第二十三話 鬼ヶ島の空の表紙画像

第二十三話 鬼ヶ島の空

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 1,747文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

宝船は穏やかな風を受け、瀬戸の内海の上を進んでいた。

船首に立った桃華は、潮風を受けながら遠くを見つめていた。

「これほど大きな海を見るのは初めてです。」

金時は静かに笑う。

「瀬戸の内海は昔より海の要衝じゃ。」

桃華は眼下に広がる景色を見つめる。

「……旅というものは、これほど景色が変わるものなのですね。」

金時は笑った。

「桃華殿は旅は初めてか。」

「はい。天界を出たのも、今回が初めてです。」

金時は船縁へ歩み寄り、遥か彼方を指差した。

「右に見えるのが淡路国。

 その向こう、水平線に見える山々が伊予の二名の島いよのふたなのしまじゃ。」

桃華は目を細める。

「かなり大きな島ですね。」

「うむ、一つの島に四つの国がある。

 わしの母上も、あの伊予の二名島の生まれだそうじゃ。」

桃華は少し驚いたように振り返る。

「そうだったのですか。」

「親父殿が山へ来るまでは、あちらで暮らしておったらしい。」

金時は懐かしそうに笑う。

「もっとも、わしは見たこともないがの。」

しばらく海を眺めたあと、小さく笑った。

「旅はいいぞ。見聞を広めるにも、自分を知るにもな。」

大斧を肩へ担ぐ。

「山で熊と相撲ばかり取っておった頃のわしは、自分が一番強いと思っておった。

 今思えば、井の中の蛙じゃった。」

蜜秋が笑う。

「でも、その熊には負けたことあるんでしょ?」

「ある。」

金時はあっさり頷いた。

「たまにな。」

桃華が思わず吹き出す。

三人の笑い声が、青空へ溶けていった。

右手を水平線へ向けた。

「我らが向かう女木島は讃岐国の沖。

 もうすぐ見えてくる群島の一つじゃ。」

その時だった。

遠くの空が黒く染まり始める。

やがて島影が見えてきた。

しかし、島の上空だけが、まるで夜のような暗雲に覆われている。

凰が眉をひそめる。

「自然の雲ではないな、鬼気じゃ。

 鬼気が渦巻いておる」

蜜秋も目を細めた。

「歓迎されてる感じじゃないね。」

船がさらに近付く。

断崖の上には無数の黒い影。

数百を超える鬼たちが岸壁を埋め尽くしていた。

金時が鼻を鳴らす。

「ずいぶんと待ち構えとるの。」

鬼たちは一斉に何かを持ち上げた。

蜜秋が首を傾げる。

「石?」

その瞬間、黒い影が空を覆う。

「そんな石礫、当たらんよ。」

雉牙が叫んだ。

「違います!あれは石ではございません!

 岩です!」

見る見るうちに巨大さを増していく。

遠目には小石ほどにしか見えなかった。

だが鬼の怪力で投げ放たれたそれは、人の身の丈の半分ほどもある巨大な巌だった。

「宝船を守れ!」

雉牙の号令が響く。

四隻の天鳥船が一斉に前へ躍り出た。

宝船を囲むように陣形を組む。

轟音。

最初の巌が天鳥船へ激突する。

続いて二つ。

三つ。

岩の雨が空を埋め尽くした。

福禄寿は静かに息を吐く。

「これでは近付けぬの。」

毘沙門天が槍を握る。

「露払いが必要だな。」

その時。

ゴロゴロ……。

天が鳴った。

金時は空を見上げ、口元を緩める。

「おお。親父殿も、たいそうお怒りのようじゃ。」

桃華が尋ねる。

「武御雷神様ですか?」

「うむ。」

金時は笑う。

「この雷鳴は親父殿の機嫌がよう分かる。」

再び空が光る。

雉牙が振り返る。

「どうしますか!

 このままでは島へ近付けません!」

毘沙門天が当然のように言った。

「ならば飛び降りればよい。

 皆、空を飛べるのであろう?」

その場が静まり返る。

金時が困ったように頭を掻く。

「……わしは空を飛べるようには出来ておらんのじゃが。」

小白龍が笑う。

「案ずるな。」

迦楼羅も翼を広げた。

「我らがお連れしよう。」

金時は満足そうに頷いた。

「ならば。」

大斧を肩へ担ぐ。

「わしは鬼どもに風穴を開けるとするか。」

黄金の髪が風になびく。

「これだけ親父殿がお怒りなら、普段の数倍は雷が落ちそうじゃ。」

金時はゆっくりと大斧を天に掲げた。

その瞬間。

黄金の髪が眩く輝く。

轟音。

天が裂けた。

幾筋もの雷が鬼ヶ島へ降り注ぐ。

轟ッ!!

轟ッ!!

轟ッ!!

雷光は岸壁を薙ぎ払い、鬼の群れを呑み込んだ。

悲鳴が響く。

隊列が崩れる。

金時は豪快に笑った。

「今じゃ! わしの雷が道を開いた! 落ちた所目掛けて飛び込め!」

「さあ我にお乗りください」

近づく白馬に跨った桃華は聖剣の柄を握る。

蜜秋は棍を肩へ担ぐ。

凰は扇を広げ、不敵に笑う。

雉牙は翼を広げた。

「参ります!」

次の瞬間。

宝船から英雄たちが一斉に大空へ飛び出した――。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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