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第二十話「ベスト16」

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📅 公開日: 2026/8/31 📚 シリーズ: 魔王るこ討伐記 📝 9,525文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

『魔王るこ討伐記』あらすじ 剣士、魔法使い、弓使い、薬師―― 誰もがひとつの「スキル」を持って生きる世界。 冒険者たちは仲間とパーティを組み、ダンジョンを攻略し、魔物を討ち、日々さまざまな依頼をこなしていた。 そんな世界に君臨する、絶対的な敵。 魔王――るこ。 そして魔王に仕える、四人の強者――「四天」。 世界各地では、まだ互いの存在すら知らない者たちの物語が始まっていた。 一人で依頼をこなす剣士。 冒険者を夢見る弓使いの少女。 小さな薬草店で働く少女。 記憶を失った、異常なほど剣の強い謎の男。 そして――羊一匹にすら苦戦する、新米冒険者たち。 英雄だけが、この物語の主人公ではない。 冒険者も、商人も、ギルドの受付も、街で暮らす普通の人々も。 それぞれが出会い、別れ、時に敵となり、時に仲間となり―― やがて無関係だったはずの物語は、一つへと繋がっていく。 しかし彼らはまだ知らない。 なぜ魔王るこは世界を滅ぼそうとしているのか。 「魔王」とは、本当に世界の敵なのか。 そして―― この世界そのものに、誰も知らない秘密が眠っていることを。 これは、魔王を倒す英雄一人の物語ではない。 この世界に生きる、たくさんの人々の物語。 『魔王るこ討伐記』 ――魔王を倒したその先に、本当の答えがある。

本文

二回戦、第十五試合。

中央の巨大な舞台で、カズキとはにが向かい合っていた。

二回戦も残すところ、あと二試合。

一回戦では四つに分かれていた闘技場も、今は中央の一面だけが使われている。そのため、数え切れないほどの観客の視線も、敗退した選手たちの視線も、すべてが二人へ集まっていた。

