【32番外】時環遊技場ジャンジャン便の表紙画像

【32番外】時環遊技場ジャンジャン便

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/6 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,042文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

閉店後の時環遊技場は、昼間とは違う静けさに包まれていた。

遊技を終えたパチンコ台のランプは消え、店内に響いていた玉の音もない。壁際の水槽では、五匹のホログラムメダカだけが、いつもと変わらず水のない空間を泳いでいる。

店主はカウンターの内側で、個人用端末を眺めていた。画面には、冊子を模した編集画面が開かれている。表紙の中央には、まだ新しいタイトルが表示されていた。

『時環遊技場 ジャンジャン便』

店主はその文字をしばらく眺め、それから小さく頷いた。

「……この名前で、いいかな」

《問題ありません。創刊号として登録できます》

端末に入っている編集支援AIが応じる。

「では、これでお願いします」

店主は最初の記事の編集画面を開いた。

「まずは、パチンコの記事ですね」

《『今月の一台』を設定します》

「それから、昔のパチンコ用語もお願いします」

《初心者にも分かる内容にします》

「ありがとうございます。読んでいるうちに、昔のパチンコに少し詳しくなっていただけるといいですね」

画面に二つの記事が並んだ。

『今月の一台』

『ちょっと昔のパチンコ用語』

店主は満足そうに眺めたあと、ふと思いついたように別のページを開いた。

「私が好きな台も、紹介してみましょうか」

《店主おすすめの遊技台ですね》

「はい。こちらです」

台の情報を入力すると、AIがデータベースを検索し始めた。

少しして、画面に確認メッセージが表示される。

《……非常に希少な遊技台です》

「そうなんですよ」

《現在確認されている個体は極めて少数です》

「面白い台なんですけどねぇ」

《一般の読者が実際に遊技できる機会は少ないと思われます》

「ですから、紹介しておこうと思いまして」

《承知しました》

記事のタイトルが表示された。

『店主が好きな台』

「これでお願いします」

次に店主が開いたのは、食べ物の記事だった。

「データフードの新商品も、載せましょうか」

《今月発売された新商品を紹介します》

「はい。最近は面白いものが多いですからね」

画面に、いくつもの商品情報が並んだ。

透明なフロッピーディスクほどの大きさをしたデータフード。その小さな媒体から展開される料理は、温度も香りも、重さも質感も本物と変わらない。人間が食べても、ロボットが食べてもいい。

