【28番外】 定休日に営業中
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
その日は、時環遊技場の定休日だった。
知らずにやってきた客が、閉まったシャッターの前で足を止めた。
「……休みか」
残念そうに振り返ったとき、向かいの古い建物に明かりがついていることに気づいた。
以前は古い遊技場だった建物だ。入口には、見慣れない看板が掛かっている。
『レトロゲームセンター』
その横に、小さな案内が出ていた。
『営業日のお知らせ
当ゲームセンターは、時環遊技場の定休日に営業する場合があります。 時環遊技場 店主』
「……なんだ、これ」
客は建物へ近づき、扉を開ける。中から従業員アンドロイドが顔を出した。
「いらっしゃいませ。当店はゲームセンターとして営業しております」
「ゲームセンター?」
「はい。入場料をお支払いいただければ、閉店まで自由に遊んでいただけます」
思いがけない説明に、客は少し驚いたが、せっかくなので中へ入ってみることにした。
足を踏み入れた瞬間、懐かしい機械音が耳に入ってきた。
古いアーケードゲーム。十円ゲーム。エレメカ。そして、昔の遊技場をそのまま残したようなパチンコ島。
「……え?」
客は思わず立ち止まった。並んでいる台を見て、さらに目を見開く。
時環遊技場にも古い台は多い。だが、ここに並んでいるものは顔ぶれがまったく違っていた。
しかも、その中には現存していること自体が珍しい台まである。
一台の前で、客の足が止まった。
「……うそだろ」
盤面を覗き込む。昔、どこかで見た記憶だけが残っているような台だった。
「これ……まだあったの?」
思わず端末を取り出す。一枚。二枚。写真を撮る。そして、その日のうちにSNSへ投稿した。
『時環遊技場の向かいに、いつの間にかレトロゲームセンターができてる!』
続けて、店内の写真を何枚か載せる。
『しかも、なんだこの台。激レアすぎる!!』
投稿についた反応は、予想以上だった。
『これ、まだ残ってたの!?』
『現存してるの?』
『どこ!?』
『他にもある?』
珍しい台の写真が次々と拡散されていく。
そして次の定休日。
開店前から、ゲームセンターの前には人が並んでいた。
「本当にあるんだ……」
「写真で見た台、絶対に打ちたい!」
人間の客に混じって、アンドロイドやロボットの姿もある。時環遊技場の常連客もいた。
「昨日SNSで見たんだけど、なんか、とんでもない台があるらしいな」
「店主、いつの間にこんなの集めたんだよ……」
開店すると、客たちは次々と店内へ入っていった。
そして、パチンコ島に並んだ台を見た瞬間、あちこちで声が上がる。
「うそだろ。これ……現存してたの?」
「ちょっと待て。なんでここにあるんだ!?」
「この台、もう残ってないと思ってたぞ!」
時環遊技場にも古い台は多い。しかし、こちらのラインナップはまったく違う。
珍しいどころか、ほとんど幻のような台まで混じっている。
その中の一台の前で、一体のロボットが突然立ち止まった。
「…………」
動かず、台をじっと見つめている。頭部のランプが、ひとつ、またひとつと点滅し始めた。
「激レア台ガ、アルゾ!!」
突然の大声に、周囲の客が振り返った。
「コレハ……現存台数ガ……推定……いや、待て、データベースニ記録ガ……」
言葉がどんどん速くなっていく。
「アリエナイ。ココニアル。ナゼ。ドウシテ。コレハ……コレハ……!」
頭部から、ぷしゅっと小さな蒸気が上がった。
「デン!!♪処理不能!!」
胸元のディスプレイに、大きな文字が表示される。
再起動中…🌀
「おい、大丈夫か!」
近くにいた別のロボットが肩を叩くが、返事はない。
数秒後。
「……パパーン!ピロロン♪おはようございます」
「そこからかよ!」
店内に笑い声が広がった。
再起動したロボットは、何事もなかったように、もう一度台を見る。
「……激レア台デスネ」
「さっき聞いたよ!」
また笑い声が起こった。
その騒ぎを、少し離れたところから店主が眺めていた。
口元には、楽しそうな笑みが浮かんでいる。
この建物は、もともと閉鎖された古い遊技場だった。
店主は以前から、この場所に残っていた機械や設備を気にかけていた。