カズキは腰の剣を抜きながら、正面に立つ少女を改めて見る。

はに。

一回戦の戦いは見ていた。

速かったことも覚えているし、何度も相手の攻撃をかわしていたことも覚えている。

けれど、それだけではなかった。

避けたように見えたのに、次の瞬間には違う場所にいる。

そこにいたはずなのに、攻撃すると手応えがない。

残像。

そう表現するのが一番近い気はする。

ただ、それが単純に速く動いているだけなのか、それとも別の仕組みなのか、カズキにはまだ分からなかった。

はに「そんなに見られると照れるんだけど」

カズキ「いや、そういう意味じゃなくて!」

はに「知ってる!」

カズキ「知ってるなら言うなよ!」

観客席から笑い声が上がる。

少し離れた選手観覧席では、ジェノスが腕を組んで二人を見ていた。その隣にはひっかるんがおり、さらにその少し先ではサイタマタマがなぜかすでに立ち上がっている。

サイタマタマ「カズキィィィ!! 勝てよぉぉぉ!!」

カズキ「まだ始まってない!」

ジェノス「兄ちゃん、ちょっと静かにして」

サイタマタマ「応援だぞ!?」

ひっかるん「応援するの早いよ」

反対側の観覧席からも声が飛んだ。

マリン「はにー! 頑張って!」

五月雨「落ち着いてね!」

はに「まっかせてー!」

カズキ「余裕そうだな……」

はに「そっちこそ!」

カズキ「緊張してるよ!」

はに「正直だね!」

カズキ「悪いか!」

再び笑いが起こる。

その空気を切るように、審判が二人の中央へ歩み出た。

maro『さあ!! 二回戦も残すところ、あと二試合!!』

大歓声が闘技場を揺らす。

maro『第十五試合!! セントヘブン代表、カズキ!! 対するは――はに!!』

カズキは剣を構えた。

はにも姿勢を低くする。

一瞬前まで笑っていた表情が変わり、互いの視線が真っ直ぐぶつかった。

審判「始め!!」

最初に動いたのは、はにだった。

カズキ「!」

速い。

右。

そう判断して剣を振るう。

しかし。

カズキ「え――」

刃は、はにの身体をすり抜けた。

いや。

そこにはもう、誰もいない。

次の瞬間、左側から気配がした。

カズキ「っ!」

咄嗟に身体を捻る。

避けた。

そう思った直後。

ザッ。

カズキ「痛っ!」

腕に細い傷が走った。

カズキ「……え?」

はには数歩離れた場所に立っている。

確かに避けたはずだった。

それなのに、攻撃が掠めている。

はに「どう?」

カズキ「どうって……何が!?」

はに「分かんないでしょ?」

カズキ「……分かんない!」

はに「正直!」

再び踏み込んでくる。

カズキは今度こそ目を離さない。

右から来る。

剣を合わせる。

キィン!

今度は当たった。

はに「!」

カズキ「よし!」

押し返そうとする。

だが、その瞬間。

目の前にいたはにの輪郭が、わずかに揺れた。

カズキ「……?」

違和感。

ほんの一瞬だった。

次には、はにが横へ流れている。

カズキ「そこ!」

追う。

剣を振るう。

しかし、また手応えがない。

はにの姿だけが、そこに残っている。

カズキ「また……!」

背後。

振り返る。

はに「こっち!」

カズキ「っ!」

攻撃を受ける。

完全には入らなかったものの、肩を浅く切られた。

カズキは距離を取りながら、眉を寄せる。

速い。

確かに速い。

ただ、ひっかるんの【瞬間】とは明らかに違う。

ひっかるんは一瞬だけ、とんでもない速度で移動する。

だから速すぎて見えない。

はには違う。

見えている。

なのに、見えている場所と本当の位置が噛み合っていない。

カズキ「……なんなんだ、これ」

観覧席。

ひっかるん「やっぱり変だよね」

ジェノス「ああ」

サイタマタマ「残像だ!」

ひっかるん「……まあ、見た感じはそうだよね」

ジェノス「問題は、どういう仕組みかだ」

サイタマタマ「全然わからないな!ハハ!」

舞台では、はにが再び仕掛ける。

カズキは剣を構えたまま、今度はすぐに攻撃しなかった。

はに「来ないの?」

カズキ「……見る」

はに「何を?」

カズキ「それを今から探す!」

はに「なるほど!」

また走る。

右へ。

カズキは反応しない。

はにの姿が右に残る。

けれど、足音は少し違う場所から聞こえた。

カズキ「……!」

左。

剣を出す。

キィン!

