【 24番外】台のめじるし
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
昼を少し過ぎたころ、時環遊技場には、いつもの遊技音が響いていた。
古い台から流れる玉の音。その合間に、客同士の話し声が聞こえる。人間も、ロボットも、アンドロイドも、思い思いに台へ向かっている。
昼食の時間が近づくと、そんな店内から少しずつ人の姿が減っていく。
長く席を離れる客の台には、店主か従業員アンドロイドが専用の休憩札を差す。ほんの数分だけなら、上皿に玉を残し、台カウンターのドル箱もそのまま。中には、その横に飲み物や私物を置いていく客もいた。
店主はそんな台を眺めながら、店内を歩いていた。
「今日も変わったものを置いていきますねぇ」
最初に目に入ったのは、透明な容器だった。
青や紫の光が、深海の生き物のようにゆっくりと揺らめいている。未来の飲み物、マーブルだ。
その台から、RB-4176が立ち上がった。
「店主ー、俺ら飯行ってくるわ」
後ろではCL-2083もすでに席を立っている。
「今日新しい店、見つけたんだよ」
食べ歩きが趣味の二人らしい。
「またですか」
店主が笑うと、RB-4176は「だって仕事で街中回ってると、いろいろ見つけるんだよね」と肩をすくめた。都市インフラの巡回保守をしている彼にとって、街を歩き回ることは仕事であり、同時に新しい店を探す時間でもある。
「CLがもう調べてんの」
「そりゃ調べるでしょ」
CL-2083は楽しそうに答えた。
食品データの収集と評価が仕事の彼は、新しい店を見つければ、味や香りだけでなく、提供時間や温度の変化まで気になってしまう。
「せっかくなら、うまい店がいいじゃん」
「まあ、それはそうですねぇ」
二人の台に、店主が休憩札を差す。
「では、ごゆっくりどうぞ」
「サンキュー、店主」
二人が店を出ていくと、店主は台カウンターに残されたマーブルへ目を向けた。
透明な容器の中で、青や紫の光が静かに揺れている。
「きれいですねぇ」
そう呟いて、店主は再び歩き始めた。
少し先の台には、透明なフロッピーディスク型の板が置かれていた。
データフードと呼ばれる商品だ。
食事を必要としないロボットたちにも食事を楽しんでもらえるよう、開発されたものらしい。表面には、新商品・期間限定の文字とともに、商品名が浮かび上がっていた。
『灼熱MaG魔監修 獄辛麺『地獄味』 辛さレベル200万ver.』
「……これは、ずいぶん辛そうですねぇ」
店主が眺めていると、持ち主らしいロボットが戻ってきた。
「あ、それ気になりました?」
「ええ。新商品なんですね」
「そうそう。期間限定。『地獄』味っていうくらいだから、めちゃくちゃ辛いらしいんですよ」
ロボットは嬉しそうだった。
「ちょっと食べてみようと思って」
「では、お召し上がりになるのはお帰りになってからですねぇ」
「もちろん。ここで食べたら、台どころじゃなくなるし」
そう言って、ロボットはデータフードを手に取った。
「じゃ、もうちょっと打ってから帰ります」
「はい。ごゆっくりどうぞ」
ロボットが席へ戻る。
店主もそのまま歩を進めた。
次の台では、小型のドローンが台カウンターの上で静かに浮いていた。ドル箱の横で一定の高さを保ち、側面には小さくPLAYINGの文字が浮かんでいる。
「これは分かりやすいですねぇ」
そうして眺めていると、少し離れたところから人間の男性客が戻ってきた。
男性は自分の台へ戻ると、二の腕に装着した小型の装置へ手をかざした。
するとドローンがすっと浮き上がり、男性の腕へ飛んでいく。そのまま二の腕の装置へ、ぴたりと収まった。
「お、ちゃんと待ってたな」
男性はそう言って、何事もなかったように席へ戻る。
「なるほど。あれが目印だったんですねぇ」
「飲み物買いに行く間くらいなら、こいつに任せてます」
「便利ですねぇ」
男性は笑い、再びハンドルを握った。
玉が盤面へ弾き出される。
店主もまた、店内を歩いていく。
その隣の台には、今度は黒い金属製の電子スモークマシンが置かれていた。
フレーバーの付いた蒸気を楽しむデバイスで、小型ながら、妙にいかつい。
表面から数ミリ浮くように、文字が表示されている。
『ZAKURO MELON』
「うわー……かっこいいなぁ」
上皿には玉が残り、台カウンターにはドル箱。その横に、いかつい機械が置かれている。
「これも目印なんですねぇ」
店主は少し眺めてから、その場を離れた。
店内では、相変わらず玉の音が続いている。
短い離席から戻ってくる客。従業員アンドロイドが休憩札を差す台。黙々と遊技を続ける客。そんな光景の中に、置かれた私物も自然に馴染んでいた。
やがて、入口からRB-4176とCL-2083が戻ってきた。
「ただいまー」
「いやー、食った食った」
二人が自分たちの台へ戻るのを確認して、店主が休憩札を外す。
「おかえりなさい。お食事はいかがでした?」
「当たりだったよ」
RB-4176が満足そうに笑った。
「新しい店、ちゃんとうまかった」
「提供も早かったし、温度も良かったよ」
CL-2083も満足そうだ。
「もう次の店を探してたりしません?」
店主が冗談めかして言うと、RB-4176が笑う。
「もちろん」
二人はそれぞれの台へ戻った。
RB-4176は台カウンターに置いていたマーブルを手に取る。
「お、まだ光ってる」
「それ、限定なんだっけ?」
CL-2083が覗き込む。
「そう。新しいやつ」
「じゃあ、あとでデータ取らせてよ」
「ま〜た仕事モード」
「いいじゃん。せっかくだし」
「はいはい。まずは打とうぜ」
「それな」
二人は笑いながら、それぞれの台へ戻った。再び、二人の台から玉の音が響き始める。
店主は少し離れたところから、その様子を眺めた。
台カウンターにはドル箱。
その横には、深海生物のように光るマーブル。
期間限定の激辛データフード。
静かに浮かぶドローン。
そして、ZAKURO MELON味の電子スモークマシン。
台カウンターに置かれるものも、時代とともに変わった。
けれど、少し席を離れるとき、自分の台がまだ遊技中だと分かるように、何かを残していく。
そんなところは、今も変わらない。
店主は小さく笑った。
「こういうところにも、時代が出ますねぇ」
玉の音が、また店内に広がっていった。
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。