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【42番外】手打ち台の尻尾

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/13 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,254文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

時環遊技場の片隅に、古い手打ち式のパチンコ台が数台置かれている。

今では珍しい、玉を一発ずつ自分の手で弾く台だ。

従業員アンドロイドは、その台の前でじっとハンドルを見つめていた。

「これが、手打ち式のハンドルですか」

「そうですよ。昔はこうやって、一発ずつ自分の手で玉を打っていたんです」

「構造は理解しています」

「では、実際に打ってみましょうか」

店主が台の前に立ち、慣れた手つきで玉を打つ。玉が盤面へ飛び出していく。

「こんな感じです」

「なるほど」

従業員アンドロイドも同じように玉をセットした。

右手をハンドルに添える。

そして――。パチン。

玉は飛び出したものの、店主が打ったものとは微妙に違う軌道を描いた。

「……難しいですね」

「最初はそんなものですよ」

もう一度打つ、が今度は少し強すぎた。

さらにもう一度。弱い。

従業員アンドロイドは首を傾げた。

「同じ動作をしているつもりなのですが」

「手打ち台は、その『つもり』の差がそのまま玉に出るんですよ」

店主は笑いながら、ハンドルの下あたりを指差した。

「では、まず基本の持ち方からやってみましょうか」

「はい」

「この細い棒があるでしょう?昔はこれを『テング』と呼んでいたんですよ」

「テング……」

従業員アンドロイドが、細い棒を覗き込む。

「ここを、右手の薬指と小指の間に挟みます」

言われた通りに指を添える。

「こうして手を安定させて、親指で大きなハンドルの先を弾きます」

「こうですか?」

先ほどよりも玉の飛び方が安定した。

「おお」

従業員アンドロイドの声が少し弾む。

「さっきより安定しています」

「でしょう?」

店主も嬉しそうに頷いた。

「手打ち台は、ただハンドルを弾けばいいというものでもありません。手の位置を決めて、毎回同じように弾く。それで少しずつストロークを合わせていくんです」

「なるほど」

従業員アンドロイドは、さらに何度か玉を打った。しかし、少しするとまた軌道がばらつき始める。

「……やはり難しいです」

「では、もう一つの持ち方も試してみましょうか」

「別の方法があるんですか?」

「ええ」

店主は従業員アンドロイドの手を見ながら説明した。

「今度は左手で、テングをしっかり持ってみてください」

「左手で?」

「はい。左手でテングを持って、右手は親指でハンドルを弾きます」

言われた通りにしてみる。

「この持ち方なら、右手の位置を固定しやすくなります。ストロークも一定にしやすいですよ」

今度は、玉が先ほどよりも揃った軌道で飛んでいった。

「確かに!」

もう一度打ってみる。

「こちらのほうが、調整しやすいです」

「そうでしょう」

店主は満足そうに頷いた。

しばらく練習しているとき、従業員アンドロイドがふとハンドルを見た。

「店主」

「はい?」

「これ、猫の尻尾に少し似ていませんか?」

店主も細い棒を見る。

「……言われてみると、少し似ていますね」

「先が細くて、少し曲がっていて」

「そうですね」

店主は少しだけ遠くを見るような顔をした。

「そういえば、前にも猫の尻尾を見たことがありましたね」

そう言いながら、店主は純喫茶「ひととき」で見かけた、あのロボット猫のことを思い出していた。

その横で、従業員アンドロイドは再びハンドルに手を添える。

今度は、かなり安定していた。

「上手くなりましたね」

「ありがとうございます。ですが、もう少し練習します」

店主は笑った。

「熱心ですねぇ」

その日は、遅くまで従業員アンドロイドの練習が続いた。

翌朝。

開店前の店内で、従業員アンドロイドが右手を眺めていた。

「店主」

「おはようございます。どうしました?」

「少し、ご相談があります」

「はい?」

「右手が、少し重いです」

店主が手元を覗き込む。

「故障でしょうか?」

「自己診断では、機械的な異常はありません」

「それなら、今日は少し休ませたほうがいいかもしれませんね」

「ですが、本日の練習は――」

「今日は控えましょう」

「……はい」

その会話を聞いていた常連のアンドロイドが、カウンターのほうから声をかけた。

「最初はそうなりますよ」

「そうなんですか?」

「ええ。私も昔、手打ち台を初めて打った翌日に、腕が重くなりました」

別の常連客も笑う。

「俺なんか、次の日は平気だったけど、その次の日に来たぞ」

「遅れてくるんですか?」

「人間の筋肉痛なんて、そんなもんだよ」

従業員アンドロイドは、少し考えた。

「……つまり、これは筋肉痛ですか?」

「たぶんね」

常連のアンドロイドが笑う。

従業員アンドロイドは少し考えてから、右手を見つめる。

「アンドロイドにも筋肉痛があるとは、私も知りませんでした」

「私も知りませんでしたよ」

常連のアンドロイドが笑う。

「でも、ちゃんと重くなるなら、昨日かなり頑張ったってことですよ」

「なるほど」

「まあ、今日は休んだほうがいいでしょうね」

「明日は、また練習できますか?」

「右手が元気になってからにしましょう」

「わかりました」

店主は手打ち台を眺めた。

「焦らなくても大丈夫ですよ。手打ち台は逃げませんから」

「それは、そうですね」

従業員アンドロイドは素直に頷いた。

その横で、常連のアンドロイドがぽつりと言った。

「しかし、筋肉痛になるアンドロイドって……ちょっと面白いですね」

「そうですね」

店主は笑った。

「時環遊技場ですから、そういうこともあるんでしょう」

開店時間が近づき、店内にいつもの音が戻ってくる。

店の隅には、手打ち式の台が並んでいる。

従業員アンドロイドは少し離れたところから、その台のハンドルを眺めた。

「……やっぱり、猫の尻尾に形が似ていますね」

店主は何も言わず、笑った。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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