【 33番外】 壊れたラジオから放送中
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
時環遊技場のカウンターの端に、一台の古いラジオが置かれていた。
それは数ヶ月前、店主が街の中心部にある古物店で見つけてきたものだった。
角の丸い筐体に、いくつものボタンと大きなダイヤル。少し色あせた外装も含めて、いかにも昔のラジオらしい姿をしている。
店主は、開店前になると何度もそのラジオを眺めていた。
「やっぱり、いいなぁ。こういうボタンいっぱいの機械」
隣では従業員アンドロイドが内部を確認している。
「確認しました。電源系統に複数の故障があります。使用されている部品も現在の規格では入手困難です」
「直せそう?」
「完全な修復は困難です。また、仮に修復できたとしても、現在の通信・放送規格には対応していません。旧規格の放送を受信することもできません」
「そっか」
店主は少し残念そうにラジオのダイヤルを撫でた。
けれど、すぐに笑う。
「じゃあ、これはこのまま飾っておこう」
電源の入らないラジオは、カウンターの上に置かれた。
それからしばらくして、開店時間になった。扉が開き、常連客たちが次々と入ってくる。
いつもの席へ向かう者。台を選び始める者。景品コーナーを覗き込む者。
その中には、常連のアンドロイド客と、常連のロボット客の姿もあった。
二人とも特に珍しい様子もなく、それぞれお気に入りの場所へ向かっていく。
店内が少しずつ賑やかになってきた、そのときだった。
カウンターの上から、小さな音がした。
「ザー……」
店主が振り返る。古いラジオのランプが、ぼんやりと点いていた。
「……え?」
従業員アンドロイドもラジオへ近づき、内部をスキャンする。
「……電力供給、ありません」
「じゃあ、今の光は?」
「不明です」
再びラジオから音が流れた。
「ザー……」
そして。
「皆さん〜こんにちは!本日の時環遊技場の情報をお届けいたします!」
店主が目を丸くした。
「……喋った」
店内のあちこちからも、視線が集まる。ラジオは何事もなかったように続けた。
「本日の時環遊技場、ただいまたいへん賑わっております。空いている台は残りわずかとなっておりますので、ご遊技を希望されるお客様は、お早めにどうぞ」
店主はラジオと店内を交互に見る。
「……店の中、ちゃんと見てるねぇ」
「ですが、視覚センサーは確認できません」
「だよねぇ」
ラジオの声には、昔の放送を思わせる丸みがあった。高い音は少し柔らかく、わずかに「ザー……」というノイズが混じる。けれど、声は驚くほどはっきり聞こえた。
「それでは最初のコーナーです」
少し間を置いて、明るい声が響く。
「ウォッチング! 時環遊技場!」
店主の顔が、少し楽しそうになる。
「コーナー始まった」
「番組構成が存在するようです」
「本格的だなぁ」
「現在、一発台コーナー141番台稲妻500では、常連のお客様が非常に集中した表情で遊技されています」
141番台の前を見ると、確かに常連のアンドロイド客が黙々と台を見つめている。
「先ほどから同じ姿勢を維持されています。内部演算によると、現在の思考処理の大部分が遊技に割り当てられているものと思われます」
常連アンドロイドが、ちらりとラジオを見る。
「……そこまで実況する必要はないと思いま〜す」
店内から小さな笑い声が起こった。
ラジオは気にせず続ける。
「続いて、カウンター付近では常連のロボットのお客様が飲み物を片手に、店内全体を眺めております」
カウンター近くのロボット客が、手にした飲み物を持ち上げる。
「本日の観察ポイントは、たいへん賑わっている店内と、いつもと変わらない常連のお客様たちです」
店主が笑う。
「なんだか、店の実況中継みたいだねぇ」
「その認識で問題ないと思われます」
ラジオは少し間を置いた。
「それでは続いて、本日のおすすめ情報です」
軽快な音が一瞬だけ流れる。
「目玉景品PICK! UP!」
