名字限定戦隊 タナカレンジャー
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
熱い王道展開とギャグのギャップが好きな方 世界の存亡を賭けた限界突破の覚醒バトルで熱く燃え上がった直後、一転してくだらない日常会話や内輪揉めで笑わせてくれる、王道の熱血×コメディの黄金比を楽しみたい方に最適です。 愛すべきポンコツヒーローたちの群像劇が読みたい方 個性が強すぎる「タナカレンジャー」の面々をはじめ、独自すぎる美学を貫くスズキライダーやプリティーサトーなど、人間味あふれる愛くるしいキャラクターたちの掛け合いに癒やされたい方にお薦めです。 サクッと読めてスカッと元気がもらえる作品を探している方 テンポの良いストーリー展開とカタルシス抜群の必殺技、そして最後は誰も傷つかない平和でクスッと笑える結末で、読後に明るく晴れやかな気分になりたい方にぴったりです。
本文
第4話:あざと甘い暴力!魔法少女プリティサトー
真夏の夕闇を目前にした午後四時、都市の熱気はピークに達していた。 照り返すアスファルトからはゆらゆらと陽炎が立ち上り、重く湿った潮風がビル街の隙間を吹き抜けていく。空気中に漂うのは、排気ガスの臭いと、焦げつくような日光の匂い。
「愛と希望と……『佐藤』のためにっ! 魔法少女プリティサトー! ただいま参上ですっ♪」
あざと甘い吐息が夏空へ溶け出し、極彩色のフリルの群れが激しい旋風を引き起こした。 次の瞬間、現場にいた全ての男たちの目が、絶句とともに点になった。
地上数十メートルの上空を、漆黒の翼を羽ばたかせて旋回する異形の影があった。全身を厚い甲殻と噴射口で覆った怪物『対空魔獣バズガヴァーン』である。 「ガハハハ! 見下ろせ、地上を這い回る虫ケラども! この空から街を一瞬で焦土に変えてやる!」 バズガヴァーンが胸部の砲門を怪しく赤く発光させ、照準を市街地へ合わせたその時、真夏の白光を突き破って舞い降りたのが彼女だった。
高層ビルの屋上から軽やかに躍り出た可憐な(?)人影。 ふんわりと広がるフリル多めのピンクのミニスカートに、膝上までスラリと伸びる漆黒のハイソックス。王道中の王道を行く魔法少女スタイル。 しかし、その布地は彼女の日本人離れした破壊的な爆乳と、極上に引き締まったヒップの躍動に耐えかね、いまにも縫い目から弾け飛ばんばかりにパンパンに張り詰めている。
そして、着地とともに巻き起こった凄まじい風が、彼女の可憐なミニスカートを豪快にめくり上げた。
バサァァァッ!
ミニスカートとハイソックスの間に広がる絶対領域——その奥から白日の下に晒されたのは、甘い魔法少女の衣装にはおよそそぐわない、漆黒の高級レース——シースルーの過激極まる勝負下着であった。
「「「……っ!?」」」
「目!! 目がぁぁぁッ! 真昼間から目のやり場がなさすぎる!!」 地上で交通整理を行っていた警察官たちが、両手で目を覆いながら絶叫した。 「なんなんだあの下着は! 決戦用だか何だか知らんが、公然わいせつの境界線を高速道路並みのスピードでぶっちぎってるぞッ!」
「プリティじゃないだろどう見てもッ!」 避難中の一般市民(佐藤さん以外)が目頭を押さえて叫ぶ。 「ビジュアルの過半数がセクシーなんだよ! 『セクシーサトー』に改名しろッ!」
しかし、渦中の戦士——プリティサトー(22歳)は、至って真面目であった。 童顔の愛くるしい顔立ちに、吐息混じりの艶っぽいボイス(深夜アニメのセクシーヒロイン風)。あざとく見えるその所作のすべては、彼女自身の極めて生真面目な性格と、圧倒的な肉体美が引き起こした「不幸な化学反応」に過ぎない。
彼女は、自分を「強敵と戦う正義の魔法少女」と固く信じて疑っていなかった。 そして彼女にとって「勝負下着」とは、文字通り「強敵との勝負(バトル)に挑むための決戦用防具」なのである。
「ふふっ……強敵バズガヴァーンとの決着をつけるのですから、決戦用の最高級防具を身につけるのは当然の嗜みでしょう? この黒レースは、私の本気の防衛姿勢の表れですのよ♪」 プリティサトーは生真面目な表情で、うっとりと自らの防護服(勝負下着)の性能を主張した。
「勘違いだろ絶対ッッ!!」 警察官、市民、さらには現場に駆けつけていた自衛官までが揃ってツッコミを入れた。 「勝負下着の『勝負』の意味を完全に戦闘と誤解してやがる! 誰も教えてあげなかったのかよッ!」
「そもそもよ!」 タナカpink(ピンク)が冷ややかな目線を向け、腕を組みながら呆れたように吐き捨てた。 「22歳フリーターで勝負下着を見せびらかす痛さもだけど……22歳って、そもそも魔法少女を名乗るような年齢じゃないでしょ!」