はに「えっ!?」

初めて、はにの攻撃を正面から受け止めた。

カズキ「いた!」

はに「今の分かった!?」

カズキ「いや、まだ!」

はに「まだなの!?」

カズキ「でも、ちょっとだけ!」

押し合いながら、カズキははにの動きを見る。

姿。

足。

身体の向き。

そして、残る像。

はにが離れた。

カズキは追わない。

さっきまでは見えている相手をそのまま追っていた。

だから外された。

なら、見る場所を変える。

はに「じゃあ――これは?」

一気に加速する。

一人。

二人。

三人。

カズキ「なっ……!」

はにの姿が、舞台上に複数残った。

観客席がどよめく。

「増えた!?」

「どれが本物だ!?」

「すげぇ!」

カズキ「……いやいやいや!」

三つの姿。

どれも動いているように見える。

その間を縫うように、はにが迫る。

カズキは一度剣を振るった。

空振り。

別のはにへ向く。

違う。

三つ目。

カズキ「っ!」

攻撃。

今度は脇腹を掠めた。

カズキ「くっ……!」

はに「今度は難しいでしょ!」

カズキ「難しいよ!」

はに「そこは否定してよ!」

カズキ「無理なものは無理!」

笑い声が起こるが、カズキはもう周囲を気にしていなかった。

三つ。

いや、次は四つ。

はにの残像が増える。

どれを見ればいい。

どれが本物だ。

そう考えたところで、カズキはふと思う。

そもそも。

見る必要があるのか。

カズキ「…………」

剣を下げる。

はに「?」

カズキの目が細くなる。

一回戦。

槍使いと戦った時。

最初は、相手の槍しか見ていなかった。

けれど、何度も攻撃を受けるうちに気づいた。

突く直前、右肩が少し落ちる。

それを読んでかわした。

さらに相手が癖を利用してフェイントを入れた時も、今度は肩だけではなく全身を見て対応した。

だから。

今回も同じだ。

見えているもの全部を、信用する必要はない。

カズキ「……残像は残像」

はに「?」

カズキ「本物じゃないなら、見なくていい」

はに「!」

はにが動いた。

残像。

二つ。

三つ。

四つ。

カズキはその姿を追わない。

足元を見る。

床。

砂埃。

風。

剣を振るために必要な距離。

攻撃するなら、必ず本体が通る場所。

一つ目の残像が右へ走る。

無視。

二つ目が左。

無視。

三つ目が真正面へ。

それも見ない。

カズキ「……来るなら」

一歩だけ動く。

カズキ「ここ!」

剣を振った。

キィィン!!

はに「っ!?」

何もいなかったはずの場所で、剣同士がぶつかった。

観客席がどよめく。

ひっかるん「当てた!」

ジェノス「……読んだな」

はにが大きく後ろへ跳ぶ。

その表情から、さっきまでの余裕が消えていた。

はに「なんで分かったの?」

カズキ「まだ完全には分かってない」

はに「またそれ!?」

カズキ「でも、攻撃するなら本物はそこに来る!」

はに「…………」

カズキ「見えてる場所じゃなくて、次にいる場所を見ればいいんだ」

はに「それ普通に嫌なんだけど」

カズキ「俺もすごく嫌だったからお互い様!」

はに「よし!」

構える。

はに「じゃあもっと増やす!」

カズキ「増やすの!?」

はに「もちろん!」

カズキ「聞かなきゃよかった!」

はにが駆けた。

今まで以上に速い。

残像が一気に増え、カズキの周囲を囲む。

右。

左。

前。

後ろ。

観客から見れば、はにが何人もいるようだった。

カズキは目だけを動かす。

全部は追わない。

本物だけを探そうともしない。

はにが攻撃するために必要な位置。

自分の剣が届かない位置。

一番安全に踏み込める方向。

それを考える。

カズキ(右じゃない)

残像が走る。

カズキ(左も違う)

別の姿が迫る。

カズキ(正面は――)

剣を構える。

違う。

わざと見せている。

なら。

カズキ「後ろ!」

振り返る。

はに「!」

本物。

はにが剣を振り下ろす。

カズキは受ける。

キィン!!

すぐには押し返さない。

はにがまた残像を作ろうと身体を動かした。

その瞬間。

カズキ「今!」

踏み込んだ。

はに「え?」

残像が生まれる前。

本物が次の動きへ移る、その一瞬。

カズキの剣が下から跳ね上がる。

カンッ!

