【25番外】 ポップアート
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
その日の開店前、時環遊技場の入口では、店主と従業員アンドロイドが何やら作業をしていた。昨日から続いていた作業が、ようやく終わったらしい。
「お、完成したのか」
最初に気づいた常連が、入口で足を止めた。
そこに立てられていたのは、一枚のPOPだった。描かれていたのは、巨大なパチンコ玉。丸い身体から、妙に力強い手足が伸びている。その玉がパチンコ台の前に座り、小さな手でハンドルを握っていた。
隣には風車。その向こうには、なぜか猛獣までいる。
「……玉に足が生えてる」
「しかも、パチンコ打ってるじゃない」
後から来た常連も絵を覗き込み、首を傾げた。
「なんで玉がパチンコしてるんだ?」
「自分が玉なのにねえ」
常連ロボットまで加わり、しばらく絵を眺めている。
「店主。この猛獣には、何か意味があるのでしょうか」
「猛獣ですから、猛獣らしくしてもらおうかと」
「……なるほど?」
「はい」
店主は楽しそうに笑った。
「描いていたら、ここにいると楽しいかな〜、と思いまして」
あまりにも素直な答えに、常連たちは顔を見合わせた。
「そういう理由なのか……」
「まあ、変だけど……嫌いじゃないな」
「うん。玉が妙にかわいい」
そんな声を聞いて、店主は少し得意そうに頷いた。
それから一日、POPは何度も常連たちの話題になった。台を打ちながら入口の絵を思い出して笑う者もいれば、帰り際にわざわざ見に行く者もいる。
「明日もこの玉、いるかな」
そんな冗談を残して、みんな帰っていった。
翌朝。入口のPOPを見た常連客が、足を止めた。
「……あれ?」
昨日と同じ場所に、同じ絵がある。風車もいる。猛獣もいる。
ただ、中央にいたはずの巨大なパチンコ玉のイラストだけが消えていた。
「昨日、ここにいたよな?」
「いました」
常連ロボットが即答する。
「間違いない?」
「昨日、写真を撮りました」
「撮ったのかよ」
写真を確認すると、やはり昨日の絵には巨大な玉が描かれている。ならば、どこへ行ったのか。
そのとき、店の奥からパチン、と音がした。
もう一度。
パチン。
何人かが顔を見合わせ、音の聞こえてくる奥の島へ向かった。
そこには――昨日までPOPの中にいた巨大なパチンコ玉がいた。
大きな身体を椅子に収め、短い手でハンドルを握っている。笑顔のまま盤面を見つめ、普通の客と同じように遊技を続けていた。
常連たちは、しばらく何も言えなかった。
やがて一人が、店主を振り返る。
「……店主。これ、どういうこと?」
店主は巨大な玉を眺め、少し考えてから答えた。
「パチンコが好きなんじゃないでしょうか」
「そういう問題じゃないんだよ」
玉がこちらをちらりと見た。
そして何事もなかったように、また盤面へ向き直る。
店主は楽しそうに笑った。
「楽しそうですねえ」
「店主、楽しんでる場合じゃないって」
その頃、入口では別の異変が起きていた。
戻ってみると、今度はPOPから風車が消えている。
「……まさか」
誰かが呟いた直後、別の島から何かが回転する音が聞こえてきた。
そこには風車がいた。
ぐるぐる回りながら、器用にハンドルを握っている。
「……回りながら打つんだ」
「風車ですからねえ」
「それ、関係ある?」
「あるかもしれません」
店主が真顔で答えるので、誰もそれ以上は言えなかった。
そして午後になると、猛獣までPOPから消えた。
もう驚くより先に、常連たちは店内を探し始めた。ほどなくして、奥から大きな足音が響いてくる。
猛獣だ。ゆっくりと通路を歩き、別の島へ向かうと、何事もなかったように台の前へ座った。
巨大な身体と小さなパチンコ台。どう考えても釣り合っていない。
「……なんでパチンコ打ってるんだろう」
「昨日のPOPに、そう描きましたから」
「それを言ったら終わりだろ」
それから閉店まで、三つのキャラクターは好きなように店内を動き回った。
巨大な玉は台から台へ移動し、風車は回り続け、猛獣は黙々と遊技する。最初こそ落ち着かなかった常連たちも、次第にそれを眺めることに慣れていった。
ただ、巨大な玉とすれ違うたびに、
「……やっぱりデカいな」
と、誰かが呟いた。
やがて閉店の時間になり、店内に蛍の光が流れ始める。
三つのキャラクターは、それぞれ遊技を終えた。
巨大な玉が入口へ向かう。風車も回転を止め、その後ろについてくる。猛獣もゆっくりと歩いてきた。
いつの間にか、それに気づいた常連たちも入口へ集まっている。
「戻るのかな」
「どうやって?」
「さあ……」
三つのキャラクターは、POPの前で立ち止まった。
巨大な玉が紙にそっと触れる。すると、その身体がふっと薄くなった。
風車も、猛獣も続く。まるで最初からそこに描かれていた絵だったかのように、三つの姿が紙の中へ吸い込まれていった。
常連たちは、黙ってその様子を見ていた。
「……あれ?」
誰かが声を上げた。POPの絵が変わっている。
巨大なパチンコ玉は、両手でドル箱を抱えていた。その顔は、昨日よりずっと嬉しそうだ。そして、片手を上げて――ピースサイン。
隣では風車が楽しそうに回り、猛獣も満足そうな顔をしている。
集まった常連たちは、しばらくその絵を眺めていた。
「……勝ったんだな」
誰かが、ぽつりと言った。
「でしょうねえ」
店主もPOPを眺めながら笑った。
「店主」
「はい?」
「これ、明日になったらまた変わってたりしないよな?」
店主はPOPを見上げた。
「どうでしょう」
そう言って、楽しそうに笑う。
POPの中では、巨大なパチンコ玉がドル箱を抱えたまま、ずっとピースをしていた。
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