4.外科医・木村
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゆすり屋の男が、人気のない廃工場で殺害された。 犯人と目されるのは、彼に殺意を抱く二人の男。 互いの存在を知らぬまま現場へ向かった二人の行動には、奇妙な食い違いがあった。 何気ない発言や不自然な行動、現場に残された小さな痕跡をつなぎ合わせたとき、事件の構図は思いもよらぬ形へ反転する。 二つの殺意が交錯した先に待つ真相とは――。
本文
八時半過ぎ。木村は自宅の最寄り駅に到着したところだった。犯行現場の周辺で自分の車を目撃されないよう、電車を使って移動することにした。
これから人を殺す。だが、そう簡単にはいかないだろう。相手の黒須と揉み合いになるかもしれない。
木村は出来るだけ身軽にしようと、凶器のメスを収めたケースをブルゾンの内ポケットに忍ばせ、手には何も持たずに出かけた。
『――八時四十二分発、S方面行きの急行電車が間もなく二番線に到着します。ご利用のお客様は黄色い線より下がってお待ちください』
駅の構内放送が、黒須との取引場所の最寄り駅へ向かう電車の到着をアナウンスした。
(もう後戻りは出来ない。これで終わりにするんだ)
木村は決意を固めた。
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