はにの剣が宙へ飛んだ。

はに「……あ」

剣が舞台へ落ちる。

カズキはそのまま一歩前へ出て、自分の剣先をはにの胸元で止めた。

静寂。

はに「…………」

カズキ「…………」

はにが落ちた剣を見る。

それから自分へ向けられた剣を見る。

最後にカズキを見る。

はに「……参りました」

審判が腕を上げた。

審判「勝者――カズキ!!」

次の瞬間、大歓声が爆発した。

maro『決着ゥゥゥゥ!!』

maro『見えない!! 分からない!! ならば戦いながら見つけ出す!!』

maro『はにの残像を――完全攻略だァァァ!!』

カズキ「いや、完全ではないです!」

maro『えっ!?』

カズキ「最後までよく分かってないところあります!」

はに「うん、完全攻略は言いすぎ!」

maro『本人たちから訂正が入りましたァァァ!!』

観客席から大きな笑いが起こる。

カズキは剣を下ろし、落ちていたはにの剣を拾って差し出した。

カズキ「ありがとう」

はに「こちらこそ。途中からめちゃくちゃやりにくかった」

カズキ「本当に?」

はに「うん。最初なんて全然分かってなかったのに」

カズキ「自分でもそう思う」

はに「そこは少しくらい格好つけなよ!」

カズキ「嘘つけないし!」

はには呆れたように笑って剣を受け取った。

はに「でも、強かったよ」

カズキ「……ありがとう」

はに「次も勝ってね」

カズキ「うん」

二人は拳を軽く合わせ、それぞれ舞台を降りていく。

カズキが選手観覧席へ戻ると、最初に立ち上がったのはひっかるんだった。

ひっかるん「カズキ!」

カズキ「勝った!」

ひっかるん「見てた!」

カズキ「そりゃそうか!」

その横ではジェノスが腕を組んだまま、少しだけ笑っている。

ジェノス「ちゃんと見つけたな」

カズキ「うん」

ジェノス「一回戦もそうだった」

カズキ「……そうだな」

一回戦では相手の癖を見つけた。

二回戦では、分からなかった動きを戦いながら少しずつ理解した。

自分には派手な魔法もない。

強力なスキルも、今のところ何なのか分からない。

それでも。

カズキ「……俺、こういうの得意なのかも」

ひっかるん「観察?」

カズキ「多分」

ジェノス「今さら気づいたのか」

カズキ「知ってたの!?」

ジェノス「一回戦から見てればな」

カズキ「教えてくれよ!」

ジェノス「自分で気づいた方がいいだろ」

カズキ「そういうもの!?」

サイタマタマ「カズキ!」

突然、横から肩を掴まれた。

カズキ「うわっ!?」

サイタマタマ「勝ったな!」

カズキ「勝ったよ!」

サイタマタマ「じゃあ次は俺たちだ!」

カズキ「…………」

サイタマタマ「ん?」

カズキ「……あ」

ジェノス「忘れてただろ」

カズキ「忘れてない!」

ひっかるん「絶対忘れてた」

カズキ「一瞬だけ!」

ジェノス「忘れてるじゃねぇか!」

魔導掲示板が切り替わる。

二回戦。

第十六試合。

最後の一戦。

ジェノス。

対。

サイタマタマ。

先ほどまで笑っていたジェノスが、静かに立ち上がった。

サイタマタマも笑顔のままではあるものの、その目だけが少し変わる。

カズキ「……兄弟対決か」

ひっかるん「どっち応援する?」

カズキ「それ聞く?」

ひっかるん「聞いてみただけ」

ジェノスが手を伸ばす。

カズキは迷わず拳を合わせた。

カズキ「勝ってこい」

ジェノス「ああ」

サイタマタマ「俺には!?」

カズキ「サイタマタマも頑張れ!」

サイタマタマ「よし!」

ジェノス「どっちなんだよ」

カズキ「どっちもだよ!」

兄弟は別々の通路から舞台へ向かった。

maro『さあ!! ついに来たぞォォォ!!』

会場の熱気がさらに上がる。

maro『二回戦最終試合!! しかもこの二人――実の兄弟!!』

「おおおおおおお!!」

maro『弟!! 炎を纏い、拳で突き進むジェノス!!』

ジェノスが舞台へ上がる。

その両手に、すでに小さな炎が灯っている。

maro『対するは兄!! ここまで圧倒的な力で勝ち進んできた――サイタマタマ!!』

反対側からサイタマタマが現れる。

ジェノス「…………」

サイタマタマ「…………」

向かい合う。

しばらく沈黙。

そして。

サイタマタマ「久しぶりだな、ジェノス」

ジェノス「昨日も話しただろ」

サイタマタマ「そういう意味じゃない!」

ジェノス「分かってるよ」

サイタマタマ「最後にちゃんと戦ったの、いつだ?」

ジェノス「結構前」

サイタマタマ「なら、強くなったところ見せてくれよ」

ジェノス「言われなくても」

炎が大きくなる。

ジェノス「今日は兄ちゃんだからって遠慮しないからな」

サイタマタマ「こっちも!」

審判が腕を上げた。

審判「始め!!」

ドンッ!!

開始と同時。

ジェノスの足元で炎が爆発した。

カズキ「速っ!」

炎を爆発させ、その反動で一気に加速する。

ジェノスはただ炎を飛ばす魔法使いではない。

脚。

肘。

拳。

背中。

必要な場所で炎を炸裂させ、その力そのものを自分の加速へ変える。

一瞬でサイタマタマの懐へ入った。

ジェノス「はあっ!!」

拳。

サイタマタマ「!」

ドンッ!!

