[1]いつもの台と、いつもの時間
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
店主は、店の角にある古い台のガラスを、そっと指先で撫でた。
長い間、たくさんの玉を受け止めてきたガラス。
その向こうには、今では少し色褪せた役物と釘が並んでいる。指を離そうとした、そのときだった。
どこからともなく、雨の音が聞こえた。
♢♢♢♢♢
その店には、毎朝一番に来るお客さんがいた。名前は、田中さん。特別に勝つ人ではない。むしろ、勝った日より負けた日の方が多かった。
それでも、田中さんには決まった習慣があった。開店すると、必ず同じ台へ向かう。店の角にある古い台で、最新台ではない。派手な音もしない。でも、田中さんにとっては特別な一台だった。
店員がいつも言う。
「田中さん、本当にその台好きですね」
田中さんは笑った。
「この台はな、俺が座る前から毎日頑張ってるんだよ」
ある日、新人の店員が不思議そうに聞いた。
「台が頑張るんですか?」
田中さんは頷いた。
「そうだよ。朝から夜まで、何人もの人を楽しませてる。勝った人も、負けた人も。最後まで相手してくれるだろ?」
新人は少し笑った。
「台に話しかける人、初めて見ました」
田中さんも笑う。
「じゃあ、君もそのうち分かるよ」
ある雨の日。田中さんがいつもの席に座ると、隣には若い男性が座った。その男性は初めて来た客らしく、少し緊張しているようだった。
田中さんが声をかける。
「初めてかい?」
男性は驚いたように答えた。
「はい」
「じゃあ、焦らないことだ。パチンコは玉がどこへ行くかを見る遊びだからな」
男性は笑った。
「そんな楽しみ方もあるんですね」
二人で盤面を見る。玉が流れる。
突然、田中さんの台が大当たりした。店内に音が響く。田中さんは喜んだが、すぐに隣を見た。
「今の見たか?」
男性は笑った。
「はい!」
田中さんは満足そうに頷いた。
「これが面白いんだよ」
しばらくして、田中さんが席を立った。
「もう帰るんですか?」
男性がそう聞くと、田中さんは笑った。
「今日は十分楽しんだからな。また明日来るよ」
翌日の開店時間。
店員が店内を見ると、田中さんはいつもの席に座っていた。そして、その隣には昨日の若い男性がいた。
二人で盤面を見ている。
パチン、パチン。
「今日は出るかな」
「どうでしょうね」
そんな会話をしながら、二人は笑っている。
店員は思った。
パチンコ屋にあるものは、台だけじゃない。玉でもない。人から人へ渡っていく、小さな楽しみ方も残っていくんだ。
今日も店内には玉を打つ音が響く。いつもの席には、いつもの時間が流れている。