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【43番外】 パチンコを打つ玉

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/16 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 2,963文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

時環遊技場の店休日には、向かいにある小さなゲームセンターが、たまに開くことがある。普段はシャッターが下りている店だ。

十円ゲームやエレメカ、古いテレビゲーム。そして、店の奥には何台かのパチンコ台も置かれている。

その日も、店主がシャッターを上げていた。

ゲームセンターは、いつもより少し賑やかだった。十円ゲームの電子音に、エレメカの機械音。奥のパチンココーナーからは、玉が盤面を跳ねる音が絶え間なく聞こえてくる。

床には、遊技中の客が使っているドル箱がいくつも並んでいた。

突然、そのうちの一つから、玉がころりと転がった。

誰かが落としたのだろう。けれど、その玉は止まらなかった。ころころと床を進み、別のドル箱の前を通り過ぎる。

すると、そこからも一個の玉が転がり出した。

また一個。さらに一個。あちらのドル箱からも、こちらのドル箱からも、玉が少しずつこぼれ出してくる。

銀色の玉は、床の一点へ向かっていた。

「……あれ?」

気づいた客が足を止める。

玉は次々と集まり、やがて小さな山を作った。その山が、もぞりと動いた。

玉が寄り集まって、脚になる。胴ができ、腕が伸びる。最後に、丸い頭が乗った。

そこに立っていたのは、人の形をしたパチンコ玉だった。

玉人はしばらく店内を見回していた。そして、何事もなかったように歩き出した。

向かった先は、パチンココーナーだった。

一台の前で立ち止まり、玉人は椅子に腰を下ろす。

右手をハンドルへ。左手を上皿へ。

すると、その左手の手のひらから玉がザラザラと流れ出した。上皿に玉が溜まる。

玉人は右手をひねった。普通にパチンコを打っている。

周りにいた客たちが、なんとなく集まってきた。

そのうち、玉人が座った台を見て、何人かが顔を見合わせた。

よりによってその台は、朝から釘がかなり渋く、さっきまで打っていた客も、ほとんど入らないとぼやいていた台である。

「今日はやめておいたほうがいいですよ」

誰かが玉人に声をかけた。

もちろん、玉人は何も答えない。ただ、黙々と打ち続ける。玉が釘に弾かれる。また弾かれる。なかなか入らない。

そのたびに、玉人の身体から一個、また一個と玉が抜けていく。

少しずつ、身体が細くなっていった。それでもやめない。

店内の客たちも、いつの間にかゲームをする手を止めて、玉人の遊技を眺めていた。

まるで、誰かの勝負を見守るように。

そして、その瞬間。図柄が揃った。盤面が派手に動く。大当たりだ。

店内に歓声が上がった。玉人の前へ、一気に玉が吐き出される。

玉人は両手を広げ、その玉を身体へ取り込んでいった。

もりもり……。

身体が膨らむ。さらに玉が流れ込む。さっきまで細くなっていた身体が、みるみる元に戻っていく。

そして、もう一度大当たり。今度はさらに大量の玉が出てきた。玉人は嬉しそうに両腕を広げた。

玉が身体へ吸い込まれていく。身体はどんどん大きくなった。

どういうわけか、そこから三回連続で大当たりが続いた。大当たりのたびに玉が出て、そのたびに玉人が吸収する。

最初は普通の人間ほどだった玉人が、いつの間にか大人の背丈を超え、さらに大きくなっていた。

「すごいな……」

誰かが呟いた。

子どもたちはすっかり夢中になっている。常連客たちも、自分の台そっちのけで玉人を見ていた。

玉人は絶好調だった。右手でハンドルを回し、左手からザラザラと玉を送り出す。

そして、出てきた玉を身体へ取り込む。その姿は、もはや人というより、巨大な玉の塊に近かった。

少し離れたところで、店主が楽しそうに玉人の打つ台を眺めている。

玉人はその後も勝ち続けた。やがて、ふっと右手をハンドルから離した。

台を見つめる。

しばらくして、満足したように立ち上がった。

もう十分遊んだらしい。玉人はゆっくりと振り返り、そのまま歩き出した。

最初に向かったのは、自分が入っていたドル箱だった。

ところが、その前まで来ると、玉人は急に方向を変えた。

隣のドル箱へ向かう。そこで立ち止まり、中を覗き込むように身体を傾けた。

しばらく眺めている。

そして――そのまま箱に飛び込んだ。

ザバーンッ!