サイタマタマが腕で受ける。

炎が炸裂した。

身体が後ろへ押される。

ジェノスは止まらない。

肘。

炎。

回転。

蹴り。

さらに爆発。

連続する衝撃がサイタマタマを押していく。

カズキ「ジェノス押してる!」

ひっかるん「すご……」

炎の使い方が、これまでより明らかに激しい。

拳に纏うだけではない。

自分自身を飛ばす。

攻撃の途中で加速する。

普通なら動きが止まる瞬間にも炎を使い、無理やり次の攻撃へ繋げている。

ジェノス「まだだ!!」

右拳。

サイタマタマがかわす。

ジェノスの肘で炎が爆発した。

軌道が変わる。

サイタマタマ「おっと!」

ドゴッ!!

拳が頬へ入る。

続いて腹。

肩。

顎。

サイタマタマが後ろへ下がる。

ジェノス「どうした!」

サイタマタマ「強くなったな!」

ジェノス「まだ余裕そうだな!」

サイタマタマ「いや!」

頬を拭う。

少し血が付いている。

それでも笑っている。

サイタマタマ「火力、前より上がったね!」

ジェノス「当たり前だ!!」

踏み込む。

再び炎。

今度はサイタマタマも前へ出た。

拳と拳。

ドォン!!

衝撃が舞台を走る。

ジェノス「っ!」

初めてジェノスの方が押された。

カズキ「……?」

何かがおかしい。

さっきより。

強い。

ジェノスも気づいたらしい。

一度距離を取る。

ジェノス「…………」

サイタマタマ「どうした?」

ジェノス「また、それかよ」

カズキ「?」

ひっかるん「何?」

ジェノスが拳を握り直した。

ジェノス「本当に面倒くさいな、その身体!」

サイタマタマ「褒めてる?」

ジェノス「褒めてない!」

サイタマタマの身体には、すでにいくつもの傷がある。

頬。

腕。

腹部。

ジェノスの炎と拳を何度も受けた。

傷は消えていない。

血も流れている。

それなのに。

動きが速くなっている。

拳も重くなっている。

カズキ「……もしかして」

ひっかるん「傷つけば傷つくほど……?」

カズキ「強くなってる?」

サイタマタマが踏み込む。

ジェノス「!」

速い。

ジェノスが腕で受ける。

ドンッ!!

カズキ「うわっ!」

ジェノスの身体が大きく後ろへ飛ばされた。

着地。

すぐに炎を噴かせて姿勢を戻す。

ジェノス「やっぱり……!」

サイタマタマ「まだまだ!」

ジェノス「嬉しそうにすんな!」

また拳。

ジェノスがかわす。

横から蹴り。

防ぐ。

重い。

ジェノス「ぐっ……!」

サイタマタマ「どうした!」

ジェノス「うるさい!」

炎。

ドンッ!!

互いの拳がぶつかる。

炎が広がる。

その中から先に飛び出したのはサイタマタマだった。

ジェノス「っ!」

腹へ一撃。

ドゴッ!!

ジェノス「ぐ……!」

膝が落ちる。

サイタマタマ「ジェノス!」

ジェノス「まだだ!!」

低い姿勢から炎。

拳が跳ね上がる。

サイタマタマの顎を捉えた。

ドン!!

サイタマタマ「っ!」

後退。

ジェノスも腹を押さえながら立ち上がる。

観客席から大歓声。

maro『殴る!! 殴る!! 殴る!! 兄弟とは思えない遠慮のなさァァァ!!』

ジェノス「当たり前だ!」

サイタマタマ「大会だからな!」

maro『本人たちも認めたァァァ!!』

カズキ「いや、仲良いな……」

ひっかるん「戦ってる時までね」

ジェノスは肩で息をしながら、サイタマタマを見る。

兄の傷は増えている。

そして。

やはり、強くなっている。

ジェノス「…………」

このまま攻撃を当て続ける。

その度に。

強くなる。

なら。

ジェノス「強くなりきる前に――」

両手に炎が集まる。

サイタマタマ「!」

ジェノス「倒すしかねぇ!!」

炎が一気に膨れ上がった。

カズキ「でか……!」

今までとは違う。

拳に纏わせる炎でもない。

加速に使う小さな爆発でもない。

ジェノスの周囲そのものが、赤く染まる。

サイタマタマ「来い!」

ジェノス「言われなくても!!」

踏み込む。

背中。

脚。

同時に炎が爆発する。

ジェノスの身体が弾丸のように飛び出した。

サイタマタマも拳を構える。

ジェノス「これで――」

炎が拳へ集まる。

ジェノス「終わりだぁぁぁぁ!!」

サイタマタマ「来い!!」

ジェノス「――爆炎!!」

ドォォォォォォォン!!