「そうだそうだ!」 現場の警察官も同調して叫ぶ。 「魔法少女ってのは普通、中学生か高くても高校生までだろ! 22歳の社会人がミニスカート履いて魔法少女名乗るのは無理があるだろッ!」
すると、避難誘導をしていた若手警察官の一人が、ハッとした表情で叫び返した。 「待ってください先輩! 『マギ◯◯コード』には31歳で現役魔法少女の『伊◯満(いな◯◯つる)』さんが居るじゃないですかッ! それを考えたら22歳なんて全然セーフですよッ!!」
「マ◯◯コを引き合いに出すんじゃねえよッ!!」 先輩警官が速攻で後頭部を叩きつける。 「あっちの業界の特殊例を現実に持ち込むな! 31歳が居るからって22歳が免罪符になると思うなよッ!」
プリティサトーはそんな外野の論争など意に介さず、両手で愛おしそうに一本の「棒」を抱えていた。 ミニスカートとハイソックスの可憐なビジュアルに反して、彼女の手にあるのは可愛らしいステッキなどでは断じてない。 根元に硬い泥と青々とした葉を残した、長さ一メートルを超える極太の生の茎——「サトーロット(サトウキビ・沖縄産)」であった。
「ふふっ、年齢も外野の声も関係ありませんわ♪ この『サトーロット』は、南国の太陽を浴びて育った本場・沖縄産のサトウキビですのよ♪ 佐藤の誇りと甘み、そして強靭な食物繊維が詰まった聖なる魔法の杖ですの♪」 プリティサトーがサトーロットをブオッと一振りすると、青くさい草の匂いと、粘着質で濃厚な角砂糖の甘い香りが周囲に漂った。
「ただの生のサトウキビじゃねえかッ!」 現場の警官が間髪入れずにツッコんだ。 「産地まで沖縄産にこだわってんじゃねえよ! ミニスカートでサトウキビ振り回すとか、完全に物理殴打用の農産物だろそれ! 魔法どこ行ったんだよッ!」
「ええ、この重厚な沖縄産サトーロットで、悪を徹底的に粉砕(物理)しますの♪」 プリティサトーが無邪気に微笑む。ミニスカートの裾が揺れ、またしてもチラつく黒レース。
「ちょっとあなた!」 タナカイエローが前に出た。タイツ越しにも露わな自慢の鋭角なウエストラインに手を当て、プリティサトーを指差す。 「22歳フリーターの分際で、そんな過剰デコレーションな肉体を誇張して! フリルと爆乳で誤魔化してるんじゃないわよ! ヒーローに必要なのは、この無駄のない鋭角なウエストライン! このクビレの角度を見なさいよッ!」
プリティサトーがあざとく首をかしげ、イエローの細いウエストをまじまじと見つめると、優しく微笑んだ。 「あら……可愛らしいクビレですこと。でも……我が国における『佐藤』の圧倒的シェア(苗字ランキング第一位)の前には、そんな細いラインなんて吹き飛んでしまいますわ♪」
「なんですってぇぇぇッ!?」 イエローが般若のような顔(※ゴー◯◯風マスク越し)で地踏みを鳴らした。
「待てッ!」 重厚な金属音とともに、夕暮れの街角からあの男が滑り込んできた。 スズキ(SUZUKI)製の最高峰バイク『鱸モービル』を疾駆させ、銀色の超合金アーマーを輝かせるスズキライダーである! バイザーからは過熱した熱風とともに、強烈な生の魚臭さが噴き出している。
背中から体長一・五メートルの生魚「スズキカリバー」を引き抜き、福◯◯治風の極上イケボで叫ぶ! 「プリティサトー! そしてタナカレンジャー! ミニスカートに沖縄産サトウキビ、そして生魚の誇りを解せぬタイツども! 『鈴木』の二位の座を脅かす者は許さんッ!」
「お前もセクシーサトーにツッコめよッ!」 警察官が悲鳴を上げた。 「魚臭い戦士と、勝負下着のミニスカ魔法少女と、ペラペラのタイツ戦隊が勢揃いして、現場のカオス度が限界突破してんだよッ!」
「おい怪人!」 タナカレッド・アレクサンダー・大輝がバッと胸の黄金の『田』を張り、空中のバズガヴァーンを指差した。 「我らタナカレンジャーは『田中』以外は絶対に助けん! だが、この22歳フリーターの過剰露出女と、生臭いスズキ野郎の理不尽な主張を聞いている暇があったら、まずはお前と『田中の権利』について討論するッ!」
「俺は怪人だと言っているだろうがぁぁぁッ!!」 空中で長時間放置されていたバズガヴァーンのブチ切れ度が頂点に達した。 「タイツ! 生魚! 勝負下着! お前ら全員まとめて、この上空からの熱核ミサイルで消し飛べぇぇぇッ!」
バズガヴァーンが背中の巨大なミサイルポッドを展開し、市街地へ向けて全弾発射のカウントダウンを開始した。 「死ねぇぇぇッ!」
「鈴木さん以外は巻き添えになっても名誉の負傷だッ!」スズキライダーがスズキカリバーを上段に構える! 「愛と希望と……佐藤のためにッ!」プリティサトーがミニスカートをたなびかせ、沖縄産サトーロットを構えて筋力全開の物理殴打姿勢に入る! 「田中以外は見捨てる!」タナカレッドが腕を組む!
