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第32話 ライトニング・ブレイブ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

異世界と東京が繋がって35年。区役所「異世界住民課」で働く天野勇は、定時退庁を愛する平凡な公務員。だがある日、テロ事件に巻き込まれ、うっかり「勇者」に選ばれてしまう!  発現した能力は、空間をつなぎ合わせるだけの地味なもの。世間からは「ハズレ勇者」と哂われるが……実は空間操作を駆使した常識破りの最強スキルだった!?  コンビニスイーツ中毒のエルフ聖騎士アイリスと共に、勇は世界の危機と“残業”に立ち向かう! 「僕はただ、定時で帰ってアニメを見たいだけなのに!」  オタク公務員が二つの世界を繋ぐ、現代×異世界ファンタジー! ※本作品は「カクヨム」「あいぺん」にて同時掲載しています。

本文

 アイリスの美しい銀髪が、激しい電磁気によって逆立ち、ブルーの瞳がその圧倒的な光を反射して白銀に輝いていた。

 シルバーエルフとしての頑強な肉体と、これまでの数々の修羅場を潜り抜けてきた彼女の強靭な精神力がなければ、このエネルギーに一瞬で消し炭にされていただろう。

「アマノ殿……! 剣が、剣が私の制御を離れて、勝手に吠えているぞ! これほどまでに凄まじい力が、貴殿の世界には眠っていたというのか!?」

「ただの電気だよ、アイリス! でも、僕たちが磨き上げてきた、科学という名の魔法だ!」

 僕は自分の鼻から流れる血を手の甲で乱暴に拭いながら、必死に境界の接続を維持していた。

 脳みそが過熱して煙が出そうだ。いや、比喩じゃなく、本当に頭皮のあたりが熱い。空間を固定し、超高圧のエネルギーの流れを一本の見えない導線に縛り付ける計算は、脳神経の全領域をすり潰しながら進行している。

「なっ……馬鹿な! 発電所の送電網に直接空間を繋ぐなど、人間の脳ができる次元を超えている!」

 グラハムが狂ったように頭を抱えて叫ぶ。

 ガシャリ、と不気味な金属音が響いた。

「ギギ……ターゲットのエネルギー値、予測最大値を大幅に超過……! 排除、排除ォォォッ!!」

 機甲戦闘人形が、ついにその限界まで溜め込んだ紫色の破壊光線を放った。

 それと同時に、包囲していたドローン群からも一斉に最大出力のレーザーが掃射される。すべての破壊が、僕とアイリスの一点へと収束する。

 だが、僕の隣には、まばゆい光の聖剣を掲げた、最強の相棒がいた。

「アマノ殿! 人形の胸にあるコアだ!」

「了解……! 絶対命中の座標へ!」

 僕は血を吐きながらも、最後の力を振り絞って、アイリスの剣の軌道と、機甲戦闘人形の胸部にあるコアの空間を、狂いなく一直線に繋ぎ合わせた。

「アイリス! 準備はいいかい」

「おおおっ! いつでもいけるぞ、アマノ殿! この溢れんばかりの世界の力、奴の胸のコアごと、一撃で消し飛ばしてくれよう!」

「ギギ……、退避行動、不可能……」

「いけ、アイリス!! その化け物に叩き込んでやれ!!」

「両世界の未来を乗せる――!!」

 アイリスが大地を蹴った。 いや、大地を蹴ったように見えた瞬間には、彼女の身体はすでに僕の繋げた空間の裂け目を通り抜け、機甲戦闘人形の至近距離へと転送されていた。

 科学の力で満ちた魔法の剣と、限界を突破した空間能力。

 究極の戦術が、今、完全に完成する。

「いけぇぇぇ、アイリスッ!!」

「我が一振りに、両世界の未来を乗せる――『ライトニング・ブレイブ』!!」

 純白に輝く光の刃が、世界の混沌を切り裂くようにして、真っ直ぐに振り下ろされた。

 それは、ただの剣撃ではなかった。臨海発電所から供給された一千万人分の怒涛の電力が、異世界の精霊の加護と融合し、一筋の巨大な雷柱となって機甲戦闘人形を両断していく。閃光が新宿ゲートを、そしてグラハムの野望を完全に飲み込んでいく。

「ドガァァァァァァァンッ!!!!」

 空間そのものが爆発したような錯覚を覚えるほどの、凄まじい衝撃波が吹き荒れた。機甲戦闘人形の頑強な装甲が、ナノマシンの再生が追いつく暇すらなく、分子レベルで消滅していくのがわかった。

 胸部のコアが音を立てて砕け散り、奴が溜め込んでいた漆黒の魔力ごと、純白の雷光がすべてを塵へと変えていく。

「馬鹿な……我が社の……我が社の最高傑作が……!? ハズレ勇者が、なぜこれほどのエネルギーを制御できる! 貴様の脳はどうなっているんだ!」

 グラハムの絶望に満ちた悲鳴が、爆音の向こう側に消えていった。

 光の剣が機甲戦闘人形のコアを真正面から捉え、このエリアを支配していた歪んだ空間ごと両断しようとしていた。

「――あ、しまっ……」

 コアの力が弱くなっていき、エネルギーバランスが完全に崩壊した。まわりの壁や天井が、まるでガラス細工のようにパキパキと音を立ててひび割れていく。

 ゲートの暴走を繋ぎ止めていたくさびが外れたことで、この特異空間そのものが、一気に崩壊を始めようとしていたのだ。

 僕の視界は、ついに限界を迎えて急速に暗転し始めていた。右手の聖痕の光が、プツンと途切れるようにして消える。

 あ、これ、マジで脳のヒューズが飛んだやつだ……。

 意識が急速に遠ざかる中、僕は自分の身体が床に向かって倒れ込んでいくのを、どこか他人事のように感じていた。

 定時退庁どころか、これ、長期の病気休暇コースかもしれないな――そんなくだらないことを最後に考えながら、僕は完全に暗闇の中へと落ちていった。

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作者について

ふっせ

初めて小説を書いてみました。 文章を書くこと自体が初めてなので、拙いところや誤字脱字なども多々あるかと思います。 それでも、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

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