巨大な爆発。

舞台全体が炎に包まれた。

カズキ「ジェノス!!」

ひっかるん「見えない!」

魔導障壁へ炎がぶつかり、赤い光が闘技場を照らす。

観客席から悲鳴にも似た歓声が上がる。

煙。

炎。

何も見えない。

しばらくして、少しずつ煙が晴れていった。

最初に見えたのは。

ジェノス。

片膝をついている。

ジェノス「はぁ……はぁ……」

全力。

間違いなく。

出し切った。

そして。

その正面。

カズキ「……え?」

影。

煙の中から。

一人の男が歩いてくる。

サイタマタマ「…………」

服は焦げ。

身体中に傷が増え。

額からも血が流れている。

明らかに無傷ではない。

むしろ。

今までで一番傷ついている。

サイタマタマ「…………」

ジェノス「……マジかよ」

サイタマタマ「…………めちゃくちゃ」

一歩。

ジェノス「……?」

サイタマタマ「痛い!!」

ジェノス「そこ!?」

サイタマタマ「めちゃくちゃ痛いぞ今の!!」

ジェノス「だったら倒れろよ!!」

サイタマタマ「でも!」

拳を握る。

ジェノスの表情が変わる。

サイタマタマ「その分――」

踏み込んだ。

カズキ「!」

速い。

今までで。

一番。

ジェノス「っ!!」

咄嗟に腕を上げる。

サイタマタマ「強くなってる!!」

拳。

ドォン!!

