6.外科医・木村
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
ゆすり屋の男が、人気のない廃工場で殺害された。 犯人と目されるのは、彼に殺意を抱く二人の男。 互いの存在を知らぬまま現場へ向かった二人の行動には、奇妙な食い違いがあった。 何気ない発言や不自然な行動、現場に残された小さな痕跡をつなぎ合わせたとき、事件の構図は思いもよらぬ形へ反転する。 二つの殺意が交錯した先に待つ真相とは――。
本文
十時半。二時間近く電車に揺られ、黒須と落ち合う廃工場の最寄り駅に着いた木村は、ひどく緊張していた。
駅から廃工場までは、さらに車で三十分ほどの距離がある。木村は駅を出ると、すぐにタクシーに乗った。
「お客さん、どちらまで行きましょう?」
運転手がルームミラー越しに声をかける。
「S町七丁目まで頼む」
廃工場少し手前の、住宅街の住所を告げた。
(――運転手の印象に残らないようにしなければ)
幸い寡黙な運転手だった。ほとんど会話をすることもなく、タクシーは目的地に着いた。時間は十一時を回っていた。廃工場まであとは徒歩十分程度だ。
木村は歩きながら、これから自分が行うことを頭の中で反芻する。彼の緊張は極限に達していた。額の汗が止まらない。
堪らずに自販機に駆け寄ると、彼は缶ビールを購入して一気に飲み干す。木村はようやく落ち着きを取り戻した。
廃工場に着いた木村は、人目に付かないよう注意を払いながら、建物に足を踏み入れた。
「うわあーっ!」
ほどなくして、廃工場内に男の悲鳴が響き渡った。
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