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【44番外】レトロケーション・羽根モノ取材編

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/17 📚 シリーズ: 時環遊技場 📝 3,296文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ChatGPTと一緒に制作した、「時環遊技場」短編集です。 舞台は、未来都市・郊外第9区。昭和の手打ちパチンコから平成中期のCR機までが残る古い遊技場に、人間、ロボット、アンドロイドが集まる。そしてそこでは時々、不思議なことが起こる。ちょっと懐かしくて、少し不思議なパチンコ店の物語。

本文

午後の時環遊技場に、前にも見た三人組がやってきた。

「こんにちは! 未来放送局の『レトロ・エンターテインメント・アーカイブス』です!」

先頭の女性が、いつものようににこやかに頭を下げる。

「また来ました!」

「お待ちしていました」

店主が穏やかに迎える。

「今回は、羽根モノを取材させてください」

「はい。もちろん」

店主は店内の羽根モノコーナーへ目を向けた。

「たくさんありますから、どれにするか迷うかもしれませんね」

「実は、もう決めてきました」

女性が端末を操作すると、空中に三台の遊技機が浮かび上がった。

「この三台です」

画面には、台番号と名前が表示されている。

『115 カエルの大冒険』

『116 がんばれ親方』

『117 ジャングル探検隊』

「ずいぶん個性的な名前ですね!」

店主が笑う。

「役物も、それぞれ面白いですよ」

三人はさっそく台の前へ向かった。

『カエルの大冒険』には、大きなカエルの役物が取り付けられている。

ぱっくりと開いた口が、盤面の中央でこちらを向いていた。

「この口に玉が入るんですか?」

「そうです。ただ、口に入っただけではまだですよ」

「まだ?」

「口の中にあるVに入れば、入賞です」

スタッフは、カエルの口をじっと見つめた。

その隣の『がんばれ親方』には、相撲の親方を模した役物がある。

そして、その横。『ジャングル探検隊』には、ジャングルを思わせる装飾と、ツタのような役物が組み込まれていた。

「これは……?」

「ツタに玉がくっついて、反対側まで届けばVに入ります」

「玉が、くっつく?」

「磁石です」

三人が顔を見合わせる。

未来の撮影技術を扱っている彼らにとっても、昔の遊技機の仕組みは、見れば見るほど不思議なものらしい。

やがて撮影の準備が整った。

今回も、玉の動きを記録する装置が盤面の前に設置される。

羽根が開く瞬間、玉がどの方向へ跳ねたのか。役物の中でどんな動きをしたのか。それらを空中に浮かぶ光の軌跡として残せるらしい。

「それでは、まず『カエルの大冒険』からお願いします!」

スタッフの一人が椅子に座った。

ハンドルを回す。玉が盤面へ送り出される。

釘に弾かれ、風車にぶつかり、何度か跳ね返った玉がチャッカーに吸い込まれ、羽根が開いた。

一個の玉が、羽根に拾われる。

「おっ」

玉は役物の中へ飛び込んだ。

カエルの口が開く。三人の視線が、玉を追った。

口の中で一度跳ねた玉は、中央のVへ向かって転がっていく。しかし玉はVの縁に弾かれ、そのまま下へ落ちていった。

「ああ……」

思わず、三人の口から同じ声が漏れた。

店主が少し笑った。

「今のは惜しかったですね〜!」

「今の……口には入ったんですよね」

「はい」

「でも、駄目」

「はい」

スタッフはもう一度盤面を見た。

「なるほど……」

そして、ハンドルを握り直した。

次の玉が羽根に拾われる。

今度は役物の中で大きく跳ね、カエルの口の奥へ転がっていく。

Vの手前で、くるりと向きを変えた。

「……!」

そのまますとん、とVへ入った。

店内から小さな歓声が上がる。

スタッフは驚いたように盤面を見つめ、それから撮影された光の軌跡を確認した。

「今の、きれいですね」

「そうですね」

「玉が、最後までどこへ行くか分からない」

店主は頷いた。

「そこが面白いところでしょうね」

次の台へ移った。

『がんばれ親方』では、相撲を題材にした役物が玉を受け止める。

羽根が開き、玉が中へ入る。

役物の中を転がる玉を、スタッフたちは黙って見守った。

「親方、頑張ってください」

誰が言ったのか分からなかった。

店主が振り返る。

スタッフ自身も、少し照れたように笑った。

玉は親方の周りを回り、惜しいところまで進んだ。

しかし、そのまま外れてしまった。

「……駄目でしたね」

「はい」

「親方、頑張ってくれませんでした」

店主は笑った。

「今日は、ちょっと厳しかったようですね」