ジェノスの身体が吹き飛んだ。

舞台を何度も転がり、止まる。

ジェノス「…………」

起き上がろうとする。

腕に力を入れる。

しかし。

ジェノス「……くそ」

力が入らない。

審判が駆け寄る。

状態を確認する。

数秒。

そして。

腕を上げた。

審判「戦闘不能!」

大歓声。

審判「勝者――サイタマタマ!!」

maro『決着ゥゥゥゥゥ!!』

maro『弟ジェノス!! 大爆炎で兄を追い詰めた!! しかし最後に立っていたのは――兄!!』

maro『サイタマタマァァァァァ!!』

歓声の中。

サイタマタマはすぐにジェノスのところへ歩いた。

サイタマタマ「ジェノス」

ジェノス「…………」

サイタマタマ「大丈夫?」

ジェノス「……負けた相手に聞かれると腹立つ」

サイタマタマ「じゃあ聞かない!」

ジェノス「そこは聞けよ!」

サイタマタマ「どっちだよ!」

ジェノスは仰向けのまま、小さく笑った。

サイタマタマも笑う。

そして、手を差し出した。

ジェノスはその手を見る。

少しだけ黙ってから。

握る。

サイタマタマが引き起こす。

ジェノス「……強かった」

サイタマタマ「お前もな」

ジェノス「次は勝つ」

サイタマタマ「待ってる」

一度だけ拳を合わせる。

その直後。

サイタマタマ「でも本当に火力上がったな!」

ジェノス「……」

サイタマタマ「めちゃくちゃ痛かった!」

ジェノス「……」

サイタマタマ「ただ、パンチはもうちょっと鍛えた方がいいかも」

ジェノス「うるせぇ……!」

観客席から笑い声が上がった。

カズキ「最後まで兄ちゃんだな」

ひっかるん「ジェノス怒ってるけど嬉しそう」

カズキ「あとで言ってやろ」

ひっかるん「絶対怒られるよ」

カズキ「やめとく」

二人が舞台を降りる。

そして。

巨大な魔導掲示板が光った。

maro『これにて――!!』

会場が静かになる。

maro『二回戦!! 全十六試合!!』

一人ずつ。

名前が表示される。

ハイドラグーン。

けい。

たたたつ。

フードの男。

さくらもち。

yuki。

ゆかマキ。

せきりゅう。

メイビス。

あぶらメンタル。

まくらZ。

ひっかるん。

ゆうや。

ディーナ。

カズキ。

サイタマタマ。

maro『以上十六名!! 三回戦進出決定だァァァァァァ!!』

闘技場が揺れた。

カズキ「…………」

自分の名前がある。

十六人の中に。

地方予選。

最後の九人まで残った。

けれど。

負けた。

本来なら、自分はここにいなかった。

あの剣士が辞退してくれなければ、本戦にすら出られていない。

一回戦。

初めて、自分の力で勝った。

二回戦。

今度は分からないものを、自分で見て、自分で考えて。

勝った。

カズキ「……二回」

ひっかるん「何が?」

カズキ「俺、自分で二回勝ったんだな」

ひっかるん「今さら?」

カズキ「いや……なんか」

掲示板を見る。

カズキ「ちょっと実感なくて」

ひっかるん「三回戦だよ」

カズキ「うん」

ひっかるん「ベスト16」

カズキ「……うん」

ひっかるん「僕もいるけど」

カズキ「知ってるよ!」

ひっかるん「忘れられてるかと思った」

カズキ「忘れるか!」

その時。

ジェノスが戻ってきた。

カズキ「ジェノス!」

ジェノス「……負けた」

カズキ「見てた」

ジェノス「次は勝つ」

カズキ「次?」

ジェノス「次の大会でもなんでも」

カズキ「気が早いな」

ジェノス「負けたままで終われるか」

カズキ「そっか」

ジェノス「お前はまだ残ってるんだから、俺の分まで勝てよ」

カズキ「急に重いな!」

ジェノス「冗談だ」

カズキ「冗談なの!?」

ジェノス「でも勝て」

カズキ「結局言うのかよ!」

三人で笑う。

少し離れたところでは、サイタマタマが治療担当に傷を確認されながら、それでも元気に手を振っていた。

サイタマタマ「カズキー! 三回戦で当たったらよろしくなー!」

カズキ「その身体で元気すぎるだろ!」

治療担当「動かないでください!」

サイタマタマ「はい!」

ジェノス「怒られてる」

ひっかるん「子供みたい」

ジェノス「兄ちゃんだからな」

カズキ「それ理由になってないって」

再び掲示板へ視線を戻す。

十六人。

ハイドラグーン。

けい。

フードの男。

まくらZ。

あぶらメンタル。

ディーナ。

yuki。

そして、ここまで勝ち上がった他の強者たち。

誰と当たるのかは、まだ分からない。

ただ。

その中の一人。

yuki。

カズキの視線が、その名前で少し止まった。

二回戦。

マリンを相手にした戦い。

広い舞台を一気に凍らせ、逃げ道まで奪っていった圧倒的な魔法。

カズキ「…………」

同じ十六人。

自分も。

そこにいる。

ジェノス「どうした?」

カズキ「いや」

少しだけ笑う。

カズキ「強い人ばっかりだなって」

ひっかるん「今さら?」

カズキ「今日それ二回目!」

ひっかるん「だって本当に今さらだし」

カズキ「でもさ」

掲示板を見る。

十六の名前。

その中にある、自分の名前。

怖くないと言えば嘘になる。

誰と戦っても簡単には勝てない。

むしろ、自分より強そうな相手ばかりだ。

それでも。

カズキ「……楽しみだな」

ジェノス「…………」

ひっかるん「うん」

ジェノスも少しだけ笑う。

六十四人で始まった本戦は、三十二人となり。

そして今。

ついに十六人まで絞られた。

けれど。

戦いはまだ終わらない。

ここから先は。

さらに強い者だけが残っていく。

カズキは巨大な舞台を見つめた。

次にここへ立つ時。

自分の前には。

誰がいるのか。

その答えを、まだ誰も知らない。

六十四人で始まった本戦は。

ついに――十六人。

戦いは、さらにその先へ進む。

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ついてるこ

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YouTubeでvtuberをしています! 視聴者参加型小説をAIに作成していただき、ボクも視聴者様と一緒に楽しんでいきたいです!

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