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[3]負け続ける男が一度だけ勝った日

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/22 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 1,277文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

店主は、古いパチンコ台のハンドルに手を添えた。長い間、何人もの手が握ってきたハンドルだった。少し擦れた表面を指でなぞる。すると、どこからともなく、店の中に笑い声が聞こえた気がした。

「今日こそはな」

そんな声が聞こえた瞬間、過去の風景が流れてきた。

♢♢♢♢

その男は、店の中で有名だった。

悪い意味ではない。「また負けてるよ」と言われるくらい、いつも負けていた。

朝から来ても負ける。仕事帰りに寄っても負ける。新台に座っても負ける。

昔からの常連たちは、彼を見るたびに「今日は勝てそうか?」と声をかけた。

男はいつものように、「今日こそはな」と笑って答える。もちろん、次の日にはまた負けている。

それでも男は怒らなかった。台を叩くこともない。店員に文句を言うこともない。

ただ、「今日は台と相性が悪かったな」と言って帰る男だった。

店員たちは不思議に思っていた。

なぜ、そんなに負けても通うのか。

ある日、店員が「そんなに負けて、嫌にならないんですか?」と聞くと、男は少し考えてから笑った。

「勝つためだけに来てるんじゃないからな」

男には、昔よく一緒に来ていた友人がいた。仕事帰りに二人で店へ寄り、「今日はどっちが先に当てるか勝負だ」なんて言いながら打っていた。

でも、友人はもういない。

男は一人になってからも、その店へ通った。勝ちたいからではなかった。

友人と笑った時間を、もう一度感じたかったからだった。

ある冬の日、男はいつもの台に座った。

周りの常連から「またその台か」と言われると、「この台だけは、まだ俺を見捨ててないからな」と笑った。

玉を入れる。いつものように回らない。

いつものように静かな展開が続く。

男は苦笑し、「やっぱり今日も駄目か」と盤面を眺めていた。

その時だった。

盤面の奥で、小さな変化が起きた。

聞き慣れた音とともに数字が動き出す。

周りにいた客たちも振り向いた。

隣の常連が「おい……来たんじゃないか?」と声を上げる。

男は慌てずに画面を見つめた。

そして――大当たり。

店内に音が響いた。

男はしばらく動かなかった。

「……当たった」

小さく呟く。

周りの常連たちは笑った。

「お前、初めてじゃないか」

「何年越しだよ」

「今日は記念日だな」

口々に声をかける。

男は笑った。

まるで子供のような顔だった。

その日は珍しく連チャンした。箱が積まれ、玉が増えていく。

周りから見れば、そこそこ大きな勝ちだった。でも、男が一番嬉しかったのは別のことだった。

景品を受け取った時、男はふと隣を見た。昔、友人が座っていた場所だった。

男はそこを見つめながら、小さく「やっと勝ったぞ」と呟いた。

それから男は、少しだけ店へ来る回数が減った。

店員が「もう勝ったから満足したんですか?」と聞くと、男は笑って首を振った。

「違うよ。これで、いつでも思い出せるから」

数年後、その店は閉店した。

男が最後に座ったのは、もちろんあの台だった。

勝った日の記憶。友人と笑った日の記憶。負け続けた日々さえも、全部その台に残っていた。

パチンコで一度だけ勝った日。

それは、お金を手に入れた日ではなく、失った時間を少しだけ取り戻した日だった。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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