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第二十五話 斉天大聖

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/8/29 📚 シリーズ: 桃華伝 〜真伝・桃太郎〜 📝 3,131文字 ✅ 全年齢

あらすじ

天界と人界、黄泉の狭間にある神々の国。 《桃》の化身・桃華は、鬼神族の侵攻によって滅びかけた天界から、破邪の聖剣《桃光》を託され地上へ逃れた。 しかし追っ手に深手を負わされ、川へ落ちた桃華は記憶を失ってしまう。 彼女を救ったのは、山里で暮らす老夫婦だった。 桃の香りをまとい、名も思い出せない少女に、二人は「桃太郎」という新たな名を与える。 穏やかな日々の中で、桃太郎は初めて家族の温かさを知る。 だが、鬼神族の襲来によって失われた記憶と使命を取り戻した彼女は、大切な人々を守るため、再び剣を取る。 旅立つ桃華へ、謎の老人は告げた。 「お前には三つの力が必要となる」 犬――すなわち忠義。 猿――すなわち知恵。 鳥――すなわち天を翔ける導き。 桃華は聖剣と、老夫婦から託されたきびだんごを携え、三人の仲間を求めて旅に出る。 その先で待つのは、雷神の血を引く武人、異国より渡った猿妖、そして最古の霊鳥。 これは、鬼を完全な悪とは断じない、新たな桃太郎の物語。 正義と悪が入れ替わる世界で、桃の娘は何を守り、何を討つのか――。

本文

鬼ヶ島。

雷によって開かれた突破口は、すでに鬼たちによって埋め尽くされようとしていた。

「次から次へと……!」

白馬の背で身体をひねり、桃華は聖剣を振るう。

一閃。

一匹の鬼が黒い霧となって消える。

だが、その向こうから二匹。

さらにその後ろから三匹。

倒しても、倒しても。

鬼たちは洞窟を守るように押し寄せてくる。

「桃華様、右です!」

雉牙の声。

桃華が振り返る。

白馬の右側から巨大な金棒が迫る。

小白龍が身を翻そうとしたが、別の鬼が前を塞いでいた。

「――っ!」

その瞬間。

ガンッ!

横から伸びた棍が金棒を受け止めた。

「蜜秋!」

「よそ見しちゃ駄目だよ!」

蜜秋は棍をひねる。

鬼の金棒を弾き飛ばし、そのまま懐へ潜り込んだ。

「そりゃ!」

腹部へ一撃。

鬼の巨体が吹き飛ぶ。

蜜秋は桃華の前へ立つと、周囲を見渡した。

鬼。

鬼。

鬼。

海岸から洞窟までを埋め尽くすほどの軍勢。

身外身の術で生み出した猿たちも戦っているが、その数は少しずつ減っていた。

蜜秋がため息をつく。

「……さすがに、そろそろ限界かな。」

金時が大斧で鬼を薙ぎ払いながら叫ぶ。

「何がじゃ!」

「一匹ずつ相手するのが!」

蜜秋は棍を肩へ担いだ。

そして洞窟を見据える。

「いっぺんに道を作るよ。」

桃華が振り返る。

「道を?」

「うん。」

蜜秋は棍を地面へ突き立てた。

そして――。

額に巻かれていたバンダナへ手を掛ける。

「これ、ずっと邪魔だったんだよね。」

するり。

布が解かれ、風に舞った。

その下から現れた額を見て、雉牙が息を呑んだ。

「……それは。」

額を一周するように、くっきりと残された古い痕。

まるで何かが、長い年月にわたって強く食い込んでいたかのような痕だった。

雉牙の顔色が変わる。

「まさか……。」

凰は扇で口元を隠しながら、面白そうに目を細めた。

「ほう。」

蜜秋はそんな二人を気にすることなく、手にした棍を見つめる。

「久しぶりに、本気で働いてもらおうかな。」

棍を両手で構える。

鬼たちが一斉に襲い掛かった。

「潰せ!」

「小娘どもを殺せ!」

蜜秋は不敵に笑った。

そして叫ぶ。

「伸びろ――」

棍の先端を洞窟へ向ける。

「如意棒!」

轟ッ!!