それから何度か玉を打つうちに、いつの間にかスタッフの間で親方への声援が始まっていた。

羽根が開けば身を乗り出し、玉が役物へ入れば息を止める。

そして外れれば、揃って肩を落とす。

最初は撮影のためだったはずなのに、誰もそれを気にしていなかった。

最後の『ジャングル探検隊』では、さらに様子が変わった。

羽根から飛び込んだ玉が、ツタの役物に吸い付く。磁石に捕まった玉が、ゆっくりと動き始めた。

誰も声を上げない。ただ、玉の動きを追っている。

ツタはゆっくりと反対側へ伸びていく。

Vは、その先にある。

あと少し。あと少しで届く。ところが、玉がふっと外れた。

「ああっ!」

今度は三人とも声を上げた。

近くで見ていた常連客が笑う。

「惜しかったねぇ」

「今のは悔しいです」

ディレクターが本気で悔しそうに答えた。

店主は、その様子を見て微笑んだ。

「もう一度、やってみますか?」

「……お願いします」

すぐに返事が返ってきた。

従業員アンドロイドが、上皿へ玉を補充する。

「どうぞ」

再びハンドルが回った。

玉が盤面を流れる。羽根が開く。玉が入る。ツタが動く。今度は、さっきよりも少しだけ長く玉をつかまえていた。

反対側へ、ゆっくりと玉が進んでいく。

「……行け」

誰かが呟いた。

玉が、Vの手前まで届いた。

そして――コロン、と小さな音を立ててVへ入った。

「入った!」

一気に声が上がった。

カメラマンが慌てて撮影画面を確認する。

「撮れてます!」

「よかった……」

ディレクターは、しばらく盤面を見つめていた。

それから、ふっと笑った。

「面白いですね」

「はい」

店主が答える。

「一発台とは、また違うでしょう?」

「全然、違います」

ディレクターは三台を順番に眺めた。

「一発台は、とにかく入るまで待つ感じでしたけど、これは一球ごとに違う」

「そうですね」

「羽根が開くたびに、次はどこへ行くんだろうって思う」

店主は頷いた。

「玉は、思った通りには動いてくれませんからね」

「そこが面白いんですね」

いつの間にか、スタッフたちは撮影した映像の確認よりも、実際の盤面を見る時間のほうが長くなっていた。

カエルの口が開くたびに身を乗り出し。

親方が玉を受ければ声をかけ。

ツタが玉をつかめば、反対側へ届くまで黙って見守る。

客の小型ロボットまで、いつの間にか三台の間を行ったり来たりしていた。

「カエル、マタ ハイリマスカ?」

「どうでしょうね」

「オヤカタ、ガンバッテマス!」

「そうですね」

「ツタ、モウスコシデス〜!」

店主は、その様子をカウンターから眺めていた。

やがて時計を見る。そろそろ、いつもの時間だった。店主が古いマイクを取り出すと、従業員アンドロイドがすぐにカウンターへ戻ってくる。

店主がマイクを手に取る。

スピーカーに小さなノイズが走った。

そして、いつもの店内放送が始まった。

その声を聞いた撮影スタッフたちが、ふと顔を上げる。

しばらくして、店主がマイクを置いた。

「そろそろ、お時間ですね」

「あ……」

三人とも時計を見る。

「もう、こんな時間ですか?!」

「はい」

ディレクターが三台の羽根モノを振り返る。

「もっと撮るつもりだったんですけどね」

「十分撮れたと思いますよ」

店主が笑う。

スタッフたちは機材を片付け始めた。

従業員アンドロイドが手伝いながら、床に落ちた玉を拾っていく。

「今日はありがとうございました」

「こちらこそ」

入口まで見送りに出る店主に、ディレクターが振り返った。

「次の取材も、来てもいいですか?」

「もちろんです」

「まだ羽根モノ、たくさんありますよね」

「ええ」

店主は店内を振り返った。羽根モノの並ぶ一角には、古い台が静かに並んでいる。

「まだまだありますよ」

「……それは楽しみですね」

三人は笑いながら店を出ていった。

店内が静かになる。

店主は、しばらく羽根モノの並ぶ一角を眺めていた。

『カエルの大冒険』

『がんばれ親方』

『ジャングル探検隊』

三台とも、何事もなかったように静かに佇んでいる。

従業員アンドロイドが隣に立った。

「今日は、ずいぶん楽しそうでしたね」

「そうですね」

店主が微笑む。

「取材に来た人が、いつの間にか遊んでいました」

「はい」

少し間があった。

「でも、それも取材なのかもしれませんね」

店主はそう言って、羽根モノの並ぶ場所へ目を戻した。

静かな店内に、古い遊技機の音だけが残っていた。

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作者について

蘇轍

ぱちんこは、「遊ぶための機械」でありながら、「機械そのものを眺めるための機械」でもある。

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