景品コーナーの照明が、ぱっと明るくなった。
店主が振り返る。
「そこまで連動するの?」
「確認できません。照明設備との通信経路もありません」
「いやぁ〜不思議だねぇ」
ラジオは楽しそうに景品を紹介していく。
「本日の目玉景品は、昔ながらの懐かしいデザインが魅力の小型ラジオ風置き時計」
「ラジオがラジオを紹介してる……」
店主が思わず吹き出した。
「続いて、昔ながらの丸いデザインが人気の小型家電型インテリア。そして、手のひらサイズのホログラムフラワーもおすすめです」
景品コーナーのホログラムフラワーが、花びらをゆっくり開いた。
「さらに本日は、数量限定の発光キノコ栽培キットもございます」
店主が景品コーナーを見る。
「それ、昨日入れたばっかりなんだけど」
「在庫数も正確です」
「どうやって確認してるんだろうねぇ」
ラジオは最後に、少し声の調子を変えた。
「そして、お飲み物をご注文のお客様へ」
店内の常連客たちが、なんとなく耳を傾ける。
「常連のお客様がいつもご注文される『いつもの』、瓶コーラもただいまシュワシュワキンキンに冷えております!」
「おお〜!」
ロボット客が満足そうに頷いた。
「それは重要な情報だ」
「遊技の合間には、適度な水分補給をお願いいたします」
店主は腕を組みながら、すっかり番組を楽しんでいた。
「いい放送だなぁ」
従業員アンドロイドはラジオを調べ続けている。
「しかし、放送信号の受信は確認できません」
「じゃあ、自分で喋ってるのかな」
「その可能性を示す構造も確認できません」
「じゃあ、誰が喋ってるんだろうねぇ」
ラジオはそんな二人の会話など聞いていないように、次のコーナーへ移った。
「さて、最後のコーナーです」
少しだけ声が低くなる。
「マニアの選ぶ一台」
店主が顔を上げた。
「おっ」
店内の空気も、なんとなく変わった。
「本日ご紹介するのは、羽根モノコーナー125番台にゃんころ探偵団です」
店主が125番台を見る。
「こちらは、盤面の構成が特徴的な一台です。釘の配置、風車の位置、入賞口までの玉の流れに注目すると、より深く楽しむことができます」
「ずいぶん詳しいなぁ」
ラジオはさらに続ける。
「また、中央にあるネコと虫眼鏡の役物に注目。この台ならではの面白い動きが見られます。遊技される際は、ぜひ全体の動きをお楽しみください」
125番台で遊んでいた客が、思わず盤面を見直す。
店主も腕を組んだまま、じっとラジオを眺めていた。
「……マニアって、誰なんだろう」
従業員アンドロイドが答える。
「該当する人物は、店内および周辺区域から確認できません」
「ラジオの中にいるのかな」
「そのような空間は確認できません」
「そっか」
店主は少し考えたあと、楽しそうに笑った。
ラジオは最後に、本日の番組を締めくくる。
「本日の時環遊技場の情報は以上です。皆さん、楽しい時間をお過ごしくださいませ!」
「ザー……」
一瞬だけノイズが入り、放送が止まった。店内には、いつもの遊技音だけが戻ってきた。
店主はカウンターのラジオを眺める。壊れていて、電源もない。放送規格にも対応していない。
それなのに、店の中の様子を正確に知り、景品を紹介し、常連客の『いつもの』まで把握している。
「……面白いなぁ、これ」
従業員アンドロイドは、まだ納得していない。
「原因を調査する必要があります」
店主はラジオのダイヤルを軽く撫でた。
「でも、しばらくは調べなくてもいいんじゃない?」
その瞬間。
「ザー……」
ラジオから、ほんの小さなノイズが聞こえた。
店主が笑う。
「ほら。ラジオもそう言ってる」
「その発言を肯定したという根拠はありません」
「そういうことにしておこうよ!」
そしてその日から、時環遊技場では時々、店内のどこからともなく、昔のラジオのような声が聞こえるようになり、店内に楽しい?情報を流すようになった。
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