[2]1989年の入口
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。
本文
店主は、古い写真の端にそっと指を触れた。少し粒の粗い写真だった。
指先に伝わる、紙の感触。その瞬間、写真の中の景色がゆっくりと動き始めた。
♢♢♢♢
その扉を開けた瞬間、時間が少しだけゆっくりになった。
古い店内の灯り。少し低い天井。機械の動く音。玉の流れる音。
そこは、今いる場所なのに、どこか遠い昔の場所のようだった。
青年は足を止めた。
「……写真の中に入ったみたいだ」
そう思った。
昔のアルバムで見た写真。少し粒の粗い画質に、少し褪せた色。それでも、なぜか温かい。
まるで、その一枚の写真が動き出したようだった。
そこに並ぶ台たちは、静かに光っていた。誰かが昔座った場所。誰かが夢中になった場所。誰かが笑った場所。
青年には、その時代の記憶はない。1989年をリアルタイムでは知らない。
でも、不思議だった。
知らないはずなのに、懐かしい。
それは、古い物を見ているからではなかった。そこに、人がいた気配が残っていたからだ。
台のガラスには細かな傷がある。ハンドルには、たくさんの手が触れた跡がある。椅子には、何人もの人が座った時間がある。
機械が古いのではない。時間が重なっているのだ。
青年は一台の前に座り、ハンドルを握った。
この台の前にいた人も、同じように玉の行方を見ていたのだろうか。
当たりを願ったのだろうか。隣の人と笑ったのだろうか。悔しそうに席を立ったのだろうか。
台は何も語らない。
でも、語らないからこそ、人は想像する。
青年は盤面を見つめた。釘の一本一本。風車の動き。玉の通る道。
そこには、作った人の時間もあった。遊んだ人の時間もあった。
そして今日、自分の時間も加わる。
帰る前、青年はもう一度店内を見渡した。
さっきまで写真の中にいるようだった場所が、今度は少し違って見えた。
これは過去の展示ではない。今も誰かの思い出が生まれている場所なのだ。
扉を閉め、外の世界に戻る。
青年の心の中には一枚の写真が残っていた。
少し粒が粗くて、少し色あせていて、それでも確かに温かい一枚。
その写真の名前は、「1989年の入口」だった。
作品統計
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