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2.外科医・木村

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/16 📚 シリーズ: 交錯する殺意 📝 655文字 ✅ 全年齢

あらすじ

ゆすり屋の男が、人気のない廃工場で殺害された。 犯人と目されるのは、彼に殺意を抱く二人の男。 互いの存在を知らぬまま現場へ向かった二人の行動には、奇妙な食い違いがあった。 何気ない発言や不自然な行動、現場に残された小さな痕跡をつなぎ合わせたとき、事件の構図は思いもよらぬ形へ反転する。 二つの殺意が交錯した先に待つ真相とは――。

本文

 七時半。勤め先の病院から帰宅した木村きむらが食後のひと時を過ごしていると、携帯電話が鳴った。

 左手人差し指で画面をタップし、スマートフォンを右耳に当てる。

「はい、木村です」

「俺だよ。黒須だよ」

「またお前か……」

 電話の声を聞くなり木村の表情が険しくなる。

「そろそろ懐が寂しくなってきたからさあ、またお願いしますよお」

 ゆすり屋の黒須からの、金の無心だ。

「……分かった。金なら用意する」

 外科医の木村にも、隠している秘密があった。

 彼は半年ほど前に行った手術中の医療ミスで、担当患者を死なせていた。

 書類の捏造などの隠蔽工作で、遺族に対しては何とか誤魔化し不問にすることが出来た。だが、どこからか情報を掴んだ黒須は、木村をゆすりのターゲットにしていた。

「先生え、悪いんだけど、今回は金額を上げさせてもらってもいいかなあ?」

「またか? 前回増やしたばかりだろう」

「そう言わずにお願いしますよお。こちらも色々と物入りでねえ」

 黒須は百万を要求した。

「百万? 冗談じゃない!」

「医者ってのは儲かるんでしょう? 俺が全部バラしたら、あんた医者の資格を失くすんじゃないかなあ」

「くっ、分かった……何とかする」

「それじゃあ、またいつもの時間に例の場所で待ってますよお」

 一方的な要求をして、黒須は電話を切った。

(どうすればいい? いくらなんでも、急に百万なんて無理だ)

 木村はスマートフォンを置くと、仕事用の医療バッグに目をやる。

(もう終わらせるしか、ない)

 彼はバッグから、手術用のメスが入ったケースを取り出した。

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作者について

紗倉亞空生

紗倉亞空生

紗倉亞空生(さくら あくお)と申します。 ミステリとホラゲーとちょっぴりロードバイク🚴を嗜むしがない会社員です。

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