大量の玉が跳ね上がった。玉人はドル箱の中へ沈んでいく。かと思えば、すぐに身体を起こし、今度は別のドル箱へ向かった。

また飛び込む。

ジャララララッ!

そこからさらに別のドル箱へ。

あちらへ。こちらへ。まるで店内のドル箱を一つずつ訪ねて回るように、玉人は次々とダイブしていった。

飛び込むたびに玉が弾け、床へこぼれる。

「ずいぶん自由だな」

「次はどこ行くんだ?」

「俺の箱にも来てくれないかな」

そんな声まで聞こえてくる。

最後に向かったのは、店内の端に置かれた一つのドル箱だった。

玉人はその前で立ち止まった。そして、ゆっくりと身体を沈めていった。

頭だけが、玉の山の上に残った。それも、ゆっくりと沈んでいく。

最後に、右手だけが玉の中から伸びた。その手が、ぐっと上を向く。親指が立った。

ほんの一瞬だけ、その姿が見えた。そして――静かに沈んでいった。

玉人の姿が、完全に消える。店内はしばらく静かだった。

誰も何も言わない。ただ、床には大量の玉が残されている。

すると、一人の常連客が自分のドル箱を覗き込んだ。

「あれ?」

隣の客が振り返る。

「どうした?」

「……なんか、増えてないか?」

「え?」

隣の客も、自分のドル箱を覗き込む。

「……ほんとだ」

さっきまでより、明らかに玉が増えている。その声を聞いて、別の客も自分のドル箱を確認した。

「こっちもだぞ」

「俺のところも」

「え、なんで?」

次々とドル箱を覗き込む客たち。

どうやら、玉人が飛び込んでいったドル箱だけではない。店内のあちこちで、少しずつ玉が増えていた。

「もしかして……あいつのおかげか?」

誰かが、最後に玉人が沈んでいったドル箱を見る。

「玉人が来たから、今日はツイてるのかもな」

「じゃあ、また来てほしいな」

「俺も、もうちょっと打ってみるか」

「俺も」

常連客たちの顔に、自然と笑みが浮かんだ。

その横で、従業員アンドロイドは床に散らばった玉を眺めていた。

「……回収します」

そう言うと、背中の装甲が静かに開いた。

ウィーン……。

中から一本のアームが伸びる。続いて、もう一本。

さらに一本。一本、また一本。次々とアームが背中から伸びていく。

その先には、細長い磁石棒が取り付けられていた。

従業員アンドロイドの背中には、何本ものアームが大きく広がっていた。

まるで千手観音のようだった。

「…………」

客たちが、その姿を見つめる。

さっきまで玉人を見ていたはずなのに、今度は全員の視線が従業員アンドロイドへ集まっていた。

「……何それ?」

「そんな機能あったの?」

「俺、初めて見た」

従業員アンドロイドは、何も答えなかった。ただ、何事もなかったように磁石棒を床へ近づける。

ジャララララッ。

一斉に玉が吸い寄せられていく。

「おお……」

客たちから、小さな歓声が上がった。

何本ものアームが器用に動き、床に散らばった玉を次々と回収していく。

その横で、店主は満足そうに笑っていた。

「ずいぶん楽しんだようですねぇ」

従業員アンドロイドは黙々と玉を拾い続けている。

最後に、玉人が沈んだドル箱の中には、何事もなかったように大量の玉が残っていた。

そしてその中で、一個だけの玉が、ころりと動いた。

ゲームセンターには、いつもの機械音と玉の音が戻っていた。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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