店主は一覧を眺め、その中から一つを選んだ。

「これは美味しかったですよ」

《店主による試食評価を掲載しますか?》

「そこまで大げさでなくて結構です。食べた感想を少しだけお願いします」

《承知しました》

新しい記事が加わった。

『今月の新発売データフード』

「それから、従業員にも聞いてみましょう」

《おすすめのデータフードについてですか?》

「ええ。最近、何か気に入っているものがあるか聞いてみたいんです」

ちょうどそのとき、片付けを終えた従業員アンドロイドがカウンターの前を通った。

店主が声をかけると、従業員アンドロイドは足を止めた。

最近気に入っているデータフードを尋ねると、商品名が返ってくる。

「なるほど。では、それも紹介させていただきましょう」

《記事タイトルはいかがしますか?》

店主は少し考えた。

「そうですね……『従業員アンドロイドの今月こればっかり』でお願いします」

《少々くだけた表現ですが》

「たまには、こういう記事があってもいいでしょう」

《承知しました》

画面に記事が追加された。ほかにも、映画や漫画、昔の機械についての記事を加えていく。パチンコとは直接関係のない記事も多い。それでも店主は気にしていなかった。

最後に残った空白のページを眺める。

「こちらは、どうしましょうか」

《自由記事欄として使用できます》

「何か、今月の店内で変わったことはありましたか?」

《記録を検索します》

画面に、いくつかの出来事が表示された。

営業時間外に羽根モノの役物が動いたこと。

ホログラムメダカが巨大化したこと。

店内設備が妙なおすすめを始めたこと。

店主は画面を眺めながら、少し笑った。

「……これは、記事にしてもいいですね」

《三件とも掲載しますか?》

「ええ。『今月のヘンテコ』という欄にしましょう」

《承知しました》

記事タイトルが表示された。

『今月のヘンテコ』

店主は完成したページを最初から眺めていった。

「……ずいぶん色々入っていますね」

《統一されたテーマは確認できません》

「そうですね」

店主は苦笑した。

「でも、こういうほうが面白いかもしれません」

《創刊号として発行しますか?》

「お願いします」

送信ボタンに触れる。

その瞬間、店内のホログラム広告が一斉に切り替わった。

入口。休憩スペース。カウンター脇。店内のあちこちに、『時環遊技場 ジャンジャン便 創刊号』の表紙が浮かび上がる。

翌日の昼。

最初に気づいた客が、休憩スペースのホログラム冊子を覗き込んだ。

「なんだ、これ?」

表紙に触れると、ページが開いた。

「『今月の一台』……」

次のページをめくる。

「『ちょっと昔のパチンコ用語』?」

さらにめくったところで、客の手が止まった。

「……映画?」

後ろから別の客が覗き込む。

「何それ?」

「店の情報紙みたいだよ」

「へえ」

二人でページをめくっていく。

「漫画もある」

「パチンコ屋だよな、ここ」

「そうだよ」

「じゃあ、なんで漫画?」

「さあ?」

さらにページをめくる。

『今月の新発売データフード』

『石窯焼きマルゲリータ』透明なディスクから展開すると、焼きたてのピザが現れる。チーズの伸び方まで再現されており、取り出した直後はちゃんと熱い。

「お、新商品だ」

「これ、食べた?」

「まだ」

「じゃあ、今度食べてみようかな」

その声を聞いて、別の客も寄ってくる。

「何を見てるんです?」

「新しいやつ」

「へえ」

三人で画面を覗き込む。

やがて、『店主が好きな台』のページが開かれた。

「……これ、ものすごく珍しい台じゃない?」

「知ってるんですか?」

「名前だけは。実物を見たことはないな」

「店主さん、こういう台が好きなんだ」

さらにページをめくる。

『従業員アンドロイドの今月こればっかり』

今月、従業員アンドロイドが気に入っているのは「タンドリー風焼きプリン・マサラ仕立て」「スパイシーで美味しい」とのこと。

「これ、そんなに美味しいの?」

ちょうど近くを通った従業員アンドロイドが足を止めた。

「おすすめです」

「そんなに?」

「はい。大変気に入っております」

「何日くらい食べてるの?」

「15日目です」

客たちから笑いが起こった。

「本当にこればっかりじゃん」

従業員アンドロイドは、特に否定しなかった。

休憩スペースには、少しずつ客が集まり始めていた。

パチンコの記事を読む人。

データフードの記事を読む人。

漫画から先に読む人。

なぜかメダカ観察記だけを読む人。

それぞれが好きなページを開いている。

カウンターの奥で、店主の端末が小さく通知音を鳴らした。

《創刊号の閲覧数が増加しています》

「そうですか」

《最も閲覧されている記事は、『従業員アンドロイドの今月こればっかり』です》

店主は従業員アンドロイドのほうへ目を向けた。

「人気ですね」

「ありがとうございます」

《次点は『店主が好きな台』です》

「こちらも読んでいただいているんですね」

《はい》

「それは嬉しいですね」

《三位は『今月の新発売データフード』です》

店主は満足そうに頷いた。

「なるほど。次も、色々載せてみましょうか」

《次号の編集を開始しますか?》

店主は少し驚いた顔をした。

「……もうですか?」

《はい》

「では、少しだけ考えておきましょう」

次の「ジャンジャン便」に、何が載ることになるのか。まだ誰も知らない。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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