そしてある日、この建物ごと引き取り、ゲームセンターとして再び使うことにした。
この日は、そのゲームセンターの営業初日だった。
古い建物の雰囲気は、できるだけ残した。
パチンコ台も、玉場も、島の設備も、使えるものは修理してそのまま使っている。
ただし、電気や空調、照明などは別だった。
未来都市から正式な営業許可も取得している。入口の一角には、その許可証がホログラムで表示されていた。営業許可証には事業者名、営業区分、許可番号などが並び、その下には、有効期限:∞と表示されている。
「有効期限、無限なんですね」
客が珍しそうに眺めると、店主は穏やかに笑った。
「ええ。都市からとても特別な許可を頂きました」
古いものは古いまま。けれど、直すために使える技術は惜しまない。
そして、必要な許可もきちんと取る。それが店主のやり方だった。
店内では、別の光景も広がっていた。両親と遊びに来た小さな子どもが、古いパチンコ台の前に立っている。
「これ、なに?」
子どもが台を見上げた。
「昔のパチンコですよ」
店主が答えた。
「これがパチンコなの?」
「ええ。ここを回すと玉が出てきます」
店主がハンドルを回す。
玉が盤面へ送り出され、釘の間を抜けていく。風車に当たり、玉の進む方向が変わった。
「わあ!」
子どもの目が輝いた。
「玉が動いた!」
「昔の機械は、こうして玉の動きを見ながら遊んだのですよ」
子どもは何度もハンドルを回した。
その少し先では、別の子どもが羽根モノに夢中になっている。
さらに奥では、アーケードゲームや十円ゲーム、エレメカに人が集まっていた。
エレメカの中には、ゲームセンター向けに調整されたものもある。
景品やメダルが出る仕組みはなくなっているが、昔の音や動きはそのままだ。
パチンコで遊んでいた客が、台の前を離れた。手元には、遊び終えた玉が残っている。
店内の一角には、昔の遊技場で使われていたジェットカウンターが置かれていた。
客は玉の入った箱を持ち上げ、ジェットカウンターへ向かう。
箱を傾けると、銀色の玉がカラカラと音を立てながらカウンターの中へ吸い込まれていく。表示された数字が増えていき、やがて玉の流れが止まった。
客は表示された玉数を確認し、カウンター横の発行ボタンを押した。
小さな音とともにレシートが吐き出される。
レシートには、日付と時間、玉数の他に、『84B2 516C 82F1』と印字されていた。
客はレシートを大切そうに財布にしまった。
「動いた!」
「すごい!」
あちこちから歓声が上がる。
大人たちは懐かしそうに眺め、子どもたちは初めて見る機械に夢中になる。
ロボットもアンドロイドも、それぞれ気になるゲームの前から離れようとしない。
店主は、そんな光景を少し離れたところから眺めていた。
子どもたちが昔のゲームを楽しんでいる。それが嬉しかった。
未来の時代に生まれた子どもたちにも、昔の機械で遊ぶ機会があっていい。
そのために、この場所を作った。
そして、もう一つ。
店主の手元には、小さな端末がある。
そこには、今日どの台に人が集まったのかが記録されていた。
どの機械の前で足を止めたのか。どの台に何度も戻ってきたのか。
どの台を見つけた瞬間、目を輝かせたのか。もちろん、あのロボットのような反応も。
店主は一つずつ確認していた。
「……こちらも、なかなか参考になりますねぇ」
口元が緩む。
どうやら、次に時環遊技場へ迎える台を考える材料にもなりそうだった。
その姿を、従業員アンドロイドが見つけた。
「店主、楽しそうですね」
「ええ」
店主は端末から顔を上げた。隠しきれない笑みが浮かんでいる。
子どもたちに昔の遊びを体験してもらう。それは、このゲームセンターを開いた本当の理由だ。
そしてもう一つ。
今日の人気台を眺めながら、次に時環遊技場へ迎える一台を考える。
それもまた、店主にとっては同じくらい楽しいことだった。
店内では、また一台の古いゲームが動き出した。
「おおっ!」
歓声が上がる。
その声を聞きながら、店主は端末を眺め、またニヤリと笑った。
定休日にだけ開くゲームセンター。
どうやら一番楽しんでいるのは、そこを作った本人なのかもしれない。
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