三極勢力が自身の苗字の主張とツッコミを繰り広げ、空中と地上で決定的な激突が起きようとした——まさにその瞬間であった。
キィィィィィィィィン……ッッ!!
上空の雲を切り裂き、大気を震わせる鋭い高音が轟いた。
「え……?」 バズガヴァーンが天空を見上げた。
はるか上空、高度数千メートルから急降下してきたのは、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機部隊であった。
「全機、ロックオン。地対空・空対空誘導ミサイル『Type-99』、発射」
冷徹なパイロットの無線ボイスが交錯した瞬間。
シュパパパパパパパンッッ!!
戦闘機の翼下から解き放たれた数発の対空ミサイルが、白煙の尾を引いて空を穿った。 音速を超えた誘導弾は、バズガヴァーンが発射体制に入るよりも早く、その巨大な胸部砲門へと正確無比に突き刺さった。
「ひ……避難勧告もなしに……自衛隊の対空ミサイル……直撃……ッ!?」
ドゴォォォォォォォォンッッ!!
上空で爆発したバズガヴァーンは、真夏の太陽よりも眩しい巨大な火柱となり、黒煙とともに微粒子となって消滅した。 空には綺麗な飛行機雲だけが残され、戦闘機部隊はそのまま何事もなかったかのように雲の彼方へと去っていった。
静寂が訪れた現場。 地上には、ミサイルの爆風で舞い散る焦げた煤と、ポカンと空を見上げるヒーロー(?)たちだけが残された。
「……あ」 タナカグリーンが呟いた。 「自衛隊のミサイル……すごく早かったですね」
「当然だ」 タナカブルーが端末に『怪人:自衛隊対空ミサイルにより撃墜』と入力した。 「防衛省の早期警戒レーダーに基づいた、完璧な領空・都市防衛行動だ。我々の苗字の議論や、沖縄産サトウキビの物理殴打など、現代兵器の前には何の介入権もない」
「ちょっと自衛隊ッ!」 プリティサトーがサトーロットを振り回して空に叫んだ。ハイソックスの脚をバタバタと踏み鳴らす。 「私が沖縄産サトーロットで『佐藤』の威厳を見せるはずだったのに! これじゃあ私の勝負下着の見せ損ですわぁ〜〜ッ!」
「見せ損とか言うなッ!」 警察官が全力で突っ込んだ。
スズキライダーは静かにスズキカリバーを収め、激しい生臭い溜息を吐いた。 「鈴木さんの平和が保たれたのなら……良しとしよう」 そう言い残し、彼は『鱸モービル』の爆音とともに去っていった。
「ふん、なんなのよあいつら……」 イエローが不満げに鼻を鳴らす。 「明日は絶対、私が一番目立ってやるんだから!」
「で、明日の現場はどこなの? ブルー」 ピンクが促すと、ブルーは端末を操作し、眼鏡(※バイザー)を鋭く光らせた。
「明日の予報だ。市内の高校で事件が発生する。……期末テストの解答用紙から、『タナカ』の名前が消えるという未曾有の危機だ」
「「「何……だと……ッ!?」」」
タナカレンジャーに激震が走る。 レッドは衝撃のあまり膝をつき、天を仰いだ。 「名前を書き忘れたテストの解答用紙……! それは……誰の物とも認められず、無得点となる絶望の白い紙ッ! そこから『タナカ』の名が消えたというのか!?」
「行くぞタナカレンジャー!」 レッドが力強く立ち上がる。 「明日はテスト用紙の前で『タナカ』の存在証明を賭けた説教を行うッ!」
「「「「おーッ!」」」」
「だから説教じゃなくて戦いなさいよッ!」 警察官の虚しいツッコミが夕空に響く中、街はゆっくりと夜の闇に包まれていくのであった。
◇
——その頃、夜の高校の職員室。
静まり返った暗闇の中、教卓の上にぽつんと残された一枚のテスト用紙。 そこには満点の解答が美しく記されていたが、氏名欄だけがぽっくりと空白になっていた。
その用紙を見つめる不気味な影——。 「フフフ……名前を書き忘れたタナカよ……無得点の闇へと消え去るがいい……」
(第5話へ続く)
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