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小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
私は、鬼の里へすてられた…。
本文
緊張で震える声で、
「……あの、厳牙」
「あ、あん? なんだよ、お口に合わなそうか?」
「ううん、そうじゃなくて……。あのね、私……覚悟、できてるから」
「は? 覚悟って何の――」
「だから! その……美味しく、喰って、いいから……っ!」 ギュッと目をつむり、今度こそ顔を真っ赤にして叫ぶと、目の前で 「……は?」という厳牙の短い声がして、そのあと凄まじい勢いでピキィィィィン!と空気が凍りついた。
「だ、だだだ、誰が、お前を、どう喰うってぇええええええええ!?」 ガバッと目を開けると、厳牙は顔だけでなく、首筋から腕まで全部トマトどころか大爆発したみたいな色になって、腰を抜かしたように後ろにひっくり返っていた。 「ち、違う! 俺はただの! 健全な肉を! お前に飯として食わせようとしただけで! お前をどうこうしようなんざ、これっぽっちも、その、あー!!」 厳牙は頭を抱えて畳の上をごろんごろんとのたうち回り、一本角を床にゴツゴツぶつけながらパニックを起こしている。
そのあまりの純情な慌てっぷりに、私の「喰われる覚悟」は一瞬でどこかへ吹き飛んでしまい、お互いに真っ赤な顔のまま、部屋の中でワタワタと視線を泳がせ合うことしかできなくなってしまった。
「あ、あの! 違うの! 変な意味じゃなくてっ!」 私は火が出そうなくらい熱い両頬を両手で押さえながら、必死に言葉を紡ごうとした。
でも、頭の中が完全に恥ずかしさでパニックを起こしていて、口が勝手に暴走してしまう。 「その、鬼って人間を食べるって絵本に書いてあったから! だから、厳牙もそういう、私をじっくり味わうっていうか、夜に、その……食べちゃうのかなって! 私、初めてだから、どうすればいいか分かんなくて……!」
「お、おい! お前それ以上言うな! 表現が色々とだめだろ! 俺の純情が死んじまう!!」 厳牙は両手で自分の耳を塞ぎながら、顔から血が噴き出すんじゃないかってくらい真っ赤になって叫んだ。
ごろごろと床を転がるのをやめて、今度は体育座りのまま後ろにじりじりと後退していく。 身の丈2メートル越えの大男が、部屋の隅っこで小さくなってガタガタ震えている図はあまりにもシュールだ。
「あ、味わうとか、夜に食べちゃうとか、お前……! 俺はただの、その、……いや、なんでもねえ! とにかく俺は手を出さねえ! お前が『食べて』とか言うからだろ!」
「だって、だって……! 厳牙が『綺麗な髪と目をしてる』なんて言うから、私、てっきりその気にさせられて、喰われちゃうんだって……っ!」
「それはただの、思った通りの感想だろ! 他意はねえ! ……いや、他意がねえって言うのもなんかアレだけどよ!!」 厳牙は自分の髪をめちゃくちゃにかきむしり、もうどう弁明していいか分からずに、額の一本角を壁にコンコンとぶつけ始めた。
お互いに自爆に自爆を重ねて、部屋の中の温度は篝火よりも確実に跳ね上がっている。
二人して真っ赤な顔でゼェゼェと息を切らしながら、完全に恥ずかしさの限界点を突破していた。