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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
私は、鬼の里へすてられた…。
本文
「「………。」」
夜風が二人の間を通り抜けていく中、厳牙の一本角が月光を浴びて静かにきらめいている。
「そんなに綺麗な髪と目をしてんのによ。鬼の里じゃ、白髪も赤目も強くて上等な奴の証だ。お前、人間にしておくにはもったいねえくらい鬼映えしてんだよ」
「え……?」 綺麗、だなんて。 生まれて初めて言われた言葉に、私の心臓がドクンと大きく跳ね上がった。
「だから、その死に損ないみたいな顔はもうやめろ。ほら、着いたぞ。俺の家だ」 厳牙が立ち止まった先には、岩壁をくり抜いて作られた、無骨だけどどこか暖かみのある木造りの家があった。彼は振り返り、私の白い髪に隠れたおでこを大きな人差し指でデコピンするように軽く小突く。
「中に入れよ、ヒナ。これからはここがお前の寝床だ」
「……あ」 厳牙に背中をぽんと押されるようにして、私は恐る恐るその無骨な家の中へと足を踏み入れた。
土間の奥には、太い丸太を組んで作られた広々とした居間がある。 大きめの囲炉裏からは、パチパチと薪がはぜる心地いい音と、なんだか香ばしいお肉の匂いが漂っていた。 人間の村の檻とは比べものにならないくらい、広くて、あたたかい空間。
「ほら、そこに座ってろ。今、なんか食うもん出してやるからよ」 厳牙は肩に担いでいた大槌を壁際に立てかけると、大きな身体をさらに丸めるようにして、台所の奥へと引っ込んでいった。
一人残された私は、囲炉裏の傍にある分厚い座布団にちょこんと腰を下ろす。 パチパチと燃える炎をぼんやりと見つめているうちに、私の頭の中は、さっき厳牙が言った言葉でいっぱいになっていった。 『綺麗な髪と目をしてんのによ』 『お前、人間にしておくにはもったいねえくらい鬼映えしてんだよ』 「……綺麗、だって」 思い出すだけで、さっきまで涙で潤んでいたはずの顔が、今度は火照るように熱くなっていく。
自分の白い髪の毛先をそっと指でつまんで見つめながら、私は今更のように、恥ずかしさで胸がバクバクと激しく波打つのを感じていた。
「お、おい、待たせたな! 適当に肉焼いただけだけどよ、ほら食え!」 奥から戻ってきた厳牙は、大きなお皿に山盛りにされた、じゅうじゅうと音を立てるお肉の塊を囲炉裏の前にドンと置いた。
美味しそうな匂いが鼻をくすぐるけれど、私の心臓はさっきから別の意味でバックバクと鳴り響いている。
(ま、待って……。これって、もしかして、私を太らせてから喰うってやつ……!?)
鬼の里に連れてこられたんだから、そういう覚悟はしてた。してたはず、なのに。 さっき「綺麗だ」なんて言われたせいで、ただ「化け物に喰われる恐怖」じゃなくて、何か別の、もっと甘くて恐ろしいドキドキが胸の奥で爆発しそうになっている。
お肉を差し出す厳牙の大きな手が、すぐ近くにあるだけで、私の顔はもう湯気が立ちそうなくらい真っ赤だった。