棍が一瞬にして伸びた。

「なっ――!」

一直線。

押し寄せていた鬼たちを次々と弾き飛ばし、あるいは貫きながら、如意棒は凄まじい勢いで洞窟の入口へ向かって伸びていく。

一匹。

十匹。

数十匹。

鬼の軍勢が左右へ吹き飛ばされた。

大地が抉れる。

土煙が舞う。

そして――。

轟音とともに、如意棒の先端が洞窟の入口へ突き立った。

一瞬の静寂。

桃華の目の前から洞窟まで。

鬼の群れを真っ二つに割るように、一本の道が出来ていた。

「……。」

桃華は言葉を失う。

金時も大斧を肩へ戻した。

「なんじゃ……あれは。」

雉牙だけは違った。

額に残る輪の痕。

自在に伸びる棍。

そして――如意棒。

その全てを知っていた。

「やはり……。」

雉牙は蜜秋を見つめる。

「斉天大聖様だったのですね。」

桃華が振り返る。

「斉天……大聖?」

蜜秋は頭を掻いた。

「あー……。」

困ったように笑う。

「やっぱり、分かっちゃった?」

雉牙は深々と頭を下げた。

「如意金箍棒を目の前で見せられて、分からぬ者はおりますまい。」

「そっかぁ。」

蜜秋はため息をつく。

「けっこう気に入ってたんだけどなぁ。謎の美少女・蜜秋。」

金時が眉をひそめる。

「待て。」

大斧を担いだまま蜜秋を見る。

「斉天大聖というと、あの斉天大聖か?」

「どの斉天大聖?」

「一人しかおらんじゃろ!」

凰が声を上げて笑った。

「はっはっはっ! なるほどのう!」

扇を広げる。

「小白龍がヌシを見て妙な反応をしておった理由も、これで分かったわ。」

蜜秋は頬を膨らませた。

「もう、みんなして。」

その時。

左右へ吹き飛ばされた鬼たちが、再び起き上がり始めた。

蜜秋の表情が変わる。

「……ま、詳しい話はあと。」

如意棒を振る。

瞬く間に縮んだ棒が、再び蜜秋の手へ収まった。

そして洞窟まで開いた道を指差す。

「道は作ったよ。」

桃華は洞窟を見る。

その奥から感じる、朱天の気配。

聖剣を強く握った。

「行きましょう。」

「おう!」

金時が大斧を担ぐ。

凰が扇を広げる。

蜜秋も如意棒を肩へ乗せた。

四人が走り出そうとした、その時――。

「ここは我らにお任せください!」

雉牙だった。

雉衆が次々と舞い降り、四人の後方へ陣を組む。

「追手は我らが食い止めます!」

桃華は一瞬迷った。

「ですが――」

「我らは何のために鬼ヶ島まで参ったとお思いですか。

 追手は我らが食い止めます!」

雉牙だった。

雉衆が次々と舞い降り、四人の後方へ陣を組む。

「桃華様の道を開くためです。」

桃華は一瞬迷った。

「ですが――」

雉牙は槍を構えた。

「ここは我らにお任せください!」

その時だった。

「――俺達も混ぜてもらおうか!」

聞き慣れない声が響いた。

上空から二つの影が降ってくる。

ズンッ!

地面を揺らして着地したのは、大柄な二人の男。

一人は九歯の馬鍬を肩に担ぎ、もう一人は宝杖を手にしていた。

蜜秋が目を見開く。

「……え?」

二人は鬼の群れへ向き直る。

「俺達が後ろを守ります。」

「安心して行って下さい。」

蜜秋は二人を見つめたまま動かない。

その顔から、いつもの軽薄な笑みが消えていた。

「浄壇使者……」

一人を見る。

そして、もう一人へ。

「金身羅漢……」

大柄な男は困ったように頭を掻いた。

「なんですか、それ。」

蜜秋が目を瞬く。

男はニッと笑う。

「そんなよそよそしい呼び方じゃなくて。」

九歯の馬鍬を肩へ担ぐ。

「昔みたいに活入れてくださいよ、アニキ。」

「…………」

蜜秋は二人を見つめた。

遠い昔。

天竺へ続く果てしない道。

口喧嘩をし。

腹を空かせ。

妖怪と戦い。

何度も三蔵に叱られながら、それでも共に歩き続けた二人。

あの頃の仲間が、目の前にいる。

蜜秋は俯いた。

そして――。

顔を上げた時。

そこにいたのは「謎の美少女・蜜秋」ではなかった。

不敵な笑みを浮かべる。

かつて天界を騒がせた、斉天大聖。

「……ブタ!」

浄壇使者が笑う。

「おう!」

「カッパ!」

金身羅漢も宝杖を構えた。

「おう!」

蜜秋は如意棒を肩へ担ぐ。

「遅れを取るんじゃねぇぞ!」

二人は声を揃えた。

「おう!!」

金時が目を丸くする。

「……お主、そんな喋り方もするんじゃな。」

蜜秋は我に返った。

「……あ。」

凰が扇で口元を隠す。

「ほほう。そちらが素か。」

「違うから!」

「何が違うんじゃ?」

「今のなし! 忘れて!」

金時が豪快に笑った。

「無理じゃ!」

桃華も思わず笑みをこぼす。

だが、浄壇使者は振り返らなかった。

九歯の馬鍬を構え、押し寄せる鬼を睨みつける。

「さあ、行って下さい。」

金身羅漢も宝杖を地面へ突き立てた。

「ここは我らが引き受けます。」

その左右へ雉牙たちが並ぶ。

鳥の戦士たち。

そして、かつて天竺まで斉天大聖と旅した二人。

蜜秋はしばらく二人の背中を見つめていた。

やがて――。

「頼んだよ。」

今度は、蜜秋として言った。

浄壇使者は振り返らずに片手を上げる。

「任せろ、アニキ。」

金身羅漢も笑った。

「お気をつけて。」

蜜秋は如意棒を握り直した。

「行こう、桃華。」

「はい!」

桃華は白馬の手綱を握り直した。

「小白龍、参りましょう。」

『承知。振り落とされるなよ。』

白馬が力強く地面を蹴る。

金時が大斧を担ぎ、その横を走る。

蜜秋は如意棒を肩へ乗せる。

凰は扇を広げ、ふわりと宙へ舞った。

四人と一頭は、蜜秋が切り開いた一本道を洞窟へ向けて駆け出した。

背後から轟音が響く。

「さて!」

浄壇使者が九歯の馬鍬を振り上げる。

「久しぶりに暴れるか、沙悟浄!」

「その名で呼ばれるのも、久しぶりですね。」

金身羅漢が宝杖を構える。

二人の前には、再び押し寄せてくる鬼の大群。

そして頭上には雉衆。

雉牙が槍を前へ向けた。

「一匹たりとも通すな!」

雄叫びが響く。

その声を背に受けながら、桃華たちは洞窟の闇へ飛び込んでいった。

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作者について

鳳 翔平

「小説家になろう」で連載中の物を、一部修正してこちらにも投稿させてもらってます。 文章作成で、AI利用してますが、プロット、シナリオは完全作者の物。そこにAIには一切介入させません。

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