、遠い昔を懐かしむように目を細めていた。

「そろそろ参ります。」

その声とともに、鬼無の里の各所から飛空船が次々と浮かび上がる。

翼を広げた鳥のような船。

「……あれは?」

桃華が尋ねる。

雉牙は誇らしげに答えた。

「天鳥船あまのとりふねと言います。

 鬼無の里が誇る飛空船ですよ。」

数十隻の天鳥船が空へ舞い上がる。 そのうち四隻だけが宝船のもとへ降り立った。

四隻は宝船を囲むように隊列を組んだ。

「見事なものじゃ。」

凰が感心したように呟く。

鳥たちが一斉に羽ばたく。

宝船が静かに浮かび上がる。

四隻の天鳥船も続く。

その時――。

遠く前方の天鳥船の甲板に、一人の男が立っていた。

素戔嗚である。

素戔嗚は桃華たちに気付くと、不敵に笑う。

そして何も言わず、親指を立てた。

桃華は静かに一礼する。

金時は大きく手を振った。

宝船は鬼ヶ島へ。

天鳥船は天界へ。

同じ空を翔けながら、

それぞれ異なる戦場へ。

五隻の飛空船は朝日に照らされ、

雲海の彼方へと消えていった。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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